長机&コンセント供給に記者大歓喜! 光る広報の気遣いと変わり始めた報道陣、NHK紅白歌合戦2024取材の裏側:第75回NHK紅白歌合戦(4/5 ページ)
リハーサルの裏側などを振り返ります。
光るNHK広報の気遣いと、変わり始めた報道陣
今回も「今、リハーサルが押しているという情報が入りました」「15分巻いて始まる可能性があります。皆さんの近くにいらっしゃった記者の方で姿の見えない方がいらっしゃったら教えてください」「もし巻いて始まったらご都合が良くないという方はいらっしゃいますか」と随時、報道陣を気遣っていたNHK広報チーム。
紅白本番に向けて大道具が運ばれるなど文字通りバタバタしていた待機スタジオ周辺ですが、外には「取材中 お静かに」とのはり紙が貼られるなど、取材に差し支えが出ないようにとの配慮もされていました。
またコメント取材時も終了直後に「NHK広報○○です。先ほどのコメント取材での回答ですが、正しくは○○となります」といった訂正・補足も非常にスピーディーに入り、さすがの対応力に驚かされました。
そしてこうしたやり取りの中で個人的に驚いたのが「報道陣のヤジの減少」です。コロナ禍以前の紅白取材といえばカメラマンからアイドルに向けて「もっと笑って!」などの怒号が飛ぶ場面も少なくありませんでしたが、今年は「はい、いい感じですよ〜! かわいく撮れてます〜!」など態度がかなり軟化。前述のように情報の訂正・補足が入っても以前のように不満を口にする人はおらず、大きな混乱はありませんでした。
また紅白本番に向けてのレイアウト変更が必要なため、取材終了後はなるべく早くスタジオから退出する協力を求められますが、ここでも報道陣はきびきび対応。本来は一刻も早く記事を配信させたいところですが、取材終了5分後にはほぼ全メディアが退出を完了させていました。
やっぱりちょっと寂しい取材スタイルの変化
取材申し込みからリハーサル取材3日間を通して「スムーズ」という言葉がぴったりなほど順調だった今回の取材。
スムーズだったからこそ、やはり「リハーサル自体が事前収録の映像視聴」のスタイルに変更されたこと、「記者クラブのみ質問権があるコメント取材」には少し寂しさを感じます。
例えばNHKが用意してくれているカメラはリハーサルの様子を良く映し出しており、分かりやすさはあるものの、取材は「記者の目」を通して「どこに注目するか」が媒体ごとの“味”につながるため、同じ提供素材を全員で視聴するスタイルの場合「目」が固定されてしまうのでどうしても“味”が弱くなりがちなのです。
特に「リハーサルそのもの」よりも、「リハーサル前後」の流れ(アーティストの入場、あいさつ、雰囲気、私服のファッションチェック)、空気感などを重視している媒体にとっては、やや物足りない感は否めませんでした。
また「記者クラブのみ質問権があるコメント取材」については、基本的には良い取材手法だと思いましたが、記者クラブの記者が詳しくないアーティストの登場時に質問が2問のみになるなどする場面も見られたため、一般メディアから残念がる声も上がっていました。
ただ、このような取材スタイルに変更された背景には、感染症対策はもちろんのこと、報道陣由来のトラブルを減少させる狙い、収録となるため万が一リハーサル中にトラブルが発生しても記事化されない、アーティストが報道陣の目を気にせずリハーサルに取り組めるなどのメリットがあると考えられます。
元来リハーサルはアーティストと番組のために行うもので、それを取材させてもらえるという状況だけでもありがたいため、今後もこのようなスタイルの中、どのような伝え方が最も良い方法なのかを考えることが我々報道陣の課題になっていくとも感じました。
紅組34勝、白組40勝の中、白組の優勝で終幕した「第75回NHK紅白歌合戦」。第76回ではどのような演出で大晦日に華を添えるのか、今から楽しみです。
本年もねとらぼをよろしくお願いいたします。
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