「a^2+b^2+c^2=2020」を満たす自然数a,b,cを求めよ シンプルなのにめちゃくちゃ難しい…… 難関大学レベルの数学に挑戦!(8/8 ページ)
数学は奥が深い。
大きい数字は素因数分解
条件式の右辺は2020という大きい数字なので、このままではなかなか絞ることができません。そこで、まずは素因数分解をして簡略化できないか考えてみましょう。
- 2020=2×1010=2×2×505=2×2×5×101
以上より、2020は偶数であり、4の倍数であることが分かりました。次は、左辺の性質について考えてみます。
平方数の余りは特徴的
平方数の余りというものは特徴的です。なかでも、平方数を3で割った余りと4で割った余りは使い勝手がいいものなので、仕組みも含めて理解するようにしておきましょう。
平方数を3で割った余りは「0か1」
【証明】整数xについて「x=3y」「x=3y+1」「x=3y+2」(yは負でない整数)とすると、x2は次のようになります。
- (3y)2=32×y2=3z (3y2=zとおいた)
- (3y+1)2=32×y2+6y+12=3z+1(3y2+2y=zとおいた)
- (3y+2)2=32×y2+12y+22=3z+1(3y2+4y+1=zとおいた)
以上のように、ある整数xを3で割った余りは0か1になります。
平方数を4で割った余りは「0か1」
【証明】整数xについて「x=4y」「x=4y+1」「x=4y+2」「x=4y+3」(yは負でない整数)とすると、x2は次のようになります。
- (4y)2=42×y2=16y2(4の倍数)
- (4y+1)2=42×y2+8y+12=4z+1(4y2+2y=zとおいた)
- (4y+2)2=42×y2+16y+22=4z(4y2+4y+1=zとおいた)
- (4y+3)2=42×y2+24y+32=4z+1(4y2+6y+2=zとおいた)
以上のように、ある整数xの2乗を4で割った余りは0か1になります。
先述したように、2020は4の倍数なので、a2,b2,c2はそれぞれ4の倍数となります(どれか1つでも4で割った余りが1の場合、a2+b2+c2が4の倍数にならない)。
よって、a=2x,b=2y,c=2z(x,y,zはともに自然数)とおくと、条件式は「4x2+4y2+4z2=4×505」すなわち「x2+y2+z2=505」と変形できます。右辺の505は3で割ると「169余り1」となり、1余るので左辺もまた3で割ると1余ると分かります。
整数の2乗を3で割った余りは0か1であるため、「x2+y2+z2」を3で割った余りが1になるためには、x2、y2、z2のいずれか2つの余りが0に、残り1つの余りが1になればよいということになりますから、xとyが3の倍数でzが3の倍数でないとすると、自然数p,q,rによってx=3p,y=3q,z=3r±1と表すことができます。
従って、条件式は「9p2+9q2+(3r±1)2=505」すなわち「9(p2+q2+r2)±6r=504」より、「3(p2+q2+r2)±2r=168」と変形できます。
倍数は“積の形”(整数=整数×整数)でチェック
整数では、かけ算の形で表すことで倍数を示すという方法が有効です。
「3(p2+q2+r2)±2r=168」は「±2r=3{56−(p2+q2+r2)}」と整理でき、「56−(p2+q2+r2)」は整数であることから右辺は3の倍数だと分かります。よって、左辺の「±2r」も3の倍数となり、rが3の倍数であることが導けるのです。
ここでr=3s(sは自然数)とすると、条件式はさらに「p2+q2+9s2±2s=56」すなわち「9s2±2s=56−p2−q2」と変形できます。
範囲を絞って代入
整数では、「条件から範囲を絞る」ということもポイントの1つです。
「9s2±2s=56−p2−q2」の右辺は、p2とq2がともに自然数であることから、56以下の数となります。この範囲をもとに、左辺を考えてsの範囲を絞ってみましょう。
sが3のとき、「9s2−2s=81−6=75」となり、56より大きくなってしまいます。そのため、どうやらsは3よりも小さい数字となりそうです。
すると、sは自然数であることから自然と可能性は「s=1,2」と絞られます。あとは、その2つをともに調べてみましょう。ただ、そのときは式を「p2+q2=56−(9s2±2s)」と変形した方が計算しやすそうです。
s=1のとき
p2+q2=56−(9±2)より、
- p2+q2=45 …… パターンA
- p2+q2=49 …… パターンB
パターンAの場合
pの範囲は1≦p≦6。よって、pとq2の組み合わせは以下のようになる。
(p,q2)=(1,44),(2,41),(3,36),(4,29),(5,20),(6,9)
qは自然数なので適するのは(3,36)と(6,9)のとき。
よって、(p,q)=(3,6),(6,3)。
パターンBの場合
pの範囲は1≦p≦7。よって、pとq2の組み合わせは以下のようになる。
(p,q2)=(1,48),(2,45),(3,40),(4,33),(5,24),(6,13),(7,0)
qは自然数なので適する組み合わせはない。
s=2のとき
p2+q2=56−(36±4)より、
- p2+q2=16 …… パターンC
- p2+q2=24 …… パターンD
パターンCの場合
pの範囲は1≦p≦4。よって、pとq2の組み合わせは以下のようになる。
(p,q2)=(1,15),(2,12),(3,7),(4,0)
qは自然数なので適する組み合わせはない。
パターンBの場合
pの範囲は1≦p≦4。よって、pとq2の組み合わせは以下のようになる。
(p,q2)=(1,23),(2,20),(3,15),(4,8)
qは自然数なので適する組み合わせはない。
従って、適するp,qの組み合わせは(p,q)=(3,6),(6,3)となります。
対称性と代入に注意!
pとqの組み合わせがわかり、思わずほっとしてしまいそうですが、求めるのはa,b,cの組み合わせです。意外と見落としがちな点なので、「何を求めなければならないのか」については忘れないように意識しましょう。
求めたp,qの組み合わせはs=1のとき、すなわちr=3のときの値でした。また、パターンAは「±2s」のうち、「+2s」の場合でした。よって、x,y,zの組み合わせはx=3p,y=3q,z=3r+1より、(x,y,z)=(9,18,10),(18,9,10)となります。よって、a=2x,b=2y,c=2zからa,b,cの組み合わせは(a,b,c)=(18,36,20),(36,18,20)となりそうです。
ただし、ここで注意したいのは、途中で定めたx=3p,y=3q,z=3r+1という設定はあくまで仮に決めたものであるということ。つまり、「x=3p+1,y=3q,z=3r」「x=3p,y=3q+1,z=3r」の場合も同様に適するというわけです。
よって、求めるa,b,cの組み合わせは(a,b,c)=(18,36,20),(36,18,20),(20,18,36),(20,36,18),(18,20,36),(36,20,18)の6通りとなります。
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