コンドームでは日本一、だけど悩みも…… 「オカモト」の社員さんに話を聞いてきた
東京大学3年生・高野りょーすけが「オカモト」の社員さんに話を聞いてきました。
日本で一番コンドームを売り上げている当社「オカモト」ですが、この度、新しい商品を出すことになりました
林知礼さんプロフィール
95年オカモト入社。医療生活用品マーケティング室マーケティング課。入社のきっかけは車が好きでタイヤなども手掛けていたオカモトのゴム技術に興味を持ったこと。コンドームに携わってからは10年。初体験は高校生の時。
新しく出るのは「オカモトゼロワン たっぷりゼリー」「オカモトゼロワン ローション ソフト」「オカモトゼロワン ローション ハード」の3つで、今回はこちらをご紹介いただければと思っています
高野りょーすけプロフィール
東京大学3年生。ブログで始めた企画「東大生の1日を50円で買ってくれませんか」が話題となり、現在ライターとしても活動中。童貞。
かしこまりました
そもそもの話になりますが、日本が薄型コンドーム王国ということをご存じですか?
ご存じじゃないです
海外では0.07ミリぐらいのコンドームが一般的な厚みなんですが、日本では0.01ミリ台の「オカモトゼロワン(※1)」をはじめ、世界トップクラスの薄さを誇る商品がたくさん販売されています。お土産として持ち帰る外国人の方も多くいらっしゃいますし、日本のコンドーム製造技術はジャパンテクノロジーとしてもっとフィーチャーされていいと思うんです
※1 販売名:オカモトコンドームズS 医療機器製造販売承認番号:22500BZX00538000 (使用目的:避妊及び性感染症予防の補助)
なるほど
当社がコンドームの研究をはじめたのは、「品質の良いコンドームは世の中に貢献できる」と考えたことがキッカケでした。オカモトの創業者が1934年に独自の配合技術で製造を開始して、その知見の集大成として2003年に大ヒットしたのが、厚みをそのまま名前にした「003(ゼロゼロスリー)(※2)」です。コンドーム業界ではじめて、具体的な薄さが機能であり価値であることを前面に打ち出したんです
※2 販売名:ゼロゼロスリー 医療機器製造販売認証番号:220ABBZX00001000 (使用目的:避妊及び性感染症予防の補助)
順調じゃないですか。コンドームのオカモトさんといえば多くの方々が知ってますし、新作のコンドームもローションも勝手にどんどん売れると思います
それが、コンドームを売っているからこその困難がありまして……
と、おっしゃいますと
コンドームを作る会社の悩み
オカモトは現在国内外に複数の工場を持っていて、それぞれの技術にあった商品を作っています。ビニールハウス用のフィルム、壁紙、車の内装材、手袋、カイロ、プラスチックフィルム……実は、コンドームの売り上げは全体の10パーセントもないんです
それでも、世間では「コンドームのオカモト」さんのイメージが強いですよね。林さんはコンドームが大好きだから入社されたんです?
いえ。
もともと車が好きで車に関連する会社を受けていたんです。オカモトのコンドームはもちろん知っていましたが、それ以外にタイヤの事業をやっていることも知っていたので入社しました
当時から、コンドームを売っている会社としてよく知られていたんですね
はい。ありがたい話なんですが、ほかの部署にとっては、必ずしもそうではないケースもあるんです。お子さん向けの商品などが絡むと「オカモト」という社名だけで先方からNGが出たり、プレゼントキャンペーンを企画したときに「うちの商品は使わないでください!」と拒否されたり……。入社してから20年ちょっとですが、ずっとこんな感じなんです
確かに、風当たりが厳しいような気がします
厳しいというよりも、ちょっと誤解があるのかなと思うんです。高野さん、学校でコンドームのことを習ったことはありますか?
あまりないと思います。学年集会で「このあと女子だけ残ってください」と言われることがありましたけど、あれはおそらく生理とかの話ですよね
大学の先生とよく話すんですけどね、大学生は性に直面する世代にもかかわらず、大学になると一般教養なんかで避妊具や性感染症の授業はないじゃないですか。なので高校までに習う必要があると思うんですけど、先生の得手不得手や理解にバラつきがあって現場任せになっているんです。伝えようと思っても、面白がったり恥ずかしがったりといろいろな反応があるのでうまくいかないことがある、と
失礼ですけど、林さんが初体験をされたのはいつですか?
高校の時ですよ
コンドームの使い方って学校で習いました?
いえ、記憶にないです。当時から学校教育の中でコンドームのことを上手く伝えきれていない現実があるんです。私たちがイベント中に啓発としてコンドームを配っても、「セックスを助長するな!」と言われることがあるんです。この発想自体が、性の捉え方が日本ではねじれてしまっていると思っていまして
ねじれている?
コンドームってアダルトグッズではないじゃないですか。コンドームをつけることは、風邪をひいてる人がマスクをするのと同じです。マスク・ばんそうこうと同じように感染を予防できるものなのに、そのような感覚は浸透していないような。風邪のとき目の前でコンコン咳するのはダメということは学校や家庭で自然とわかりますけど、コンドームでは必要以上に面白がったりセンシティブになって、正しい知識が身につきづらい。これは不幸ですよね
昔に比べると、性の知識は身につきやすくなりましたか?
ネットも普及してきてますからね。ただ逆に、知っておくべき知識とは真逆の情報も存在しているので、「正しい知識」が見極めづらいのかなとも思います
できるのは「つけてみたい」という商品を作ること
大事なのは、知っておくことだと思うんです。風邪をひきたくてひく人はそんなにいないでしょう。私は100人中100人全員がコンドームをつけるべきとは思っていないですし、例えば子どもがほしいときなど、不要なシーンもあると思います。ですが正しい知識を持っておかないと、望まない出産や性感染症につながってしまう。また必要と思ったときに抵抗なく使えるように、コンドームを日用品としての市民権を作ることも大事な気がしていて
望まない出産というと、避妊率について書かれた有名な論文で「コンドームは4パーセントの確率で失敗する」みたいなのあるじゃないですか。あれって事実なんですか?
有名ですよね。この間も研究所の先生に見解を聞かれましたが、結局なんとも言えないんですよ。データは出ていますが、最初から最後まで研究者が「コンドームはちゃんとつけているか?」って性行為を見ているわけにもいかないと思いますし。アンケートを取ったりしますが、パートナーが変わればどうなるかわからないですよね。そういう意味で着用率などコンドーム関連のデータで絶対的なものは難しいと思います
企業や研究者の方々がそうだとすると、性って当事者しかわからないことが本当に多いですね
はい。だからこそ一番思うのは、私たちができるのはユーザーの皆さんにつけてみたいと思われる商品を作ることなんだなと。メーカーとして性教育を変えていくのは難しいので、商品を通じてなんとかできればと思います。この「ダンボー(※3)」とコラボしたコンドームもその1つですね
※3 販売名:OKドーム 医療機器製造販売認証番号:220ABBZX00045000 (使用目的:避妊及び性感染症予防の補助)
よく許可がもらえましたね
若い人にも親しみやすいデザインにすることで、コンドームをもっと身近に感じて手にとっていただくキッカケになればと
この「メガビッグボーイ(※4)」という商品すごいですね
※4 販売名:メガドーム 医療機器製造販売認証番号:22500BZX00538A01 (使用目的:避妊及び性感染症予防の補助)
外国の方などは「日本のコンドームは小さい」というイメージを持っている人が多いようなんですね。実際はそんなこともないのですが、確かに大きなサイズの需要もあるんですよ
新商品に「ローション」が加わったのはどうしてですか?
オカモトでは以前からぺぺローションとコラボした「オカモト・ペペ」というローションをドラッグストア向けに販売しています。一方でアダルトグッズのお店で売られているローションって製造元が書いてないような商品も出回ってたりするんですね。だから、より安心して使ってもらえる「オカモトゼロワン」ブランドのローションは新たな需要を喚起できるのではないかと
なるほど
「オカモトゼロワンローション(※5)」と同じタイミングで発売された商品で「オカモトゼロワン たっぷりゼリー」というのもあります。こちらは非常にたっぷり潤滑ゼリーが入っているのが特長です
※5 販売名:オカモトコンドームズ A 医療機器製造販売承認番号:22500BZX00538A01 (使用目的:避妊及び性感染症予防の補助)
そうなんですね
年齢に関わらず、潤いが少なめで、「セックスはこういうものか」と1人で性行痛を我慢している女性って結構多いらしいんですが、精神的な要因で潤い不足になることもあるようです
お話を伺うと、根っこにあるのが性についてのパートナーとのコミュニケーション不足だと思いました
その通りだと思います。パートナーと話をすることが、学校の教育の捉えられ方がそうであるように、非常にセンシティブで話しづらかったり、タブー視してしまう感覚を持つ方も少なくないんでしょうね。よく言えば奥ゆかしいといいますか
海外ではどうなんですか? 奥ゆかしさなんて微塵もなかったり?
カップルが仲良くアダルトショップに出かけていって、1個2万円する長持ちタイプのバイブレーターを買って行ったりすることもあるようです。日本だとなかなかない光景というか。向こうの方が経験豊富とか好奇心旺盛ということではなく、パートナーと向き合ってコミュニケーションを取る意識があるかどうかだと思うんですけど。私自身、コンドーム関連業務には10年しか携わってないのでえらそうなことは言えませんが
10年は、長いと思います
コンドームの専門家と言われることがありますが、私たちは作る方の専門家であって、前後のケアは知識や経験を伝えることしかできないんです。また学校の先生やお医者さんも、教育や病気の専門家であって、コンドームの専門家というわけではないですよね
親や先生だったり、きちんとした知識や経験を持っている人が指導者としてあるべきなんじゃないかなと。すごく専門的な知識ではなく、リスクやコミュニケーションの大切さを知って周りに伝えようとすれば、親も先生も彼氏も彼女も、思いやりを持った一番のアドバイスができるのではないでしょうか
コンドームで有名なオカモトさん。自分の人生とは縁が遠かったが、今回のお話でコンドーム以外にもいろんな製品を作っていることや、知名度ゆえの悩みなどを知った。何より利用者のことをとても深く考えて1つ1つの商品を作っているということが印象的だった。
新商品の「オカモトゼロワン たっぷりゼリー」は潤滑ゼリーが非常にたっぷりで、ゼリーをイメージした青のカラーが目印になっている。シリーズ初のローションは、洗い流しやすい「ソフト」と使用中に乾きにくい「ハード」の2種類が用意されている。ぜんぶ林さんの受け売りなので、皆さんで試してみてください。
1万円分以上のコンドームをお土産にもらって林さんと別れた。帰りの坂道で転ばないか心配でした。
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提供:オカモト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ編集部/掲載内容有効期限:2017年12月5日