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高橋哲哉監督プロフィール
株式会社モノリスソフト 取締役副社長
日本ファルコムでデザイナーとして活躍しスクウェアへ。FFには「IV」から参加。「V」「VI」でグラフィックを統括。 初監督作品「ゼノギアス」を'98年に発表。'99年モノリスソフト取締役副社長に就任。本作では監督と脚本を務める。 |
--「ゼノサーガ」の,物語的な概要を教えてください。
高橋 「ゼノギアス」の続編だと思われがちなんですが,自分の中ではリセットをかけて,新しい作品として作っています。基本的なラインはSFで,映画で例えるなら「スターウォーズ」「スタートレック」に代表されるようなスペースオペラですね。全体構想が数万年という,ものすごく長い物語の一部を切り取って作品にしています。今回のサブタイトルにある“エピソードI”は,その最初の物語ということになりますね。
--作品の根底にあるテーマはなんでしょうか?
高橋 “エピソードI”とともにサブタイトルになっている,“Der Wille zur Macht”(力への意志)が,それに当たります。物語に登場するキャラクターは,それぞれ宿命や後悔といった過去を背負いながら生きていく運命にある。その中で,自分自身を見失わないためのアイデンティティや動くための原動力を,心のどこかに持っていなくてはならない。それが,この作品で語りたい“力への意志”ですね。これは敵側の役回りを担う人物たちも同様で,人間同士の“力への意志”がぶつかり合う形で物語が展開していきます。
--RPGにありがちな,いわゆる勧善懲悪とは違う感じですね。
高橋 そもそも悪という概念が抽象的ですよね。プレイヤーに敵対する存在には,その理由や論理がある。善悪は,自分が立つべき場所によって変わるものだと考えてますので。 --今回の物語では,人類の敵として,“グノーシス”という存在が描かれていますが……。
高橋 プレイヤーと本質的に対立するのは,実は人間なんです。人類の中に2つの勢力があって,そのひとつがプレイヤー側。さらに,人類以外の勢力として,グノーシスという謎の存在があるんですよ。
--先ほどのゲーム解説で見せてもらった,宇宙船を襲っていた明らかに人型でない生物がグノーシスですか?
高橋 そうです。まだ特殊エフェクトが入ってませんが,実際にはイカの外套幕のような半透明な物体として現れます。その見た目どおり,壁を抜けたり,攻撃が一切効かない特性があるので,人類の通常の兵器では倒すことができない。そこで開発されたのが“A.G.W.S(エイグス)”と“KOS-MOS(コスモス)”なんです。
--その2つの違いは何でしょうか?
高橋 A.G.W.Sは透明なグノーシスを発見するセンサーを積んだ巨大ロボット兵器です。グノーシスには,物理事象に干渉する瞬間だけ攻撃が効く弱点があるんですが,何しろわずかな間なので反応するのが難しい。そこで,グノーシスを実体化する機能を持ったKOS-MOSが開発されたというわけなんです。
--KOS-MOSはキャラクターとして登場しますが,感情はあるのでしょうか?
高橋 感情のないロボットとして描いてます。兵器のA.G.W.Sとは別系統の戦闘システム的な要素を持たせているので,女性型アンドロイドという設定になってます。
--KOS-MOSのほかにchaos(ケイオス)というキャラクターが発表されていますが,このふたりの名前は“秩序”(コスモス),“混沌”(ケイオス)という意味を持っていますよね。これは物語に関わりがあるのでしょうか?
高橋 そもそも根底にある“力への意志”がニーチェの言葉からの引用なので,哲学的な意味を持つ2人のキャラクターはテーマと大きな関わりがあります。ただ,それはあくまで自分の中だけで考えていることなので,物語自体は誰でも取っつきやすいように,小難しい話にはしていません。
--そういえば,主人公のシオンが乗っている宇宙船の名前も「ヴォークリンデ」と,北欧神話のワルキューレから取ってますね。
高橋 このあたりはニーチェからの連想ですね。ワグナーとのつながりがあったので,そこから引っ張ってきました。
--今回は,女性が主人公。しかもメガネをかけていて,RPGでは珍しい感じがしますが。
高橋 これは欧米だと顕著なんですが,古来からメガネは知性がシンボライズした物として捉えられているんですね。今回はKOS-MOSを開発した研究者という設定なので,メガネをかけさせてみたんです。
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