家庭用ハードをインターネット上に仮想化したい――「ラクガキ」から生まれた3Dインターネットサービス「internet Adventure〔iA〕」:セガの〔iA〕でできること(第2回)(2/2 ページ)
―― なんだかドラえもんの道具みたいですね。それをかけると、今まで見えなかったものが見えるようになるメガネ、みたいな。
渡辺氏 アバターって誰のためにあるのかとか、考えてみると面白いですよね。女性が化粧をするのは誰のためかって考えると、やっぱり他の人に見てもらうためというのが大きいと思うんです。我々の目は、他の人が見えるように進化してきた。でもWebの世界ではそういう方向に進化してこなかったんです。今のWebって、現実と比べるとかなり足りていない部分が大きい。それを補おうとしたときに、一番相性がいいのがゲームだったんです。
―― まったくのゼロから仮想空間を作るのではなく、「今あるWeb」を生かしつつ、それを拡張するというアイデアも面白いですね。
渡辺氏 一時期よく「Web2.0」という言葉が使われていましたが、その表現でいえば、〔iA〕は、Webに「+0.5」するくらいの存在だといえます。「1.0」や「2.0」の世界で育てられたコミュニティーは、ユーザーの方々の一番大切な宝物なはずです。これを棄てることなく、より面白くすることができる。〔iA〕は、そんなプラットフォームだと思うんです。 これと先ほどの「家庭用ゲームの再構築」というアイデアが組み合わさって、「ブラウザとの融合」という今の〔iA〕の形が見えてきました。
―― 今のお話だと、CGMの部分が出てこなかったんですが、これは当初の企画には入っていなかったということですか?
渡辺氏 実は最初、セガにアイデアを提案した段階では、CGMの構想はほとんど入っていなかったんです。せいぜい既存のブログとの融合とか、その程度。というのも、これは単純にコストがかかりすぎると思ったんです。
―― CGMの方がコストかかるんですか?
渡辺氏 コストと言っても開発コストではなくて、クライアント上に表示するための表示コストとか、サーバーの運営コスト、通信コストといった部分。私としては「ラクガキ王国」を見ていただいても分かるとおり、CGM好きなのでぜひやりたかったんですが(笑)。
―― 確かに、開発コスト以外のコストがかなりかかりそうです。
渡辺氏 ただ、これについてはある程度解決できています。現在、Piaをアイランド上に置いた場合、〔iA〕側のサーバーにすべてのデータをアップロードするのではなく、画像や動画へのリンク情報だけが〔iA〕サーバーに保存されます。画像や動画自体は、もともとWeb上にあるものをそのまま読み込ませることで、かなりコスト面は抑えることができました。
―― そう考えると、ゲームというより一種のブラウザですよね。一般のブラウザは、HTMLや画像データなどを1枚のページとして見せてくれていますが、〔iA〕はそれを別方向から解釈して、他のユーザーも含めた3D空間として見せてくれます。
渡辺氏 そのとおりです。今までのブラウザが「シングルプレイブラウザ」だったのに対し、〔iA〕は「MMOブラウザ」ということになりますね。
次なるステップは「コンテンツの充実」
―― まもなくオープンβサービスが開始されますが、クローズドβテストの反応も含めて、現時点でのユーザーの反応はいかがですか。
渡辺氏 今はまだ技術検証の部分が大きく、あまり遊べる要素を入れられていないので、その点では申し訳なく思っています。あとは〔iA〕のユーザーは、大きく視聴者とサイトオーナーに分けることができると思うのですが、今は特にサイトオーナーさんに〔iA〕とは何かを知っていただきたいという時期です。
―― 当初、初年度で100万人の会員数を目指すとおっしゃっていましたが、ネットのサービスで100万人は、相当な規模ですよね。
木岡勝利氏(以下、木岡氏) これについては私から。まず、いきなりドンと人が入ってくるとは私も考えていません。最初はコミュニケーションプラットフォームとしてリリースし、その次にコンテンツ、つまりゲーム機で言えばソフトウェアの部分を充実させていきましょうと。こうしたサービスって、ある段階を超えると一気に人が増えていくものだと思っていますので、まずは最低限、〔iA〕に入れば誰か人がいるといった状態を作っていくことが第一だと考えています。
―― 現在はコミュニケーションツールとしての部分が前面に出ていますが、将来的にはコンテンツ面も充実させていくと。
木岡氏 今は本当に、やりたいことがたくさんありすぎてどうしよう、みたいな状態ですね。そのあたり、現在仕込んでいる企画やコンテンツなどについては追って公開していけると思います。
渡辺氏 詳しくはまた後日説明することになると思いますが、コンテンツの提供という部分では、ディズニーランドのようなビジネスモデルを考えています。例えばスペースマウンテンならコカコーラ、スターツアーズだったらパナソニックといった具合に、アトラクションごとにスポンサーがついています。これと同じように、各サイトにスポンサーになっていただいて、〔iA〕内でゲームアトラクションのようなものを提供していくこともできるわけです。
―― ゲーム機で例えるなら、サイトオーナーがゲームメーカーのような位置づけですね。
渡辺氏 そうですね。サードパーティと言ってもいいかもしれません。今はそうしたサードパーティ側に向けていろいろ声をかけている状態です。ただ、サードがいっぱい集まってくると、今度はファーストパーティである我々も必然的に頑張らざるを得なくなってきます。今後ファーストパーティーからもいろいろ出てくると思います。
木岡氏 そうですね……頑張ります(笑)。
―― こうして聞いていると、今見えている〔iA〕というのは、まだまだ一部分にすぎないんですね。
木岡氏 そうですね。本当にいろいろなことができる空間なので、企業さんにしても、サイトオーナーさんにしても、ぜひ積極的に活用していっていただきたいと思っています。
―― 今後展開していくコンテンツなどについては次回、第3回目で詳しくおうかがいしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
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