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ビジネスとエンターテインメントの両立「三國志」ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/3 ページ)

シミュレーションゲームはプレー時間が長い。光栄(現・コーエー)の「三國志」を取り上げようと思ったが、プレーしているうちに1日、2日……。原稿を書く時間も少なくなったが、暇を見つけて赤壁まで行ってきた!

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信長と三國志はまったく違うゲームだった

 「三國志」最大の特長は、君主以外にさまざまな武将が登場することである。

 「信長の野望」シリーズでは、配下の武将が登場したのは「戦国群雄伝」以降。「全国版」では大名が直接すべてのことを指揮していたのだ。

 選んだ大名が死ぬと、即ゲームオーバー。高齢の大名になると、他国と戦いながら寿命とも戦わなければならない。

 私は昔から、現実世界で仲間が少ないので、個人的にはこの「信長の野望」の一人で何でもやるシステムも好きだ。だけど三国志のほうは、やっぱり多彩な豪傑が登場しないと、らしくない。関羽や張飛が出てこない三国志は三国志じゃない。

 知力の高い人物は、軍師となって、プレイヤーの行動に対して助言を与える。人材の引き抜きが成功するかどうか、戦争に勝てそうかどうか、行動する前にわかるのだ。

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うっかり冬に部隊を移動させようとして、「寒さで多くの兵士が死ぬでしょう」と警告されることもあり、初心者にも親切だ

 ただし軍師も予測を誤ることがある。「なんだい、『必ず人材が見つかる』って言ってたのに」と怒ってはいけない。

 軍師の人間らしさがそこに表現されているとみるべきだろう。

 武力の高さは、もちろん戦闘に大きく影響を及ぼす。

 呂布など武力の高い武将が率いる部隊は、戦闘で兵をなかなか減らさない。「三國志II」以降に比べると、武力による影響がもろに出るような気がする。

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戦闘はボードのシミュレーションゲームでおなじみの、六方向に進めるマップで展開。攻める側は兵糧をどこかに置いておかなくてはならない。兵糧を守備側に取られたら負け。官渡の戦いにおける、烏巣の夜襲のようなことが起こり得る

 忠誠度の低い武将は、ほかの君主から引き抜かれやすい。また、戦闘時に裏切ることもある。前の職場に不満を持つ人物を引き抜くと、最初から忠誠度が高い。

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関羽と張飛が2人でかかっても倒せなかった呂布の武力は最高値の100。しかし主君をたびたび裏切ったので、忠誠度は32しかない

 逆に、戦闘で敵の武将を捕らえて召し抱えても、前の君主に忠実だった武将は忠誠度が低く、そのままではすぐに引き抜かれてしまう(関羽が曹操に捕らえられた後、結局劉備のもとに戻ったように)。

 もっとも関羽とは違って、このゲームの武将は金を与えると忠誠度が上がる。

 単純な気がするが、案外これが人を使う際の本質を突いているのかもしれない。

 高いお金を出すということは、使う側がその人を高く評価しているということでもあり、雇われる側も“士は己を知る者のために死す”と意気に感じるようになるのかもしれない。

現在のゲーム業界が抱える問題を既に克服

 最近はゲームが複雑になったために、開発期間が長くなり、コストも増大している。これは今のゲーム業界が抱える大きな問題だ。

 しかしコーエーのゲームは、昔から他社のものに比べて、開発期間が長かった。それだけコーエーのゲームが、当時から複雑で緻密だったといえる。

 その分、他社のゲームより価格も高かった。ファミコンソフトの中心価格帯が5000円台だった1988年、「三國志」と、その半年前に出た「信長の野望・全国版」は9800円だった。

 パソコン版の値段に合わせるという意味もあったのだろうが、やはり開発期間が長いことと、容量の多いROMやS-RAMが必要だったことが、高くなった原因だろう。

 そのかわり、長い期間繰り返し遊べるので、コストパフォーマンスは高いのだが。

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画面をぱっと見ただけでも、これだけの数値とコマンドの存在するゲームを作ることが、いかに大変なことかがうかがい知れる

 スーパーファミコンの時代には他社のゲームが高くなってきたこともあり、ゲームソフトの価格高騰が問題視される。プレイステーションの時代に入ると、CD-ROMの採用によってゲームソフトの中心価格帯が5000円台まで下がり、コーエーのゲームの高さが際立つようになってしまった。

 そのためかコーエーはこの時期、ファン層を広げるべく歴史もの以外のシミュレーションゲームを開発したり、開発期間の短い、シミュレーション以外のジャンルの作品を多く発売したりしている。

 そんな中から「アンジェリーク」や「三國無双」といったゲームが生まれ、現在の同社の繁栄につながっている。

 つまりコーエーは、今のゲーム業界が抱える問題を、以前から経験していて、それを克服してきたといえるだろう。

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