変遷していくゲームマスターの立つべき場所は……どこ?:モビーダ・ゲームズ 栗原 哲氏インタビュー(2/2 ページ)
昨年12月、ビー・ビー・サーブから分社化して誕生したモビーダ・ゲームズ。そこでゲームマスターとして運営リーダーを務める栗原哲氏に、“忙しさ”のワケを聞いてみた。
GMという定義が固まらずにいる現状を栗原氏は、このモビーダ・ゲームズで確固たるものにできるのではないかと考えている。「ちょっと前までGMなんて時給1000円くらいで、プレーヤーからのクレームを受ける防波堤くらいにしか思われてなかったかもしれないが、ゲーム内のことを最もよく知っている運営スタッフであるGMの言うことも馬鹿にならない、と思ってもらえる環境ができつつある。僕ひとりだけでなく、講演などで話をさせてもらいながら、みんなで定義も含めてGMについて考えていきたいと思っている」と、今後は旗振りになることを意識している。
栗原氏は2月9日から10日の両日、日本教育会館にて行われる、ブロードバンド推進協議会主催「アジア オンラインゲーム カンファレンス 2006 東京」にて講演が控えている。「オンラインゲーム運営とゲームマスターの可能性」と題して、運営の重要性と、広がるゲームマスター業務の可能性について述べる予定だ。
現在のGMのタレント化は韓国流ともいえるそうだ。しかし、栗原氏が育ったGMとしての土壌はあくまでも全プレーヤー平等の米国流であるらしい。同じ金額をいただいているのならば、そこは大事にこだわっていきたいのだと語る。とはいえ、今の主流はやはり韓国流である
今後のモビーダ・ゲームズは、カジュアルやスポーツなど、ファンドを利用したタイトルを続けて着手していけたらと希望を述べる。すでに発表されているもの以外では、年内に1〜2本ほど公開する予定だ。一昨年発表された「真・三國無双BB」も、今年にはある程度の形を見せることができると自信をのぞかせる。
栗原氏は「真・三國無双BB」の発表を知り、当時のビー・ビー・サーブへの転職を決めたのだとか。「個人的にも『真・三國無双』シリーズは好きだっただけに、タイミングよく誘ってもらえて運命だと思った」と言う。それだけ思い入れもある「真・三國無双BB」だが、やはりコーエーはちゃんとしているんだなと感心したほどの出来だとか。今はバランス調整を含め、着々と発表できるまでの詰めの作業を行っているところだというから期待が高まる。「ベルアイル」も、GMによるテストサーバーの厳しいチェックなどを経て、日々ブラッシュアップしているところだとか。
人材難のため、腕のいいGMを募集しています
現在、オンラインゲーム業界はGMの売り手市場であるらしい。どこも腕のいいGMを求めている。実績がありスキルが高く、倫理観のあるバランス感覚に長けた人が好ましいという。どうやらGMにも適正があるとのこと。
- カスタマーサポート能力:あくまでもお客様ありき
- ゲーマーであること:ユーザーの立場に立てること
- エンターティナーであること:イベントをやる際に必要
- 社会人である:時間厳守、約束を守るという基本的なことができること
- 知識がある:PCやネットに詳しい
人材難とはいえ、業界でのGMの地位はまだまだらしい。もちろん栗原氏のように中心に食い込むGMも多くなってきているが、実情は“まだまだ”といった実感だとか。アルバイト並の賃金の安さからはじめなくてはならないことには変わらないという。
「キャリアについても考慮してくれる会社かどうかも見極めないといけない。当人の能力以外にも運も必要になる。自分が“運よく”モビーダ・ゲームズに誘ってもらえたように、タイミングや巡り合わせが噛み合うといいのですが……」と、これからの地位向上にも努めていきたいと語る。
「GMが姿を見せなくても成立するゲームが理想であり、健全ではないかとひとつの形を提示する。可能であれば、GMがすごくたくさんいて、手厚くサポートをするという体制がいいんでしょうが、これは現実性がない。気が弱い人はGMコールできなかったり、声がでかい人(発言する人)だけが得をするというサービスであってはならないと考えている。だからこそ、まずはプレーヤーからGMが姿を見せなくても成立するオンラインゲームであってほしいと思う」と最後は、理想とするオンラインゲームの環境を語る。
モビーダ・ゲームズは、ビー・ビー・サーブ時代から約2年、じっくりとプロデュースするタイトルを熟成してきた。つぼみから花へとなるように、まもなく開花の時期を迎えようとしている。その際、プレーヤーのそばには栗原氏をはじめとした、多くのGMの姿が見られるだろう。
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