「海を見せてあげたい」 愛猫の骨壺を抱いて、海へ行った次男との愛に満ちた思い出が胸にグッとくる(1/3 ページ)
「ペットロスとの寄り添い方」第30回は猫「にぼし」くんです。
多くの飼い主が一緒に暮らす動物を“大切な家族の一員”として捉え、人生をともに歩んでいます。動物と暮らした時間は長くとも短くとも、深い愛情を持って接した分、飼い主にとって人生のかけがえのない一部となり、別れは深い悲しみとなって心身に押し寄せます。
ペットロスとは
愛する動物との死別による喪失感や混乱、後悔など、抱えきれないほどの悲しみによって心身が不安定になる状態を指す「ペットロス」「ペットロス症候群」。2023年、20歳〜69歳のペットを飼っているまたは飼育経験がある391人を対象に実施された「ペットロス」に関する調査では、「約8割が『ペットロス』という言葉を見聞きしており、約4割が実際に経験している」と発表されています(サンセルモsorae調べ)。
飼い主にとって非常につらい経験となり、カウンセリングを要するケースもあることから、「ペットロス」「ペットロス症候群」は今、メンタルヘルス上の大きな課題として多くの人が向き合っています。動物とのこれまでの日々を忘れたり、死を乗り越えたりすることはできないかもしれませんが、時間の経過とともに受け入れ、いつかふと思い出したときにあたたかい涙がこぼれるような“寄り添い方”はあるはずです。
そこでねとらぼでは「ペットロスとの寄り添い方」をテーマに、読者にアンケートを実施。寄せられたさまざまなエピソードから、愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事をご紹介していきます。現在動物と暮らしている人や、悲しみの渦中にいる人に寄り添うヒントとなれば幸いです。
第30回 飼い主・かぼすさん/猫「にぼし」くん
―― にぼしくんのプロフィールと出会い、思い出や印象的なエピソードを教えてください
かぼすさん:にぼしは家の庭で保護した猫で、次男にとても懐いていました。いつも次男にべったりで、まるで兄弟のような親友のような、そして恋人のような関係でした。
あるとき、私が次男にお説教をしていると、にぼしが私と次男の間にスタスタと割って入り、私の顔を見て「にゃーーー」と鳴いたのです。その姿はまるで「もう勘弁してやってくれ」と、次男をかばっているようでした。私も次男も思わず笑ってしまい、その場は丸くおさまりました。
また、次男が短期留学でカナダに行ったとき、まるで留守を守るかのように次男の部屋から出てこなくなりました。しかし、次男とビデオ通話しているときだけは声を聞きつけて出て来て次男を必死に探し、PCに映っている次男の映像にスリスリしながら何度も鳴いていました。
初めての異国でただでさえホームシックだった次男は、ますますホームシックになっていました。帰国したときに脇目もふらず、にぼしのところに行き抱きしめる次男の姿に涙がでました。
―― にぼしくんと別れてからの心境や、救われた出来事などがあれば教えてください
かぼすさん:5歳で虹の橋を渡りました。あまりにも突然の別れで何も考えられませんでした。なんとなく息が苦しそうだったので動物病院に行ったら肺水腫にかかっていて、一気に容体が悪くなり、そのまま逝ってしまいました。悲しくて悲しくて涙が止まらず、次男と一緒に泣き明かしました。
葬儀が終わったあと、室内猫だったにぼしに海を見せてあげたいと次男が言い、骨壺に入ったにぼしを抱いて、近所の海までドライブしました。夏の夕方の海辺を散歩し、ドライブを続けて見せられる限りのきれいな景色をにぼしに見せました。
無理につらさを克服しないことが大切だなと感じました。何年たっても悲しくていいし、泣いてもいい。自分の気持ちを大切にすることが一番です。私も次男も早く立ち直ろうと思わずに、泣きたいときは泣くようにしていました。
―― 現在の心境を教えてください
かぼすさん:次男は自分の部屋ににぼしの遺影と骨壺を置き、にぼしが大好きだったごはんをたくさんお供えしています。学校から帰ってくると「にー、ただいま」と言い、お小遣い日にはにぼしが好きだったごはんを買いに行きます。
私はその姿を見るうちに、「別れではなく在り方が変わっただけなんだ」と思うようになりました。姿が見えなくても私たちの心の中でずっと生き続けてくれますし、きっと私たちを見守ってくれていると思います。
これからにぼしは次男と一緒にいろいろな場所に行き、いろいろな景色を一緒に見るのでしょう。18歳の青年と白黒ハチワレ猫コンビの旅は始まったばかりです。
―― にぼしくんに伝えたいメッセージ
かぼすさん:にぼし、どうもありがとう。私たちの中でずっと一緒に生き続けてください。いつか生まれ変わってまた会いにきてね。ずっと待っているからね。
(了)
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