音声SNS「Clubhouse」の今 声優・平野文が毎週配信を続けるワケ 「声は、すべてを看破します」(2/3 ページ)
招待制から始まりコロナ禍でブームになったあのSNSの今。定期的に活用しているユーザーたちに話を聞いた。
「知らない世界がまだまだある」
「#23club」には、日本全国のみならず、海外リスナーからも情報が寄せられます。平野さんは「私の知らない世界がまだまだあることを再認識しながら、毎週金曜の夜を楽しみにするようになりました」といい、ともに番組を進めてきたコグレさんとヤガーさんが居なければ、「ここまで長く続けては来られなかったはず」だと振り返ります。
実際に筆者も聴いてみると、まるで平野さんのお宅にお邪魔したかのような、アットホームな印象を受けました。世代も立場も超えた人々の生活が、「#23club」を接点に交差していく――。いかにリスナーとの関係性を築くのかを問うと、平野さんは「声は、すべてを看破します」と断言します。そこには、声から人間性を感じ取ってほしいとの思いがありました。
声を通して「人を見る目を養ってほしい」
「大げさかもしれませんが、声だけでのやりとりによって、見た目にごまかされない、その人の『中』を知る力を体得していただきたい。どうしてこういうしゃべり方をするのだろうか、どうしてこういう声なのだろうか、そこから、その人の性格なり暮らしぶりなどをイメージしていただきたい。声にはその人のすべてが集約されていることを体感していただきたい。声はすべてを看破しますので、その声から、人を見る目を養ってほしいと思っています」(平野さん)
声はすべてを看破する。この考え方が、リスナーとの関係性づくりの下地になっているようです。
「逆に申し上げれば、私がウソをついたり取り繕ったり、うわべ笑いなどをしたとしたら、相手はすぐに見破るはずですので、私のスタンスも自然と『横から目線』。イコール相手と同等、あるいは場合によっては『下から目線』でのトークとなります。正直に相手と対峙する。それは私にとっても、たいへん心地よいことでもあります」(平野さん)
生トークで実感する「リスナーのステップアップ」
17歳からのラジオ経験から、平野さんは「リスナーさんは優秀なプロデューサー」だと感じています。またリスナーにとっても、「生トーク」を通して、新たな発見があります。
「この番組で生トークをすることによって、人と言葉を交わすことにももっと慣れていただきたい。文字のやりとりもよいけれど、トークの蜜加減=会話のキャッチボールの愉しさを体験していただきたいという思いもあります。現に、2度、3度と登場していただく方のほとんどが、そのたびにトーク力があがり、声慣れしていき、臆さず、愉しそうに話してくれるようになっています。私自身、そのステップアップを実感することの楽しみもあります」(平野さん)
興味本位の先に「やさしい空間」が広がっていた
実は筆者、生トークに参加したとき、突然呼びかけられて、ちょっと身構えました。聞き覚えのある平野さんの声で、まさか自分の名前が呼ばれるなんて……。おそらくリスナーさん、みなさん通られた道なのでしょうね。
「Clubhouseは、今どうなっているか」。失礼ながら、当初は興味本位だったのですが、話を聞くにつれて、その奥深さを感じました。「わざわざ聞きに来る」ことで生まれる関係性、そして「声」の持つ可能性。双方向のトークが紡ぎだす「やさしい空間」が、そこには広がっていました。
著者紹介
城戸譲
1988年生まれ。Jタウンネット編集長、J-CASTニュース副編集長などを経て、フリーランスに転身。「ネットメディア研究家」「炎上ウォッチャー」を名乗り、政治経済からエンタメまで、幅広く執筆活動をしている。ねとらぼ連載「あのSNSは今」では、一時代を築いたウェブサービスや、ネット上で話題になった出来事・人物などの「その後」を紹介する。
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