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北米ではほとんど常識、そして日本でも……? ゲームのサラウンド最新事情(2/2 ページ)

3Dゲームの普及によって、多くなってきたサラウンド対応ゲーム。ドルビー日本支社のゲーム開発支援チームに現状とこれからの話を聞く。そして……。

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もう1つのサラウンドと立体音響

 DVDファンなら、忘れてはいけないのが「DTSサラウンド」。実はゲームの世界でも「DTS Interactive」として展開している。PS2でもリアルタイムディスクリートサラウンドを実現することができるという触れ込みだが、実装例は少なく、日本での発売タイトルは両手で数えられるくらい(そもそも国産タイトルでの採用例が「ない」)。

 その大きな理由としては、光デジタルケーブル接続必須・DTSデコーダ必須・アナログ出力不可というところにあるだろう。また、5.1chサラウンドは処理的に重いため、4チャンネルサラウンド(フロント・リア各2チャンネル)が大多数というのも残念なところだ。有名タイトルとしては「グランドセフトオート・バイスシティ」がDTS Interactiveに対応していたが、最新作の「Grand Theft Auto: San Andreas」ではドルビープロロジックII対応になってしまっていた。

 また、ソニーのサウンドミドルウェア「S-FORCE」では、ヘッドホンや2スピーカーでの擬似立体音響を実現している。これを使った立体音響は「サイレン」などで聞くことができる。

ドルビー日本支社で話を聞いてきました

 さて、現在大手ゲーム会社を中心にサポートを広げつつあるドルビーサラウンドについて、ドルビーラボラトリーズ インターナショナルサービスインク 日本支社(以下ドルビー日本支社)のゲーム音響サポートチームにインタビューを行った。


左から、コンテンツビジネスグループリーダー 中山尚幸氏、クライアント業務担当 糸川あや氏(契約・商標確認・マーケティング担当)、コンテンツビジネスグループ・コンテンツビジネススペシャリスト ジョン・グリフィン氏。ゲーム音響サポートがチームとして立ち上がったのは2000年頃。撮影場所はドルビー日本支社(旧社屋)のスタジオ。地下ということで、ホラーゲームをやってると後ろのドアが開いたときに敵かと思うことがあるそうだ(笑)。ちなみに、ドルビー日本支社は今年5月に移転したが未だスタジオは工事中とか

 日本でドルビーサラウンドを採用した最初の作品は、PCエンジンの「スーパーダライアス」(NECアベニュー・現インターチャネル)。ドルビーサラウンドインタラクティブエンコーディングに対応したのが「ロイヤルコンクエスト」(ジャレコ)。以後、FFシリーズのムービー対応、nintendo64タイトルでのインタラクティブエンコーディング対応を経て現在に至っている。

 日本ではやや対応タイトルが少ない印象を受けるサラウンド対応タイトルだが、欧米ではすでにほとんどのタイトルでサラウンドタイトル対応になっているという。糸川氏が言うには「日本で開発されたタイトルでも海外で注目を集めるものは、ドルビー技術対応を勧めろという本社からの命令が下っており、実際世界的に人気のあるタイトルはほとんどドルビー技術に対応しています」ということだ。この結果、日本でも年間60タイトル以上のサラウンド対応タイトルが発売されている。

 とはいえ、メーカー(特にローカライズを行うメーカー)にサラウンドに対する意識の低いところも少なくない。ゲーム中オプションにプロロジックII表記があるにも関わらず、ロゴ表記をしなかったケースもある。また、マルチプラットフォームの同一ゲームシステムタイトルにも関わらず、GC版とXbox版のみドルビーロゴを掲載するが、PS2版は表記なしというタイトルもあった。

 「ドルビーロゴや商標を使用するにはドルビー本社との契約が必要ですが、ゲームタイトルに関してロイヤリティは一切かかりません」と糸川氏は語る。

 海外のタイトルは3D・特にFPSが多く、サラウンドサウンドの恩恵を受けやすいタイトルが多い。だが、その分サードパーソンアクションでのサラウンド化は日本のほうが進んでいる。中山氏は「『鬼武者3』のサラウンドではリスニングポイントが選択できるように、サラウンドの実装には正解というものがありません。なので、いろいろなパターンでの実装を試みるメーカーも多いのです。また、2Dゲームだからサラウンドが必要ではない、というわけでは決してないです。ガストさんのように早くからサラウンド技術に取り組んでいる会社もあります」と語っている。グラフィックなど同様、サラウンドもクリエイターのセンスが重要となってくるようだ。


ガストは早い段階からサラウンドに着手していたゲームメーカーの1つ。2001年の「リリーのアトリエ」でムービーのドルビーデジタル化を始めており、現在の同社作品はすべてドルビーデジタルプロロジックII対応となり、ゲーム内サウンドもサラウンド化された。写真は「イリスのアトリエ エターナルマナ2

 アメリカではタイトル数もそうだが、サラウンドシステム自体も相当数の普及が進んでいる。しかし、日本では住宅事情などの問題でスピーカーシステムを導入できないことも多い。ドルビーではそのソリューションの1つとして、ドルビーヘッドフォンを推奨している。「サラウンドシステムも高級なものほど音質にこだわった製品が多く、よりよいサラウンド感を得られるのですが、いきなり高価なものをゲーマーの方々に要求するわけにはいきません。比較的低価格のスピーカーシステムやドルビーヘッドフォンからの導入をお薦めしています」(中山氏)という。

 なお、現在ドルビーヘッドフォンは携帯機向けタイトルなどでも実装できるよう、研究が続けられている。


海外で発売されているThrustMaster社のドルビーヘッドフォンシステム「T510」。ドルビーデジタル&プロロジックIIデコーダ機能を持ち、どのゲームマシンでも接続可能。しかも小型で持ち運びも楽々。電池駆動も可能だから驚きだ。北米での価格は2万円ほど

 実際にサラウンドを体験すると、その表現力の豊かさから非サラウンド環境からは戻れないのだが、なかなかその良さを伝えることができないのが残念なところ。だが、ドルビーでは去年のメディア向け「Halo 2」体験イベントや東京ゲームショウなどで、サラウンドの共同プロモーションを行うなど、精力的に活動している。次世代機ではサラウンド環境がほぼ当たり前になる(Xbox360では5.1chサポート必須)ため、日本のゲームメーカーも積極的にサポートして欲しいと思う。

おまけ:ドルビー研究所にも実は潜入していました

 3月某日・サンフランシスコのフリーウェイ高架に近い、ドルビーラボラトリーズ本社の前に筆者はいた。というのも、ドルビー社内にあるドルビーシアターを見学・体験デモをさせてくれるということだったので、先に行われたGDCのついでに立ち寄ったのだが、糸川氏より「ドルビーシアターの運営担当者が風邪で休みまして」との連絡が……。ということで、デモはなくなりこのタイミングでの公開となったわけだ。


ドルビー本社にあるドルビーシアター。業界各社のデモ用にも使われることが多い。ゲーム業界での使用例としてはコナミデジタルエンタテインメント(コナミのアメリカ法人)のゲーマーズデイ。2004年にはランブルローズのお披露目が行われている

ドルビーシアターの機材の出す音は、ごく普通の録音スタジオよりもさらに小さいとのこと。壁やシートなどにも極力ノイズを出さない工夫がされている

ドルビー本社内にあるゲームサウンドチェックルーム。ここで現行機種でのサウンドチェックが可能になっている

 もし来年も行けるようならば、ぜひともデモを体験したいものだ。

(C)Sony Computer Entertainment Inc.
GUST CO., LTD. 2005 / Character designed by Gust / Illustration:双羽 純


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