サブストーリー・第3回:最も高潔な侍
言われるところによれば,“武野宗継”は武士道に生きていないとのことだ──────。
かつては彼も武士道と共にあった。武野は七百人を数える侍からみすぼらしい臆病な農民まで,すべての大名の軍勢を指揮していた。
今田の領の武家は,正義というものに対する武野の強迫観念のようなものを噂している。
ある者が言うには,彼は若き侍だったときに寛大な行いにより偉大なる正義の神の祝福を受け,以来彼は他の何よりも正義を優先しているとのことだ。
武野は単なる兵に過ぎないが,彼が間に姿を現わすと,廷臣はすべて口をつぐみ,大名が望むところを永岩城の他の誰よりも完璧に命ずるのである。
城の中でも,武野は常に鎧甲冑を着込んでいる。有名な彼の大小の刀“正守”を腰に下げ,着込んだ胴丸は彼が通路を進むとからからと音を立てた。
武野の兜には当然,今田の紋があり,彼は邸内の貴族や他の人々とまったく目をあわせず,常にまっすぐ前だけを見つめていた。
神の乱が最もひどかった頃,武野は三日に一度は大名の軍勢を率い,永岩城の丘の岩だらけの長くうねった道を,全力で馬を駆って降りていった。
彼らが“荒場”の不毛な地に着くやいなや,何十体もの奇怪な神や美しい神が広い平原から現れ,襲いかかってきた。
武野が引き抜いた刀は月光を浴びて朱色に光り,彼の軍勢は意気高まって,彼らの気合は夜明けの静寂を切り裂いて響いた。
今田が武野に兵の指揮を任せたとき,彼は34歳に過ぎなかった。そして,神の乱が起こったのは,それから二年後のことだ。
彼は以来20年,神河で最も恐るべき侍たちを鍛え上げ,彼の主君・今田に対する忠義は揺るぎもしない。
しかし,武野ですら最後には恐るべき真実を認めざるを得なかった。彼はだんだんと年老いていくのに,大名は一日たりとも齢を重ねているようには見えないのだ。
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