第6回 メガネ型「JINS MEME」が着目する“ディープデータ”:“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)
ジェイアイエヌが5月に発表した「JINS MEME」は、Google Glassなどとはまったく異なるアプローチのメガネ型ウェアラブルデバイスだ。眼電位を測定するJINS MEMEから得られるデータは、高精度な身体情報として注目に値する。
ディープデータへのフォーカスとプラットフォーム化
こうしたデータの取得は、JINSにとってどのようなメリットがあるだろうか。
JINSは2009年に「AIR FRAME」という非常に軽いメガネフレームをリリースし、人気に火がついた。「眼鏡が軽い」という新しい価値の提供と、価格の安さで、数本まとめて新調して、気分に応じて変えたり、予備にするといった新しい使い方にもつながっている。
また、2011年に発売した「JINS PC」は、PCのディスプレイに含まれるブルーライトをカットするレンズを採用したアイウェアのシリーズだ。当初は視力矯正がないタイプから発売したことで、これまでメガネをかけてこなかった人たちが、機能を求めてメガネをかける、全く新しい市場を作り出すことに成功している。
アイウェアに関してイノベーションを起こしてきたJINSにとって、JINS MEMEでやりたいことは、今までとは異なるという。
「JINS MEMEから取得できる目からの情報のプラットフォームになれるのではないか、と考えています。簡単な例でいえば、ストレスのヒートマップを実際の街で作れるかもしれません。ビッグデータは何かが起こった後の情報を膨大に集めますが、我々の情報は人体にまつわるより詳細な『ディープデータ』です。これらの集積によって何かが起きる前のデータ、予測データが実現できると考えています。異なる価値を、積極的に活用して行きたい」(一戸氏)
アイウェアのブランドが、ディープデータを扱う情報企業へ。そんな転身すらあり得るほど、JINS MEMEで取得できるデータは示唆に富んでいる事を表している。取得したデータは、すべてを同社が扱うのではなく、オープン化しながら、さまざまな研究などへの活用にも可能性を見出したいそうだ。
しかし、製品自体は、他の製品と同様に、コンマ何ミリまで小さく、数ミリグラムまで軽く、という追究が施されている。JINS MEMEを見て、電気メーカーの人々から「うちがやりたかった」という声も聞かれたそうだが、「他社さんがやっても、この形にはならなかった」とメガネとしての出来には絶対の自信を持っている。
ずっと身につけるものだ。そういった技術と自信に裏付けられたものを選びたいと思うのは筆者だけであろうか。
JINS MEME ACADEMIC PACKとAWARDを発表
2015年春の一般発売を予定しているというJINS MEME。11月27日には、研究向けのJINS MEME販売と、アワードの創設を発表した。
「JINS MEME ACADEMIC PACK」は、2台のJINS MEMEとデータ解析ソフトウェアが付属し、学術研究者向けに50万円(税別)で販売される。このパックでは、APIを介さず、取得した眼電位や六軸センサーのデータを直接取得でき、さまざまな研究に活用できる。
また、JINS MEMEの可能性を引き出すため、リバネスの研究助成制度を活用した「JINS MEME ACADEMIC AWARD」を創設し、研究支援を行う。採択予定の件数は4件で、1件の本賞では研究費50万円とACADEMIC PACKの提供、3件の奨励賞には、ACADEMIC PACKの提供をそれぞれ行う。
インタビューでも強調していたが、JINSとして、必ずしもJINS MEMEのデータや可能性を1社だけにとどめる事は考えていないという。何が起きるのか、社会のどんな役に立つのか、という可能性を、より多くの人と作る姿勢が印象的だった。
ウェアラブルのはじめのイメージを変えて、正しいイメージを与えることができるという義務感・責任感が、JINS MEMEには込められている。
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