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“マックス”は死んでも“メタル”は死なず 「メタルマックス ワイルドウェスト」の開発中止と「メタルサーガ 〜叛逆ノ狼火〜」への期待(5/6 ページ)

30周年を迎えた直後に開発中止となった「メタルマックス」最新作をしのんで。

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続編のためにユーザーを実験台にした「メタルマックス ゼノリボーン」

 「メタルマックス ゼノ」で多くのユーザーを失望させたシリーズでしたが、幸いなことに止まることはありませんでした。2019年にはなんと新作が同時に3作品も発表! 同時に3作品も発表されて大丈夫なのかという不安も大きかったですが、シリーズはまだまだ爆走。強力労働神話のように元気に動いていました。

 当時発表された内容は、「メタルマックス ゼノ」のリメイク作品「メタルマックス ゼノリボーン」。そして続編の「メタルマックス ゼノリボーン2(仮)」「コードゼロ(仮)」の3タイトル。評判がいまいち良くなかった「メタルマックス ゼノ」をたった1年でリメイクする発想自体にも驚きましたが、実際に遊んでみると完全な別物。ゼノの良かったところも悪かったところも捨てて、全く別のシステムに作り直されていました。良かったところまで捨ててしまうのは、このシリーズが伝統的に陥っている悪い癖だと思います。「3」や「2R」のデザイン変更もそうなのですが、ファンのひいき目を抜きにすると自分たちの作品のどこが良かったのか。何が新規ユーザーに受けそうなのか。そもそもメタルマックスの魅力がどこなのかを開発側がイマイチ信じ切れておらず、変な意見を取り入れては困った暴走をしちゃうように見えるんですよ。そして、それを止める人がいないようにも見えます。理想ばかりが高く、開発能力が追い付いていないのならば仕方ありません。追い付いていないなりに、せめて身の丈にあったものを作りつつ、メタルシリーズを好きなインディーゲーム開発者にIPを貸し出したり、外部にリメイクしてもらって小金を稼いだり、順当に打てる手はまだまだあったはず。プロジェクト全体を俯瞰できる外部の目を入れて、なんとか頑張ってもらいたかったです。

メタルマックスは3度死ぬ 「メタルマックス ゼノ」のリメイクというか完全な別物だった「メタルマックス ゼノリボーン」

 「ゼノリボーン」に変わったことで、良い面もありました。前作の非プレイアブルキャラだったポMや、犬のポチが仲間に加わる新要素。決済システムなどの不自然な要素に対する補足や、賞金首の情報でテキストを見られるようになっているなど、少しばかりですがテキストが増えた部分もあり、改善も見られます。見た目の使いまわしをやめて独自の構造になったリメインズなど、「ゼノ」から良くなった部分は確実にありました。

 ただし、改善の仕方の多くはあさっての方向でもあったように見えます。なぜかストーリー自体が大幅にカット。主人公と師匠のプロローグイベントや一枚絵のイラストはなくなり、下品と言われた反省からかテキストとイベントが極限まで削除されていました。仲間の加入イベント以外はマップでの会話も減り、テキストの多くは拠点での仲間との会話に振られていました。子づくりに関する会話も消えたのかと思いきや、仲間との会話ではそうした表現が残っているところも。また、エンディングは黒い背景に数行だけの簡素なものとなり、非常にアッサリしたものになりました。コアなファン以外が望んでいるものとは逆方向に走り出し、なぜか最初から作り直してしまったのです。「ゼノ」の方が良い部分、「リボーン」の方が良い部分もバラバラで、なんのためのリメイクだったのか分かりません。

 仮に、4以降に出た作品が「ゼノ」ではなく、先に「ゼノリボーン」から出ていればまた違ったのかもしれません。ですが、現状では無謀ともいえる挑戦でしょう。そもそも今になって書いても仕方がないのですが、本来やるべきはゼノをリボーンすることではなく「ゼノ」ベースから不評を改善した「ゼノ2」か新作であり、リボーン&リボーン2ではなかったと思うんですよ。リボーン的な新システムをやるにしても、その前に薄くなってしまった要素を改善して評判を取り戻すのが急務だったはず。開発会社が変わったという、のっぴきならない事情もあるのかもしれませんが、リメイクに舵を切るのが早すぎです。

 物語だけに絞るなら、1枚絵のイラストでイベントを見せる工夫があった「メタルマックス ゼノ」のほうが、まだRPGらしい部分がありました。むしろ、NPCやサブイベントなどの「ゼノ」が切り捨ててきた要素を大きく膨らませる方向でのリメイクなら良かったのですが、なぜか完全に別物として作り直しちゃったんですよね……。じつのところ、メタルマックスは酒場で「おだいじん」ができたり、金食い虫を意味もなく飼えたり、インテリアを贈れたりと、RPGとしては意味のない無駄が多いんですよ。そして恐らく、その無駄な部分こそが、シリーズを輝かせている肉の1つでもあったと思うのです。

 「ゼノ」から変えてしまったUIは、遊びやすくなったところとは逆に遊びづらくなった部分と半々。作り直されたことで「ゼノ」の悪い面は引き継がれませんでしたが、同時に良い面もほぼ引き継がれませんでした。プラスマイナスゼロに戻ったのです。既に崖っぷちで、予算も削られているであろう状況で、なぜか起死回生の大バクチ。その結果とユーザーの反応は……語るまでもないでしょう。

メタルマックスは3度死ぬ 人間移動時の操作がとにかくモタ―っとしていたのがヤバ過ぎた初期版。さすがに修正されました

 信じられないことに、発売当初は「人間のキャラが後ろを向くだけで水中を泳ぐように重い」といった不具合の多い作品でした。現在はパッチが当たって修正されましたが、当初はα版のような状況で発売されていたことに、現場の混乱がうかがえるようです。モンスターの巨大さやシームレスになった戦闘に可能性も感じられたのですが、シームレスになったことで砲撃の自動ロックオンがなくなっていたり、詳細な戦闘ログがないので状況が分かりにくかったりと、初のシームレス戦闘による課題も発生。 悪い面だけではなく「ゼノ」で良かった面も消えてしまっていて、良くも悪くも完全一新に近い新作でした。「リボーン2(仮)」の土台作りという名目ではありますが、まず「ゼノ」で作った土台を崩して新しいことに挑戦しようとするのが無謀と言わざるを得ません。「ゼノリボーン」そのものには可能性があっても、発売当初は開発が追い付いていないのはハッキリとしていました。

メタルマックスは3度死ぬ 念仏を唱えながら戦車が歩いているシーンを見られたり、歴代のモンスターが3D化することで恩恵を受けた部分も多くあります。「ゼノ」ではなく、最初から「ゼノリボーン」が土台として出ていれば、評判もまた違ったのでしょう

 このゲームも「ゼノ」と同程度には、過去のメタルと比較しないことで新作として遊べますが、システムが変わったことで良くも悪くも「ゼノ」からオールリセット。リメイクとしては評価しにくい立ち位置です。土台作りだという理解をファンがしていたとはいえ、ここまで実験的なリメイクならアーリーアクセスやクラウドファンディングをするべきだったと思います。前作の織田non氏から「リボーン2(仮)」のイラストを担当する緒賀岳志氏にイラストを差し代えたのも両者の良さが消えてしまっていますし、そもそも、悪いのはイラストじゃないので、変えた時点で迷走しているなと。ゲーム自体の是非は抜きに短期間でリメイクしたことには驚きますが、ユーザーを実験台に使うようなやり方は万人に受け入れられるとは言い難く、ファンに甘えている部分があったのではないでしょうか。

 ファンに応えて野バスやポチを入れるより、最初から快適性を優先して欲しかったですし、欲を言うならゼノをベースに肉付けするか、リボーンせずに2へ行くべきだったのか。皮と骨だけだったメタルマックスは、ここにきてついに骨だけになりました。骨にも味があり、新しい味付けで煮込まれてはいたので、骨をしゃぶってもメタルマックス味はします。しますが、RPGには肉を求める人も多いのです。現状で、ついていけるファンは相当減ったのではないかと。新規を取り込めたのかといえば、初期版はあまりに酷く、アップデート済みのバージョンが最初から出ていれば……という気持ちも。修正が済んでいる現バージョンやSteam版を遊べば、ちまたで言われるほどには酷くないという感想になるでしょう。

 リッチで豪華な作りだった「メタルマックス4」までの時代から比べると、どうしても「メタルマックス ゼノ」シリーズは予算や期間の限界がユーザー視点でも透けて見えてしまい、その状況でできる部分に絞って作り上げた妥協のシリーズという感想です。良い言い方をすれば少数のファンを囲い込んだ作りで、悪く言うならば新規よりも内輪受け。予算や期間の限界を見たうえで、特定の要素に絞ってまとめあげた手腕には感心しますが、ゼノからのリボーンは1回限りの禁じ手で、その手法もあまり褒められたものではなかったように思えます。ここからどう展開していくのかが問われる状況だったのですが、現実はそれどころではありませんでした。

 

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