「いまから5年後にはすごいことが起きそう」――久夛良木氏:PS Business Briefing 2006 March(4/5 ページ)
「PS Business Briefing 2006 March」では久夛良木健氏より、PS2、PSPそしてPS3についての数多くの発表が行われた。進化するPSP、そしてPS3プラットフォームの方向性とは?
Blu-ray Disc、そしてHDMIのブラッシュアップを待つため時間がかかった
「新しいPS3が持つ可能性に、ゲーム業界だけでなく、さまざまな方たちが興味を示してくれている。このために慎重になっている」と久夛良木氏。ただし純粋なBlu-ray Discプレーヤーとして考えた場合には、1000万台などはねらえるものではない、とも。「PS2でDVDを搭載したときには、DVD規格の立ち上げから3年ほどたっていたが、PS2のサポート表明により本格的な普及が始まった。ハリウッドのサポートも相まって、PS2もDVDプレーヤーもどんどん買いやすくなった。ライブラリも増え、PS2のディスクコストも下がるなど、さまざまなメリットがあった。しかしBDもHD-DVDも、次世代と呼べるものが立ち上がっていないのが現状。その牽引役としてだけでなく、我々の生活の中で当たり前のものにするという、大きな責任を担っているのがPS3。『PS3が立ち上がらないと、BDプレーヤーだけでなく、TVが売れない』とも言われるくらい、熱い期待を受けている」(久夛良木氏)。このため自らLSIを開発し、まったく立ち上がっていないものを一から立ち上げる、新しい努力をしている、とも。「次世代は『DVDと何が違うの?』というクオリティでは中途半端。圧倒的にすばらしい映像美があることで、新しい評価が生まれていく」(久夛良木氏)
ただしBlu-rayについて、「昨年のE3では、夏には規格が決定し、9月にはフォーマットブックが発行されると信じていた。しかしもっといいものを作るために、制定期間がずれ込んだ」と久夛良木氏。
また、TVとPS3をつなぐ規格にも困難があったという。「昔はピンコードやS端子をつなげばOKだったのが、いまはデジタル化されている。このため、コピーの問題を管理しながらも、5.1chや7.1ch以外にも、さまざまなフォーマットのTVにも“コード1本”で対応する必要があった」(久夛良木氏)。
HDMIが市場に導入されつつあるのが現状だが、「フルHDと称していたHDMIがフルHDでない、RGB 8ビットでしかないことに気づいた。1080pにも非対応だった、非常に中途半端なものだった」(久夛良木氏)。そこで標準化団体に呼びかけた結果、フルHDに対応した「次世代HDMI」がまもなく制定終了するとのこと。この2つのフォーマットについてめどが見えた結果、新しい発売日を2006年11月上旬にすることが発表された。
「皆さんに一瞬おしかりを受けてしまうかもしれないが、発売日を11月上旬とし、そして全世界同時でPS3を発売する。デベロッパーの方にはその日をターゲットに開発を進めていただきたい」(久夛良木氏)
またすでに掲載したとおり、月100万台の生産を続け、来年の3月には600万台をそろえることが発表された。
PS3はHDD必須。ゲームソフトはBD-ROM
PS3のキーとなるフィーチャーについて久夛良木氏は、PS2との互換性、フルBlu-ray Discサポート、フルHDだけでなくこれまでのTVをサポートすること、最新のHDMI、ネットワーク、そしてHDDであるという。「ネットワーク上でいろいろ言われているが、すべてのPS3はフルBDサポートであることを、ここで言わせていただく。そうしないとゲームとしても困るし、乗っていたり乗っていなかったりするのは業界にとってもよくない」(久夛良木氏)。
「PS3は一番最新のBD規格にのっとる。規格も進化していくので、よっぽど高性能なPCかLSIでないと対応できない。このためBDプレーヤーを発売するときには古い規格で動かさざるを得ないだろう。こうしたプレーヤーが市場に出てくるとは思うが、我々はCellを使って、ファームウェアとソフトウェアで、きちんと最先端のプレーヤーとして投入する。Cellを搭載するPS3は、HDMIを含めて、最先端のBDプレーヤー」(久夛良木氏)
またディスプレイには、現在のTVからHD対応TV、PCディスプレイなどにも対応する、と久夛良木氏。将来に向けて新しい技術を吸収しながら、現状あるデバイスもサポートしていくトータルの仕組みをPS3に内蔵するとのこと。
そしてHDDについて「“Detachable”(取り外し可能)と仕様には表記したが、あったりなかったり、どの方向に向けてソフトを作ればいいのかということもある」としながら、PS3については“HDDがあることを前提”として考えている、と述べた。
「HDDを最初から“ある”としたときのコストプレッシャーは、我々だけでなくベンダーもそうだと思うが、ネットワークの敷居をなるべく下げたい、と考えている。(HDDは)“全部ある”と考えて、ソフトを開発していただきたい」(久夛良木氏)
また、PS3のソフトはすべてBD-ROMで供給されることも発表された。「PS2のDVD-ROMは手ごろだが、あまりにも手ごろすぎてコピー対策ができていない。BDは最先端のプロテクション機能を持ち、ユーザーの利便性を損なわない仕組みもある。PS3の唯一の供給メディアとさせていただきたい、というのがお願い」(久夛良木氏)
なお、BDのコストについては「ベンチマークがないので何とも言えないのは確かだが、いまの2層DVDと大きく違わないコストをなるべく早期に実現する。BDのプレスコストが1枚10ドルなんてことはない」と述べた。
「BDの素材はいっしょなので、ゲームソフトも映画も作り方はいっしょ。数を作れば大丈夫です」(久夛良木氏)
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