家庭用ハードをインターネット上に仮想化したい――「ラクガキ」から生まれた3Dインターネットサービス「internet Adventure〔iA〕」:セガの〔iA〕でできること(第2回)(1/2 ページ)
まもなくβサービスインを迎える、セガの3Dインターネットサービス「internet Adventure〔iA〕」。第2回目となる今回は、〔iA〕の原案・企画監修を手がける立命館大学 映像学部の渡辺修司准教授にお話をうかがった。
2月中旬よりオープンβサービスが予定されている、セガの3Dインターネットサービス「internet Adventure〔iA〕」(以下、〔iA〕)。前回の記事では〔iA〕とは何なのか、〔iA〕では一体何ができるのか――という部分に焦点をあてて紹介したが、第2回目となる今回は、〔iA〕のいわば生みの親とも言える立命館大学 映像学部の渡辺修司准教授にインタビューを行い、〔iA〕の企画がいかにして生まれたのかをうかがった。
ソフト制作者の視点で、家庭用ハードをリセットしたかった
―― 最初に渡辺准教授ご自身についてうかがいますが、立命館大学に入られる以前はどういったお仕事を?
渡辺修司氏(以下、渡辺氏) きっかけは私がタイトー時代に開発していた「ラクガキ王国」というタイトルですね。あのタイトルがメディア文化庁の推薦作品に選ばれたりして、今の教授たちの目にとまり、何度かお話する機会を得るうちに……といった感じです。と言っても、映像学部自体はまだ一昨年できたばかりの新しい学部で、私もこの4月から本格的に授業を担当していくといったところです。
―― 言われてみると、ユーザー自身がコンテンツを作ることができるという点で「ラクガキ王国」と〔iA〕は共通点がありますね。
渡辺氏 そうですね、今ではCGM(Consumer-Generated Media)とかUGC(User-Generated Content)といった言葉がありますが、そういった言葉ができる以前から、私自身が持っていたテーマとして「ユーザーにものを作ってもらう」というのはありました。結局ゲームって、遊ぶよりも作る方が楽しいんですよ。それをユーザーにも感じてもらいたかった。
―― 画像をアイランド上にドラッグ&ドロップするだけで立体のオブジェクトになったりするあたりは、すごく「ラクガキ王国」チックですよね。
渡辺氏 簡単にものを作れる、適当に書いても何かしら評価がある、というのが大切なんです。現状ではまだ〔iA〕はそこまで行っていないんですが、現在実装されているPia(ピア)などはその第一弾ですね。
―― 〔iA〕についてですが、そもそもどのようにして生まれたアイデアだったんでしょうか。
渡辺氏 ひとつは、家庭用ゲームをもう一度盛り上げたいというのがありました。当時まだ私がプレイステーション 2で「ラクガキ王国」を作っていたころ、「このまま行くと我々ゲーム制作者はどこへ行ってしまうんだろう」という漠然とした不安がありました。要は作るのにコストがかかりすぎちゃうんです。PS2の頃ですら、数億円とかのレベルではもう足りなくなってきていました。私はそれを1回リセットして、例えば見た目の進化などではない、もっと別の価値観をユーザーに提供して、なおかつ制作費も安くあげられるような器を作りたかったんです。そのとき考えたのが「家庭用ゲーム機を遊ぶユーザーごとネットワーク上に仮想化したい」ということ。
―― 家庭用ゲーム機を仮想化?
渡辺氏 例えば4人とかで集まって「モンスターハンターポータブル2ndG」(以下、「MHP」)で遊んでいる人たちがいる。それを他の人が見たら「あ、楽しそうだな」、「おれもやりたいな」って思いますよね。「MHP」なんかはオフラインですが、その遊んでいる様子が、ネットワーク上の他のユーザーから見ることができたらどうなるか。「おれもやる」「おれもやる」っていう連鎖がきっと起こる。これが私の言う「家庭用ゲーム機の仮想化」なんです。
―― 「Xbox LIVE」だと、今現在オンラインで遊んでいるフレンドが分かったり、ゲームに誘ったりできますが、これに近い感じでしょうか。
渡辺氏 結果的に〔iA〕の方が後になってしまいましたが、まさにそんな感じですね。ただ私がパートナーにセガを選んだ理由のひとつに、特定のハードを持っていない、というのがありました。インターネットにつながる環境であれば、PCだけでなく、Macでも、もしくはケータイ電話などでもいずれは動かせる、というのが重要。形のある「ハード」というものを捨てて、インターネット上に仮想のゲーム機を再構築することができれば、今ある家庭用ゲーム市場を一度リセットして、もう一度盛り上げられるんじゃないかと当時思ったんです。
目指したのは+0.5の価値観
渡辺氏 もうひとつは、今あるWebの世界を、ゲームと融合させることでもっと面白くしたかった。現実に例えるなら、今までのWebって誰もいない渋谷の交差点に一人で立ってるようなものだったんです。
―― どういうことですか?
渡辺氏 Webって、本来なら同時にいろんな人が同じサイトを見ているはずなのに、その人たちは見えませんよね。現実なら、渋谷で買い物をしようとしたら、まわりにはいろんな目的を持った人たちがひしめいていて、いろんなところですれ違ったり、時には肩がぶつかりあったりする。でも今のWebを渋谷に例えるなら、他にも同じような目的を持った人たちがすぐ近くに大勢いるはずなのに、それが見えない状態。
―― それを見えるようにしたかったと。
渡辺氏 もちろん、周囲に人がいようといまいと「買い物がしたい」とか「ここへ行きたい」といった目的には影響しないですよね。むしろ見えないことで、スムーズに歩道を歩けたり、素早く、気楽に買い物ができたりする。こんな渋谷があったらとても便利だと思います。でも、私はそれじゃつまらないと思うんです。
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提供:株式会社セガ
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年2月23日