“マックス”は死んでも“メタル”は死なず 「メタルマックス ワイルドウェスト」の開発中止と「メタルサーガ 〜叛逆ノ狼火〜」への期待(4/6 ページ)
30周年を迎えた直後に開発中止となった「メタルマックス」最新作をしのんで。
街もNPCも全部消えた「メタルマックス ゼノ」という問題作
その後、コンシューマーとしての「メタルマックス」は再び休眠期に入ります。ソーシャルゲームで「メタルマックス ファイアーワークス」をリリースするものの10カ月で終了。ほぼ同時期に始まった「メタルサーガ」側のソシャゲ「メタルサーガ 荒野の箱舟」は2年と数カ月続きましたが、本家の「メタルマックス」側のソシャゲがいち早く終わる状況に……。ちなみに「荒野の箱舟」は、サービス終了間際に当時の最新作「メタルマックス ゼノ」とのコラボイベントを行っていました。新作のコラボとほぼ同時にサービスが終わるという状況は少し不吉な予感もありましたが、「メタルマックス」と「メタルサーガ」の関係が良好なことが分かってファンとしてもひと安心。ただし、家庭用機という目で見れば、事実上2度目の死を向かえたも同然の状態でした。毎回、本家が何かをやらかしてサーガが頑張って持たせているシリーズなんですよね。本家のほうも、うまくハマれば「2R」や「4」のようにサーガでは追い付かない名作を出せるのですが……。
そして、ここからが現在展開中のシリーズに関する話題となります。あくまでも発売後のユーザーから見た視点ですが、今のシリーズは「メタルマックス4」までの時代と比べると予算や開発期間などから来る“リッチさ”が明らかに減っており、ナンバリングの時代よりも評判が落ちている印象です。かなり甘い言い方をしましたが、落ちたと思います。コンシューマーで復活したPS Vita/PS4用ソフト「メタルマックス ゼノ」と、Switchでも発売された「メタルマックス ゼノリボーン」の2作は、ナンバリングに比べると残念ながら期待に応えきれず、それでもついてきているコアなファン以外には失望をもたらしました。
4年ぶりとなるシリーズ最新作「メタルマックス ゼノ」は、ナンバリングから一転した新たなタイトル。さまざまな物が大きく変わりました。遊んでみると最低限「メタルマックス」としての皮と骨組みはあり、低予算や妥協を感じる部分はあるもののゲームとしてはコレはコレで遊べます。遊べるのですが、予算の問題か納期の問題なのか「メタルマックス4」から多くの要素が削ぎ落とされていました。骨組みはあるのですが、骨と皮しかない。骨と皮をしゃぶれば「メタルマックス」の味はしますが、RPGとしての肉付けが足りません。もともと肉の部分にも大きな魅力があり、いや、むしろ肉の方に良さを見いだしている人も多いシリーズだっただけに、衝撃的な変わり方でした。
人類が滅んでいるという設定のもと、ワールドマップからは拠点以外の街が消滅。廃墟を発見したときの通信や仲間加入のイベントはあるのですが、NPCが住む街は皆無。味方以外の人もいません。金輪際ホテルのようなサブクエストはなく、移動中や拠点で発生する仲間とのイベントや次の目的地を探していくメインミッションのみ。金輪際ホテル殺人事件どころか、金輪際リゾートもなければ、金輪際サブクエスト消滅事件です。拠点以外でアイテムの購入や補給もできなくなりました。人間が生きていた証を感じられるテキストが豊富にあれば、まだ違った(というよりも、自分はそこでメタルらしさを出してくれると信じていた)のですが、それもコピペ(コピー&ペースト)で作られたような各ダンジョン(リメインズ)や施設で、いくつか見られる程度でした。
いわゆるRPGというよりも、廃墟の東京をひたすらさ迷い、強い武器をハック&スラッシュで入手する3DダンジョンRPGのようなゲーム性に近くなっています。自分はこういうストイックなゲーム性も好きなのですが、それでもあまりに何もなさすぎる。サブクエストもNPCもメッセンジャーのテキストもないのは、少々やりすぎだったと思います。
もともと、そうしたハクスラ的な側面が支持された一面もありますが、自分がほれていたのは人間を感じるテキストや、生活感を感じる描写の方面だったので、かなりのショック。サイバーパンクであり、SFマカロニウエスタンとしての良さも多大な魅力だったので、そこが消えた「メタルマックス ゼノ」は、ファン以外に売るという意味でも非常に厳しかったように見えました。同じ見た目の地下ダンジョンばかりになったリメインズにも、予算や納期の苦労が感じられます。セッ○スの単語が飛び交うストーリーも賛否両論。子孫を残さなければならない理由は分かるのですが、ちょっと過去作とは違う方向のとがり方です。キャラクターデザインは良かったのですが、あまり生かせていない印象でした。
「メタルマックス4」から大幅に予算が削られたのか、はた目には前作からパワーダウンしているのがアリアリと分かる作り。とはいえ、3D化したことで外をうろつくモンスターが見えるようになったことや、先制攻撃でフィールド上から砲撃できることなど、3Dならではの恩恵を感じる部分もあります。「ゼノ」に変わった良さも確実にありました。
最低限「メタルマックス」として残さなければならない要素をハック&スラッシュと仮定し、コアな層に向けた武器の★(レア度)厳選に特化させて周回させるという、本当に振り切った内容。2周目以降からイベントがなくなり、周回するごとに難易度が上がってひたすら敵を狩る「ハンターモード」が解禁されるのも、戦闘&ハクスラ特化の方向性です。
街やNPCの存在は「メタルマックス」シリーズにおける大きな魅力でもありましたが、そこをバッサリと諦めて突き詰められる部分だけを特化させ、限られた要素に絞ってチューニングしているので、これはこれで作品単体として見ると遊べます。ですが、やはり過去にできていたことが大幅になくなってしまったのは物足りなさもありました。発売後のユーザーレビューを見ても、ここでシリーズ全体の評判が落ちてしまったのは否めません。
とはいえ、まだ希望はありました。「メタルマックス ゼノ」の問題点は分かりきっていたのですから。シリーズに必要だったテキストや能天気なNPCの存在。いないとしても、せめて生活感を感じるテキストが豊富にあれば、RPGとしてグッと良くなるはず。ドラム缶ネタや過去のパロディー、犬とかはRPGを遊ぶ人や新規ユーザーに取ってはどうでもいいのです。ファンにこびた方向ではなく、新作としての世界の見せ方や「ゼノ」が捨ててきた数々の要素を取り戻すことが必要でした。それこそが、メタルの魅力でもあったのですから。メタルらしいメインストーリーや世界を冒険する感覚が補強できれば、次回作には希望が持てるはず。織田non氏のキャラクターデザインも良かったですからね。そう思っていたのですが、現実では全く逆のリメイクをやっちゃうという。そっちじゃない……!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.