雨が降る冬の夜、車道にいたおじいさんをひきかけてしまい、見かねて保護しようとしますが……。思わぬ人助けの経験を描いた漫画「人を轢きかけたので警察呼んだ話」に、Twitterで約2.3万いいねの大きな反響が寄せられています。漫画の作者に詳しい話を聞きました。
深夜、雨の中、ひと気のない山道を車で走るカワサキ(@cawask5678)さんは、車道の前方に歩く人を発見。あわやひきそうになりつつも、ギリギリのところで避けました。目にしたものに確信が持てないまま引き返してみると、そこには傘もささずにふらふらと歩くおじいさんが。「あの! 大丈夫ですか」と声をかけるカワサキさん。
おじいさんは、振り向きはしたものの、返事をしません。ただごとではないと思ったカワサキさんは車から降り、「車道歩いたら危ないですよ 私さっきひきかけて」と話しかけながら、おじいさんの手を引き歩道に誘導。家族に迎えに来てもらうため住所や電話番号などを尋ねますが、なかなか要領を得ません。
結局、名前しか手掛かりはなく、カワサキさんは警察に電話をします。電話から15分後に警察は到着。おじいさんは届け出が出されていた名前と一致したので、警察が家まで送ってくれることに。カワサキさんは「スピードを出していたら、ちょっとでも眠かったら、雨がもっと降っていたら、絶対によけられたという自信はないな」と今回の事件を振り返るのでした。
この漫画には「私も今までに3回経験しました」「亡父も同様のことがありました その時は名刺だよ、と言って名前と連絡先を書いた紙を持たせており、父は自分でそれを出して自己紹介したそうです 雨降りの冬の夜のことでした 助けていただいた方には感謝しかありません」など、自分が助ける側や家族が助けられる側になったという声が多数寄せられていました。
また、「救急外来で働く医師です。このような状況で『轢かれた患者さん』を時々診察します。カワサキ様が助けて下さったおかげで、少なくとも2人分の人生が救われたと思います」など感謝の声も。さらに、「このマンガによって気を付けなきゃと思ったひとりです。注意喚起ありがとうございます」「家も山道に民家ぽつぽつだったりなので気を付けます」と投稿が注意喚起になったという人もいました。
ねとらぼ編集部では、漫画を描いたカワサキさんに、当時の心境や、作品への反響をどう受け止めているかなどについてに聞いてみました。
「どんな場所でも歩行者がいる可能性がある」 交通ルールの順守と丁寧な対応で助かった命
――夜道でおじいさんに遭遇した時から警察に保護してもらうまで、どのような気持ちになりましたか。
カワサキさん 全部がはじめての状況だったのであまり覚えていませんが、警察が来ることになるまでは不安や焦り、待ってる間は、すごいことが起きたので誰かに話したいという好奇心が勝っていたと思います。同時に、元介護職としてはおじいさんの普段の様子や家族のことを想像すると悲しく、心配でもありました。
――声をかける時に気を付けたことは?
カワサキさん 引き返した時点でおそらく認知症による徘徊(はいかい)だろうとは思ったので、平時であれば過度に驚かせないようにすることなどに気が回ったと思いますが、最初は「あの!!ちょっと!!」と大声で呼び止めるだけで精一杯でした。歩道側で安全を確保してからは、徘徊と決めつけず、丁寧に、「どこまで行かれますか?」と聞きました。初対面の人と話すときと同じです。
――今回起こったことから得た教訓はありますか。
カワサキさん 田舎道など人の目のないところでも速度制限や交通ルールを守ること、どんな場所でも歩行者がいる可能性を頭に入れておくことは忘れないようにしようと思いました。
――ネットの反応についてコメントをお願いします。
カワサキさん 拡散され始めた時点で、おじいさんに対して攻撃的な感想もいくつか見られました。感想は人それぞれとはいえ、その受け取られ方は私の本意ではありませんでした。
公開する時点で、本人や家族に届かないように名前や電話番号などももちろん仮ですし、場所のヒントも何も入れていません。万が一見られたとしても問題ないようにはしたつもりです。この方に関して私が分かることは何一つないので、認知症ともあえて書いてないです。ですが、もし認知症や高齢者、またその家族へのヘイトが集まるようであれば、すぐに削除しようと思っていました。
しかし、コメントや引用リツイートの大半は、同様の体験談や、実際に高齢者がいる家族さんの言葉、私へのねぎらい、2人とも無事でよかった、自分も気を付けようと思った、などが占めており、世の中は意外と優しいなと思いました。
――多くの反響があったことについてはどう思いますか。
カワサキさん 今回この漫画がこれだけ拡散されたのは、それだけこの問題に関する当事者がいるということだと思います。介護を必要とする人、その家族、その状況に出くわした人、それを対処した介護士や警察……。他人ごとではないという無数の感想を見て、私もまた、あらためてどの立場の当事者にもなる可能性があると思えたので良かったです。
認知症などが理由で徘徊している高齢者を見かけたときは、具体的にはどうすればいいのでしょうか。佐賀県警は「季節に合わない服装や不安そうな高齢者を見かけた場合、相手の目線に合わせ、おだやかにはっきりとした口調で声をかける」「『驚かせない』『急がせない』『自尊心を傷つけない』の3つに注意して対応する」「最寄りの警察署に届けるか、110番通報し警察官が来るまで待つ。怪我がある等応急な処置が必要と思われる場合は119番通報する」の、3つの対処方法を公開しています(佐賀県警公式サイトより)。カワサキさんの対応も、これとほぼ同じものになっていたようです。
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