山口県を放送対象エリアとするテレビ局「テレビ山口」は、同局が放送・配信したニュース企画の中で、他局が放送・配信したニュース企画の原稿と著しく類似した表現が行われていたとして、12月4日に謝罪しました。社長に減俸処分が下った企画内容は、一体どのようなものだったのでしょうか。
福岡のテレビ局のニュースと酷似していた
「放送・報道に携わる者として決して許されない、言語道断の行為であり、当該の放送局のスタッフの皆様、関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」
テレビ山口総務局は12月4日、「特集記事での不適切な対応について」と題した文書を公式サイトに公開。同局が配信したニュース企画の中に、他局が放送・配信したニュース企画の原稿表現をそのまま引用、類似した表現が使用された文章が複数存在していることが分かったと報告しました。
テレビ山口が放送・配信したのは「50年前の法律で部活は『サービス残業』中学教員の1日に密着」というニュース。10月12日に報道・情報番組「mix」内で放送し、11月5日には放送をテキスト化した記事と動画を配信しました。内容は教員の働き方改革と部活動の地域移行を取り上げ、県内の教員の1日の仕事に密着するというもの。担当したのは報道部の20代記者でした。
11月24日、この特集内容について自社のニュースとの類似性を指摘したのは、福岡を放送対象エリアとする九州朝日放送でした。同社は2022年11月に教員の働き方を取り上げたニュース企画「休日に部活顧問も…多忙極める教師の実態に密着」を放送。公式YouTubeでも配信していました。
酷似していた内容とは
2つのニュース企画を比較した結果、原稿(ナレーション部分)全35文のうちほぼ一致した表現が8文、類似した表現が6文確認され、さらに全体の構成(場面の選択、映像の選択、インタビュー位置など)も類似性が高いことが分かったといいます。
具体的にはどのような内容だったのでしょうか。例えば九州朝日放送のニュース冒頭のナレーションは「福岡市立〇〇中学校の教師、〇〇先生。毎朝7時半ごろに登校します。担当教科は理科……」と、学校名や取材した教員の担当教科などを伝える内容です。
これに対し、テレビ山口のニュース冒頭のナレーションでは「山口県〇〇市立〇〇中学校の教員、〇〇さん。毎朝7時ごろに登校します。職員室で早速、授業の準備です。担当教科は英語……」と、ほぼ同様の表現がみられました。
その後も教員の一日の仕事を追ったニュースの中で、九州朝日放送と酷似した表現がたびたび使われていました。内容面でも、教員が時間外労働である部活動顧問の仕事に追われていること、それを改善するために部活動指導の地域移行が進められていることなど、2つのニュースはほぼ同様の構成となっていました。
テレビ山口は「取材自体は、テレビ山口が山口県内の学校に独自に依頼し、承諾を得て実施された」ものだったとしつつ、担当記者が九州朝日放送の動画を参考に、表現をそのまま引用したり、類似表現を意図的に使用したことを認めたとしています。
今回の問題を受け、テレビ山口は代表取締役社長に「減俸10%(3カ月)」、代表取締役専務に「減俸 5%(1カ月)」の処分を、また報道制作局長、報道部長、担当記者には減給1回の処分をそれぞれ下しています。
同社は「基本的な記者教育がなされていなかったことが今回の事案の大きな原因」だとし、ガイドライン作成などの再発防止策を実施するとしています。
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