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実写アドベンチャーゲームの新たな傑作、スクエニ「春ゆきてレトロチカ」が良すぎたのでこの余韻を全力でおすそ分けしたい(2/2 ページ)

後半では本作のキーパーソン2人へのインタビューも行いました。

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メイキング オブ 「春ゆきてレトロチカ」

プロフィール

江原純一(えはら じゅんいち)氏:スクウェア・エニックスで「NieR:Automata」共同プロデューサーを務め、現在は「春ゆきてレトロチカ」のプロデューサーを務めている。

伊東幸一郎(いとう こういちろう)氏:代表作:「428 封鎖された渋谷で」「TRICK×LOGIC」。1993年、立命館大学中退。京都の広告会社にコピーライターとして従事し、1999年にゲーム業界へ。「428 封鎖された渋谷で」「TRICK×LOGIC」「かまいたちの夜×3」などのアドベンチャーゲームでシナリオとゲームデザインを担当。その後「METAL GEAR SOLID V」シナリオ、「P.T.」ゲームデザイン、「FINAL FANTASY XV ROYAL EDITION」シナリオなどに携わる。現在はフリーランスのゲームデザイナー。


―― まず、「春ゆきてレトロチカ」の企画が立ち上がった時期、発想の源泉についてお聞かせください。スクウェア・エニックスから実写アドベンチャーゲームが発売されるというのは、大きな驚きでした。

江原純一氏(以下、江原):最初のきっかけは3年ほど前です。伊東さん、そして映像を担当していただいたたちばな やすひとさん(※)たちとの出会いが、後にこの作品へとつながるきっかけになりました。たちばなさんと何かやるなら実写ものでしょうし、実写をやるなら伊東さんに「実写でやる理由」みたいなのを考えてもらおう、といった立ち上がり方でした。会社へ提案した際にはいろいろな人に応援してもらいましたね。チャレンジを歓迎する会社なので、温かい反応が多かったです。

※Netflix「全裸監督」など、ドラマや映画のプロデュースを手掛けるプロデューサー

伊東幸一郎氏(以下、伊東):僕もアドベンチャーゲームを作りたいという思いがあって、江原さんとはその部分でやりたいことが一致していました。ただ、実写というのは想像していなかったです。

江原:実写をやろうと思ったのは、ちょうどこの時期、海外で実写を使ったインタラクティブムービー(視聴者が物語の分岐に介入できる、ゲームのような映像作品)が盛り上がってきていたからです。同時に、日本国内に目を向けてみると、実写を取り入れた作品が少なくなってしまったと感じていました。「街」や「428」など(※)、いまだに人気のある傑作はあるのですが、こうした作品が出たのもずいぶん前ですよね。自分もこういった作品が好きで、同時に欲していたし、作りたかったんですよ。そして、このジャンルに潜在的なファンはいるだろうという予感もありました。そんなことを考えて企画を進めていたら、実写フルムービーの「デスカムトゥルー」(※)が発売されたので驚きましたが(笑)。

※「街 〜運命の交差点〜」:1998年にチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)から発売された実写アドベンチャーゲーム。渋谷を舞台に、複数の主人公を設けた物語を描く。ザッピングというシステムで、主人公を変更し、物語を進めていくのが特徴

※「428 〜封鎖された渋谷で〜」:2008年にチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)から発売された実写アドベンチャーゲーム。「街 〜運命の交差点〜」と同じく、渋谷を舞台に、複数の主人公を設けた物語を描く

※「デスカムトゥルー」:2020年にイザナギゲームズから発売された実写アドベンチャーゲーム。「春ゆきてレトロチカ」と同じく、実写ムービー表現を採用したゲームとなっている

―― 今回あえて“フルムービー”という形を選んだのはどのような理由があったのでしょうか。私は当初、実写アドベンチャーと聞いて、「街」や「428」のような“静止画”の作品をイメージしたんです。一部の見せ場だけムービーなのかなと思っていました。

江原:もともとは静止画でやるという案もありました。そこで「実写ものをやりたい」という話をたちばなさんや、役者さんの事務所にお話ししてみたら「フルムービーの方がいい」と言うんですよ。役者の演技が映えるのはフルムービーですし、“熱演”というものを分かりやすく伝えるならムービーですよと。ある事務所からは「フルムービーの方が演技が残るから、ぜひムービーでやりたい」という熱い希望もいただきました。こうした意見を受けて、映画のような表現に舵を切りました。

―― 「春ゆきてレトロチカ」は現在と過去を描く物語で、100年の謎を解いていくというものです。作中には、タイトルの通りレトロな時代が登場しますが、レトロなものに焦点を当てた理由についてお聞かせください。

江原:われわれが実写をやるなら“日本を舞台にする”というのはまず前提としてありました。その上で、じゃあどういうものをやるかという話になったときに「和」というテーマが挙がったんです。“日本人から見ても美しいもの”が描かれている作品を目指した結果、レトロなものになりました。実写ということでリアリティーはあるかもしれませんが、実際にゲームで描かれているものは、現実の過去の再現とは違うんですけどね。

伊東:大正あたりになると、われわれにとっても“ファンタジー”になりますよね。なので、そのまま描くというよりも、美化されたり、イメージを元に膨らませたりしたものが描かれていても楽しいのかなと。その中で大きな役割を担ってくれたのが、斉藤上太郎さんが手がける着物ブランド“JOTARO SAITO”の存在です。「春ゆきてレトロチカ」の着物は全てJOTARO SAITOのものです。ショーの映像を見て、江原さんに提案したところ、すぐに話が進みました。

江原:JOTARO SAITOの着物から着想を得て、ゲームの中に落とし込んだ要素もいくつかあります。例えば、ゲーム内に登場する灯篭のモチーフなどは、選んでいただいた着物の中で印象的だった模様がベースなんです。ちなみに、制作への協力は快諾していただけましたし、斉藤上太郎さんご自身にもカメオ出演いただいきました。

春ゆきてレトロチカ 本作に登場する着物はJOTARO SAITOのもの。本作は、ただレトロな世界を描いたのではなく、さまざまな要素を組み合わせ、独自性のある世界観を展開している

伊東:レトロなものに振った理由としてはもう一つ、現代社会を実写で描くのは大変なんですよ。特に商標や肖像権の問題ですね。ゲームとしてはここはクリアにしなければならないのですが、例えば街中を撮るとそれだけで膨大なものが写り込みます。作品の中で自然に映りこんでいるようなものでも、許諾の確認をしなければいけないものが多い。

江原:そういった権利の問題をクリアしていくために、「春ゆきてレトロチカ」ではセットを作ったりした部分が多いんですよ。実写とはいえ、オリジナルの舞台が多めです。

―― 実写映像の部分、役者さんの演技はもちろん、映像のクオリティー面でも映画さながらでした。

江原:日ごろから映画などを撮影しているプロが、実力派の役者さんたちを撮るということで、作り手としても期待以上のものになりました。実写の映像作品をゲームでやりたいという人がいたら、映像畑の方に声がけするのをおすすめします。「春ゆきてレトロチカ」は、ゲームと映像のタッグがあってこそできた作品です。その上でさらに、分業というわけではなく、お互い密にコミュニケーションしていました。伊東さんはロケ全部に同行していて、かなり過密スケジュールでしたね。

伊東:ロケは1カ月半くらいでやりきりました。一応、そこまでめちゃくちゃなスケジュールというわけではなく、ちゃんと効率を考えたスケジュールではあったのですが、ほぼ毎日のようにロケに行っていましたね。現地で撮影をチェックしなければならないので、早朝ロケバスに乗って出発して、夜は終電もないみたいなことが何度かありました。でも、大変というよりも楽しかったですね。現場の雰囲気もとても良かったですし、撮影もスムーズで、天候などにも恵まれました。

江原:僕はロケをやっているころ、もう一つタイトルを抱えていたので、ロケに毎日行くということはできませんでした。現場が好きなタイプなので、できるだけ顔を出したかったんですけどね。

―― 本作のシナリオ、100年に渡る謎を解くという大きなお題が実にロマンチックでした。過去の謎を追いかけつつ現在の謎のヒントを得ていくという構成ですが、もう何といっていいか……。今回のインタビューはネタバレなしということでこれ以上は表現できませんが、本作のシナリオはどのような意図や思いを持って作られたのでしょうか。

伊東:いろいろな方の力を借りたシナリオですが、犯人当てミステリというコンセプトにおいては「安楽椅子探偵」というテレビドラマ(※)の影響を強く受けています。この人物が犯人かな? となんとなくアタリをつけられたとしても、いつ、どうやって犯行を実行したのかを論理的に解き明かすことが醍醐味となるように心掛けて書いています。

 全体を貫くテーマについては、たちばなさん率いるシナリオチームが徹底的にこだわってくださいました。100年という時間の振り幅でこそ語れるドラマ、ミステリらしいツイスト、真相が明らかになったときに物語が反転する構成などを実現するべく、シナリオチーム全員で何度も繰り返し調整しました。

※「安楽椅子探偵」:1999年から2017年にかけ8作品が放送されたテレビドラマ。放送を出題編と解決編に分けた構成が特徴で、視聴者は問題編の放送までにさまざまな推理を楽しめる。原作は推理作家の綾辻行人氏と有栖川有栖氏が手掛けている

江原:僕自身もシナリオを考えた部分があるのですが、出来上がった台本が真っ赤になるくらい修正を入れましたね(笑)。情報の出し方として違和感のあるものや、ロジックとしてエラーがあるものを指摘しました。あとは「なるべくセリフを短くしてください」とオーダーしたり。その方が余白が生まれて、役者さんの演技が生きるのかなと。こういった感覚は、台本を書く仕事や、動画編集をやっていたときのものですね。

伊東:セリフを短くしたことで、映像用の冗長すぎない台本が出来上がりました。問題編は一気に見てほしいと思っていて、各章の問題編は30分程度に収めているんですよ。この尺に収めるのはかなり大変で、「いかに削るか」という戦いでもありました。この“物語の凝縮”にはたちばなさんや、撮影監督の芝崎さん(崎は立つさき)にも尽力していだき、すばらしい映像になったと思います。

※芝崎さん:「春ゆきてレトロチカ」実写映像監督を務めた芝崎弘記氏

 ただ、主演の桜庭ななみさんのセリフの量は膨大で、一人でこんなにセリフがあるケースはなかなかないようです。桜庭さんはご自身のセリフに蛍光ペンでチェックを入れるのですが、その蛍光ペンのインクがなくなってしまうという事態もありましたね。買いに行かなきゃ、みたいな(笑)。

江原:映像に関しては8.5時間くらい。ゲームプレイは15時間くらいで終わるので、ゲームとしては短く感じられるかもしれませんが、映像作品としてはかなり長めです。このボリュームについて、もっと増やすこともできたんですよ。撮影したデータは20時間くらいありますし、映像以外の部分を調整することもできました。でも、気持ちよくプレイしてもらいたいという考えや、余韻などを考え、今のボリュームにしています。

春ゆきてレトロチカ フルムービーで映画のようであり、同時にゲームでもある本作。どのようにプレイヤーに情報を渡すかという点にもこだわったという

―― ゲーム制作側と、映像制作側の、コミュニケーションはどのような雰囲気だったのでしょうか。

伊東:ゲームと映像の溝のようなものはなくて、お互い理解のある現場でしたね。なので、お互いがアイデアを出し合うようなことも多く、それが理解されないということもありませんでした。

 例えば、撮影の序盤にはゲーム制作側からのチェックとして、「推理のキーワードになるものだから、ゲームとしてはここを少し強調しておきたい」といったお願いをすることもありました。でも中盤〜終盤になると、ゲーム側と映像側の意思疎通がすごく滑らかになって、「ここ撮影しておいた方がいいですよね」「そうですね、ありがとうございます」というような雰囲気になってきて、一体感がありましたね。ゲーム側の方も、映像側から教えてもらうことは多かったです。

江原:実写映像は作り直すのが大変なのですが、事前にテスト撮影を行ったりしたこともあり、大きなトラブルはなかったですね。それでも、ロジックエラーなどでどうしてもアフレコしなければいけないシーンなどは出てきました。

―― 映像の部分でいうと、一人の役者が複数の役を演じるという“マルチロールシステム”には驚かされました。

江原:あれは副産物的なものでもあります。「春ゆきてレトロチカ」は、現代からさかのぼって、かなり昔の事件を複数描きます。これを実写でやるとなると、どうしても役者の数が増えてしまう。もちろん予算の面での問題もありましたが、ぎゅっと詰め込まれたゲームを遊ぶときに、役者がどんどん変わるとプレイヤーが混乱するのではと考えていたんですね。

 1週間に1話ずつ放送されるドラマと違って、一気にまとめて遊んでほしいゲームだったので、役者の一人一人が印象的に残った方がいいのかもしれないと思っていました。そこに伊東さんが投げ込んでくれたのが、複数の役を一人の役者に演じ分けてもらうマルチロールシステムなんです。

伊東:ある事件では犯人を演じていた人が、ある事件では被害者を演じるというようなことができれば、ゲーム的にも、映像的にも面白いかなと思いました。「春ゆきてレトロチカ」の話は、過去の世界をイメージして、その中を歩いていくというのが大筋にあるのですが、その過去の世界は、主人公が思い描いたものなんですよ。なので、主人公が外見を知っている人に置き換えられるというのも不思議ではないんです。

江原:マルチロールが生まれたきっかけは、役者の数を増やしすぎることへの懸念だったのですが、導入した結果、物語に深みが足されましたね。伊東さん、天才! と思った瞬間です(笑)。

 

「春ゆきてレトロチカ」に込めたこだわりと思い

―― 映像の見ごたえだけでなく、しっかりとゲームとしての遊びごたえも感じました。ただ選択肢で分岐するというだけでなく、推理のパーツを集め、プレイヤー自身が組み合わせて仮説を作るパートなども用意されています。こうしたゲームの要素は、どのようにして生まれたのでしょう。

伊東:ここは江原さんがこだわったところですよね。映像作品を作るのではなくて、ゲームメーカーが、しっかりゲームとして作るという。そのアイデアを受けて“遊べる”作品を目指しました。

 この部分には、主にゲーム部分の制作を担当いただいた(開発会社の)「ハ・ン・ド」さんのアイデアもたくさんいれてもらいました。私が最初イメージしていた仮説の組み立ては、キーワード同士をただくっつけるだけの地味なものだったのですが、ハ・ン・ドさんの手で今の立体感ある遊びになりました。グラフィカルにしたことで難度が上がったり、テンポが緩やかになったりした部分もあるのですが、“一つの謎に集中して、じっくり考える“という楽しみ方が提供できているのかなとも思います。ボタンを押さない間も、考えているという時間を過ごしていると思っていただけるとうれししいですね。といいつつ、グラフィカルな美しさとテンポ面をどう両立させるかというのは、当時も今も悩んでいるところです(笑)。

―― ゲームのレビューなどを書くときに、「テンポが良い」とか「テンポが悪い」とかいうのは分かりやすい評価軸なのですが、私はこのゲームは、ゆったり遊べるくらいのテンポでちょうどいいのかなと感じました。推理が合っているときは「もうちょっとテンポを速めて、先を見せてほしい」と思ったりもしたのですが、分からないことを考えているときに、あのゆったりしたテンポが心地良いんですよね。推理パートがしっかりあることで、“推理”という行為の手順を教えてもらっているようで、ゲームでしか得られない謎解きの面白さがありました。

江原:僕自身が「逆転裁判」(※)や「ダンガンロンパ」(※)といった、アドベンチャーゲーム作品が好きなんですよ。「逆転裁判」がなければゲーム業界に入っていないといえるくらいです。そして、自分がプロデューサーで作るのなら、過去のそういう作品を遊んだときに感じた充実感や達成感が出せればいいなと思いました。

※「逆転裁判」:カプコンから発売された、法廷バトルをテーマにしたアドベンチャーゲーム。発生した事件の裁判に向け、事件の真相を暴いていく。事件の情報を集める「探偵パート」と「検事」や「証人」のウソを暴き、事件の真相を明らかにする「法廷パート」が存在する。2001年に第1作が発売、その後、続編やスピンアウト作品が多数発売されている

※「ダンガンロンパ」:スパイク・チュンソフトから発売されたアドベンチャーゲーム。デスゲーム的な要素を含む物語と、ただ読み進めるだけではないアクションテイストのあるゲームパートが大きな特徴。人気を博し、アニメ化も行われた

―― 私自身はミステリを読むのは好きですが、解くのはヘタという自覚があります。「深く考えず、読み進めて楽しむ」タイプですね。そんな自分でも楽しく「推理している感」が味わえました。この難度のバランスは、どのようなあんばいを目指したのでしょう。

伊東:目指した難度のラインは「難しくしすぎず、そのうえでミステリ初心者も玄人も“解く”ことの充実感を得られる」というものです。今回のチームなら、ミステリ好きの方に向けて、難度を極めて高いものにするということもできました。それこそ「正解率1%」みたいなものも作れたかもしれません。でも、今回はそういう道は選ばず、正解率は高めで、それでいて心に残るものを目指しました。探偵気分を味わってもらえて、自分が謎を解いたという充実感を大事にしたんです。成功しているかは分かりませんが、いろいろな方に楽しんでもらえているならうれしいですね。

江原:公式で実施したアンケートでは「やや難しい」と感じた方が多かったようですが、「とても難しい」という方は少なかったんです。でも、面白かったという声も多いので、目標としていた難易度には近づけられたかなと思います。クリアするだけなら総当たりでもできますから、身構えずに遊んでほしいですね。

伊東:発売前にテスターの方に遊んでもらったときも、難しすぎるという声はなかったですね。「総当たりでクリアできる」というのは狙いの一つではあったのですが、その総当たりをする中で、偶然の気付きを楽しめるような謎と答えの出し方は心掛けました。

―― 発売前後に、ミステリ作家の方々の感想がSNSなどで発信されていました。プロモーションの一環ではあると思うのですが、かなり勇敢な企画だなと感じました(笑)。ミステリとして自信があったということなのでしょうか。

江原:あれは伊東さんに我孫子武丸さん(※)を紹介していただいたのがきっかけですね。こういう意見を書いてくださいというようなことは言っていないので、忌憚(きたん)のない感想をいただきました。皆さん好意的だったのはうれしかったですね。ミステリゲームというジャンルの性質上、プロモーションでかなりネタバレに配慮しなければいけないので、せめてネタバレなしの感想を載せていこうというのも意図でした。これとは別企画となりますが、“新本格”ミステリの代表的存在ともいえる綾辻行人さんにもゲームを遊んでいただき、インタビューにお答えいただく機会もいただくことができ、こちらも大変光栄でうれしいものでした。

※我孫子武丸さん:ミステリ作家。著作に『殺戮にいたる病』など。「かまいたちの夜」シリーズなど、ゲーム作品のシナリオも手掛ける

※綾辻行人さん:1987年に『十角館の殺人』で作家デビュー、“新本格ムーヴメント”の嚆矢として有名

伊東:「春ゆきてレトロチカ」がミステリと名乗り、ミステリ作家の方にお届けしたことでかえって優しい目で見てくださったのかもしれません。どんなに名作といわれるミステリ作品にも突っ込みどころはありますし、ミステリというジャンル自体、読者からすれば常に突っ込みどころを探したくなるジャンルでもあります。だからこそ、ミステリ作家側は意外と、他人の作品に厳しく突っ込んだりはしないのかなと(笑)。でも、ふんわりとした感想ではなくて、遊んだうえでの感想と分かるものをいただけて、作り手としてはうれしい企画でしたね。

―― 「春ゆきてレトロチカ」は海外展開も行われていますが、これは企画当初から予定していたものなのでしょうか。

江原:スクウェア・エニックスの多くの作品が海外展開前提なので、それにならったというのもあります。英語ボイスと、多言語字幕対応はしていますね。

 海外のクリエイターが作った「ゴースト・オブ・ツシマ」が世界の人に受け入れられたという例もありますし、私としては、この作品が描く“日本”という要素に可能性を感じています。ただ、そのうえで自分たちが面白いと思うものを作ることが第一だと思いますね。海外に受けるものを入れるというより、日本の人にしか分からないものを避けるといったことは意識しました。

―― 今日は、インタビューに応じていただき、ありがとうございます。最後に、読者の方にメッセージをお願いいたします。

伊東:感想や考察をSNSなどで見るとうれしいです。この記事で興味がわいた方は、ぜひプレイして探偵気分を味わってみてほしいです。

江原:いろいろな人に楽しんでもらえるミステリアドベンチャーを目指しました。ぜひ、手に取って遊んでみてください。また、本作を買ってくれた方は、ネタバレせずに面白さをいろいろな人に伝えてくれるとうれしいです。次回作を出すにはまだ結果が足りていないので、ぜひ新品かダウンロード版で購入お願いします(笑)。

伊東:またやりたいですねえ(笑)。



 情熱的なクリエイターたちが作り出した「春ゆきてレトロチカ」は、9月28日まで各種ストアで35%OFFのセール中。体験版も配信されたばかりですので、まずはこちらから遊んでみてもよさそうです。

 今回のインタビューはネタバレ成分薄めでしたが、いつか……ネタバレありのインタビューができたらと願うばかりです。最後までプレイしていただければ、皆さんも私と同じように、もっともっと開発陣の話を聞いてみたくなるはず!

「春ゆきてレトロチカ」

発売日:発売中

対応機種:プレイステーション4、プレイステーション5、Nintedo Switch、Steam

ジャンル:実写ミステリアドベンチャー

プレイ人数:1人


 

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