月額480円で飼い主を失った猫を救う制度 “コーヒー1杯”の金額で終生飼養が可能な革新的な仕組み、熱き思いとは(2/3 ページ)
万が一に備える制度についてネコリパブリック代表に話を聞きました。
無理のない範囲で、猫の幸せをみんなで支え合えるような仕組みにしたい
――2023年2月にリニューアルしたきっかけは
河瀬:前の制度だと入会条件のハードルが高く、金額的にも高齢者や1人暮らしの方などは入りにくいかなと。そんな方々や、猫好きで何か助けたいと思っているたくさんの方が金銭的な負担が軽く、猫助けになったうえで自分の猫の安心……保証ができたら、たくさんの人が入ってくれるのではないかと、最初に月額料金を下げようと決めたんですよ。
――月額料金を480円という価格にした理由は
河瀬:どこまで月額料金を下げるかと考えたときに、1000円でもやっぱり負担は負担かなと思って、年金暮らしの方々に「いくらだったら負担がないですか」とヒアリングをしました。そうしたら「コーヒー1杯ぐらいの金額だったらね」みたいなことをおっしゃる方がすごく多くて。
じゃ、コーヒー1杯ぐらいの値段にしようとなったときに、500円でもまだハードル高いかもしれないと思って。480円という価格設定にして、じゃあそれで運営できるのかということを計算しました。
どういった方が入ってくれるかと考えたときに、やっぱりすごく意識が高い方が入ってくれると思うんですね。長く一緒に猫たちと暮らしたいという方々が安心して払える金額……480円にすれば、その480円を支払ってくださってる期間というのは、ある程度長くなって、そういう方が増えれば増えるほど、やっぱり私たちの運営費が安定することで、施設も増やすこともできる。それなら480円で運営できるという計算をしました。もちろん、明日から入院して退院の見込みがないというような人たちのために即時引き取りというサービスも別に作っています。
――実際480円での運営は簡単ではない?
河瀬:もちろん、入会者が1人の場合は運用できませんが、例えば、今は100人以上の方が入ってくださっているのが1000人になったら、1万人になったら、それってすごく大きな金額になるので、その資金を活用して施設の設立や人材の育成ができると考えています。その480円を払ってる期間、例えば、1000人の人がいきなり亡くなることはないと思うので、そういうこともいろいろ、保険の計算の仕方とかも勉強して、こういう風に保険料を決めているんだというのを勉強した上で、480円でいける! と判断して設定しています。
――月額料金の値下げは元から加入している人も対象ですか
河瀬:はい、今までの金額はご返金はできないんですけど、元から加入している方も1500円から値下げして480円になっています。すごく驚かれましたが、かなり感謝されました。
――今回のリニューアルの反響は大きかったですか
河瀬:そうですね、新規加入の方もバババッと増えてます。今まではどちらかというと、ネコリパブリックの卒業猫を譲渡した先の里親さんで、例えば保証人がいない方とか、高齢の方、お1人暮らしの方にメインで入っていただいていたんですが、リニューアル後はWebサイトから申し込みフォームを作り、入会金はかかりますがネコリパブリックから譲渡された猫以外も加入できるようにして、すでに結構な件数をお申し込みいただいています。
――ネコリパブリックの卒業猫じゃない場合のみ入会金が必要なのですね
河瀬:はい、卒業猫以外は入会金を1匹につき2万5000円を寄付としていただいています。基本的にネコリパブリックの卒業猫の場合は、不妊手術や血液検査、詳しい内臓的な健康診断、ワクチン、エイズ白血病のウイルス検査などが全員終わっているのですが、卒業猫じゃない場合は初期医療費(不妊手術は入会条件なので除く)と事務経費なども発生する場合があるのでそこに充てるという考えです(卒業猫でない場合、健康診断、各種検査、各種ワクチンが完了している猫も入会金は必要)。その分、ワクチン証明書などの提出を入会の条件から外しています。
2万5000円も高額で大変だという方もいらっしゃるので、分割払いを可能にしました。例えば5匹飼っていたら12万5000円と結構な金額になってしまう場合も、月々1000円なら払えるのであれば1000円で分割払いに設定させていただいて。とにかく個人の無理のない範囲で、猫の幸せをみんなで支え合えるような仕組みにしたいなと考えています。
――大きな反響があったということは、マイナスな意見も伝わってきたりはしましたか
河瀬:Twitterなどで、2万5000円の入会金が高いという意見もありましたが、どちらかというと入会金があってもこの制度はありがたいよねという意見が多かったです。入会金の利用用途や分割払いができることも発信してるので、理解していただけたかなと思っています。
そもそも持続可能な保護猫活動をしていこうというのが私たちのテーマで、やっぱり全てボランティアでやっていても、絶対に壁に突き当たると思うんですよね。そうじゃなくてちゃんと対価をいただく、そして、それに対してしっかりとサービスとして、自分たちができる範囲の事業提供をするのが健全なのかなと。そこでぼろもうけをしようと思ってるわけではなくて、その仕組みがないと救えない猫がいるというのが伝わるといいなと思っています。
あとは、「本当に480円で大丈夫なのか」と心配してくださるご意見もあるんですけど、私たちも覚悟をもってリニューアルしています。また、東京・岐阜・大阪など他拠点に店舗があって、シェルターも持っているのが他の保護施設とはまた違うところなので、一気に100匹ってなると無理ですけど、今の時点では加入者の中で何かが起こったときは、すぐに引き取れる体制はしっかりと取れています。
――月額料金を下げる&加入条件を緩和することで加入者を増やし、制度を拡げようと
河瀬:規模感が大きくなればなるほど、ある程度の動きができるようになってくるのは、今まで9年間やってきて実感しています。今もやっぱり定期サポーターの方がいらっしゃったりすることで、安定したベースができています。それがだんだん大きくなれば、ベースが大きくなればなるほど救える猫って増えてくるなというのを感じているので。
かつ、行政と連携して行っているふるさと納税の活用なども開始して、もちろんボランティアさんもたくさんいるんですけど、ベースとなる雇用スタッフそれぞれがもう本当に猫が好きで、身を粉にして働いてくれているのでできることかなと。
――「猫生たすけあい制度」は全国どこに住んでいても加入できますか?
河瀬:交通費と人件費のみ猫のお迎えの際のご負担をお願いするので、入会の際に計算させていただきます。基本的に全国どこでも加入加能です。
――猫を飼っていなくても加入可能ですか
河瀬:猫を飼っていない人用のプランもあります。加入者は(猫を飼っている人同様)ネコリパブリックのサポーターとしての特典が受けられます(保護猫カフェの割引など/案内メール月1回配信)。Twitterなどで「そういうプランがあればいいのに」というご意見をいただいたので、ありがたいなと思ってこのプランを作りました。
――加入者の中で、実際にこの制度を利用された人はいらっしゃるのでしょうか
河瀬:急に育てられなくなった方のために即日受け入れというのを別料金(詳細はWebサイト)で設定してるので、そちらを依頼されることはちょくちょくあります。急にガンになってしまったから即日入院しなきゃいけない方とか、余命宣告をされたのでいったん即日料金を支払って、いざ何かあったときは迎えに来てくださいという方もいます。それで実際に亡くなったと連絡を受けて、すぐに迎えに行くということもあります。
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