■ 高橋利幸氏(高橋名人)インタビュー ■
Q:音楽といえば,「迷宮組曲」も印象的な楽曲ですよね。少しずつ音が加わっていって,楽器が揃うと完璧な楽曲になる。という手法も斬新でした。
「迷宮組曲」の音楽は音大出の社員が作ったんですが,彼が非常に音楽が好きでかなりこだわってましたね。この迷宮組曲って音楽から作ったんじゃないか,と思うぐらい。普通はプログラムとかキャラクターが9割で,あとの1割が音楽だったと思うんですが,「迷宮組曲」は絶対3割使ってる。あのころのファミコンカセットの中で音楽が一番充実してたソフトだと思います。
Q:ゲームミュージックってちょっと特殊ですよね。普通の楽曲とは違って,そのシーンとの連動があって一層感情移入できるというか。
どちらもその場面を盛り上げるためのサウンドですから,ゲームミュージックって映画のサントラに近い思うんですね。普通の音楽っていうのは,音一つで一つの作品として出来上がっていきますが,昔からのオペラだったり,映画だったりと同じように,そのシーンに合わせたための楽曲なので。だから映像と音が絶対に離れない。E.T.の曲を聴いたら,指をあわせたくなるでしょ。それと同じですよ。映像と音楽,両方あわせて一つの作品になるんです。
例えば「ロードランナー」なら,あれは現ハドソン取締役の中本さんという人が一人が作っていたので音楽が音楽じゃない(笑)。一定の音の繰り返しで,実際に聴くと5秒ぐらいでオフにしたくなる。でも,「ロードランナー」を思い出すと,あの音楽が出てくるんですよ。何面だって“タタッタタタッタ……”みたいな。やっぱり画面ありきだと思うんですよね。
Q:今のゲームミュージックは大物アーティストとのコラボレーションが多いですが,その点はどのように感じられますか?
どんなにすごいタレントさん使っても,そのための映像が必ずあるわけですし,プロデューサーは考えて作っているわけでしょう。その思いはすぎやまこういちさんと変わらないと思いますよ。
もっと言うと,チープな音であろうが,生のクラシックコンサートであろうが,ゲーム音楽という限りは「あのシーン」が付いてくると思うんですよ。で,付いてこない人にとっては,その音楽は普通の音楽としてしか認識できないから魅力が半減してしまう。「この音楽いいよね」「あの映像のときにこの音楽ってもっとよくなるんだぜ」という感じです。あの映画のラストシーンにこの音があるからすごいよね。っていうのはみんな言うと思うんですど,それと同じです。
Q:大物とコラボという点で言えば,「天外魔境」で坂本龍一さんとコラボレーションされていますね。これはどういう経緯で実現したんですか?
坂本さんに初めてお会いしたのは'85年ぐらいでファミコンをやってるときでした。市ヶ谷(当時のハドソン東京支社があった場所)に「ファミコンって面白いね」とひょっこりいらっしゃったんです。いいものができるんじゃないか,ということで来てもらったんですが,話をしているうちに「今の時代では,坂本さんの思ってることは表現できないですよね」ということになってしまい,「じゃあ,将来そういうものができたら声をかけてください」とそのときは帰られました。
2年後の'87年にハドソンがPCエンジンが発売され,'88年にCD-ROMがメディアに使われることになった時に,CD-ROMだから今度はぜひ坂本さんに! と思って話を伺いに言ったら,アカデミー賞を取られてました。結局,お友だち価格でやってもらいましたど(笑)。
作ってもらったのは4曲ぐらいだったんですが,「あ,坂本さんだ」っていう素晴らしい曲ばかりでしたね。今でもあの音楽を聴いた瞬間に,TVゲームの天外魔境のオープニングシーンが出てきますよ。
Q:実はサイトロンから3月に当時のファミコン楽曲を収録したCD(※1)の第2弾が出るんですが,実際お聴きになっていかがですか?
すごいですね。(CDを眺めながら)90トラックも入っているんですか……。
このCDに入っているトラックを聴くと,ファミコン好きの人なら全部のシーンが頭に浮かんで繋がるとおもいますよ。そのころ何してたかとか,あの友だちと遊んでたとか,とかもイメージが広がるんじゃないかなぁ。
あとノイズが入っていないんですね。結構ファミコンソフトって高音のノイズがきつかったりするんですが,よくこれだけ綺麗に録音できましたね……。
Q:ファミコン時代を知らないゲームファンで,音楽が好きな人もいると思うんですが,その方たちにメッセージをいただけますか?
ゲームミュージックって,先ほども言ったように映像があってより一層感情移入できるものだと思うんです。だからゲームミュージックだけお楽しむのではなく,ゲームをプレイしてもらって音楽そのものを“体感”してもらいたいですね。機会があれば,「スターソルジャー」とか古いゲームもやってみて欲しいと思います。
※1 サイトロンから3月に当時のファミコン楽曲を収録したCDが出る「ファミコン 20TH アニバーサリー オリジナル・サウンド・トラックス VOL.2」3月24日発売のファミコン楽曲を集めたサントラCD第2弾。
インタビュー中に出てきた「スターソルジャー」「へクター87」「チャレンジャー」「迷宮組曲」の楽曲のほか,「リンクの冒険」「スクーン」「シティコネクション」「忍者じゃじゃ丸くん」のサウンドをすべて実機から収録,ノイズの少ない音源再生を実現している。
なお,「マリオブラザーズ」「ドンキーコング」「メトロイド」など,任天堂のファミコン音楽を収録した「VOL.1」も発売中。詳しくはこちら。 価格は各2,200円。 □サイトロンHP http://www.webcity.jp/grand/index.msp
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