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モノづくりで大事なことは協調性――「デジタルエンタテインメントアカデミー」入学式でスクエニ橋本氏講演

本日4月6日、デジタルエンタテインメントアカデミーの入学式が行われ、その後「FFVIIAC」のプロデューサーでもあるスクウェア・エニックスの橋本真司氏による特別講演が行われた。

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 ゲーム開発関係者を招いての特別講演が毎年の恒例でもある、デジタルエンタテインメントアカデミーの入学式が今年も執り行われた。デジタルエンタテインメントアカデミーは、1991年にエニックスゲームスクールとして設立され、その後現在の校名に変更。多くのゲーム企業が主旨に賛同し出資に名乗りを挙げ、ゲームクリエイターの育成に貢献している。今年は第15期生を迎えての入学式となる。

 前途したように毎年、入学式では現場に立つ開発者やプロデューサーによる特別講演が催されるのが恒例となっており、今年はスクウェア・エニックスのコーポレート・エグゼクティブであり、「キングダムハーツII」や「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」(FFVIIAC)のプロデューサーでもある橋本真司氏が登壇。「デジタルエンタテインメントにおける世界戦略」と題して、新入生へ大規模プロジェクトを例にした特別講演が行われた。

 入学式は、デジタルエンタテインメントアカデミー学長・平野雅一郎氏による訓辞のあと、コンピュータエンタテインメント協会専務理事の堀口大典氏とコンピュータソフトウェア著作権協会専務理事の久保田裕氏が来賓を代表して挨拶。続けて株主代表としてコーエー代表取締役社長の小松清志氏とYOZAN代表取締役社長の燻謦シ氏が入学生に向け、今後のゲーム業界を支える人材となり、日本をそして世界をリードするクリエイターとなることを希望する旨を伝えた。

スクウェア・エニックス コーポレート・エグゼクティブ橋本真司氏

 入学式を終えたあとの特別講演会では、まずゲーム開発における一番大切なことは“コミュニケーション”にあると橋本氏は切り出した。漫画家や作家と違い、ゲーム製作はどうしても多人数での作業を強いられるもの。もちろん1人での製作も可能だが、それではいつできるかも怪しい。これは学校生活でも同様で、ある一定期間、開発にともに携わる上で常にクリエイター同士の交流を深める状況を作り続けなくてはいけないと語る。特に橋本氏が携わるような大規模プロジェクトでは、開発期間が半端なく長期に渡り、正月を何度も迎えることがザラとなる。この状況では、いつ終わるともしれない作業を強いるクリエイターのモチベーションを保つことも大事となってくる。コミュニケーションはこういう状況で、他者と他者をつなぎ止め、モチベーション向上の原動力となりえるというのだ。

 ここで橋本氏は、プロデューサーとして関わった「ファイナルファンタジーX」(FFX)を例に出し、大規模プロジェクトでのプロデューサーとしての仕事について説明する。FFXは、約20カ月を費やして製作され、2001年7月19日に発売したRPG超大作で、2005年12月現在で全世界で790万本出荷した大ヒット作品である。その後の世界を描いた続編「ファイナルファンタジーX-2」も製作されるなど作品の世界観は好評だったが、20カ月の開発期間中にはキャラクターボイスだけでも声優約30人を含め、リップシンクなどの作業で忙殺されることになった。

 通常、このような大規模プロジェクトでは、前途したような長期に渡る開発期間のため、さまざまな軋轢が生じるという。それを回避するのも仕事のうちなのだとか。現に、1作ゲームを開発し終わるごとに何かしらのトラブルが発生し、たもとを分かつなんてことはよくあることなのだと振り返る。

 新入生の中には今後、プロデューサーとして活躍する人材もいることだろうと、自身の経験を踏まえプロデューサーとしての留意点を挙げる。

  • 多人数の指揮系統の確立→チーム制
  • 年初予算の達成方法→月次の予算管理
  • スタッフのモチベーション維持
  • ワールドワイド販売戦略→欧米販社との月次会議
  • 営業・宣伝との連携による最大拡販

 頭の痛い問題ばかり。開発期間をオーバーするとそれだけ予算ぐりが苦しくなるし、販売戦略に支障を及ぼすようになってくる。いつ終わるともしれない開発期間を終えるべく、士気を維持して発売後の営業方針を念頭におかなくてはならないプロデューサーは、作品そのものではなく、全体の流れを把握する空気感を推し量る能力を必要とする。

ゲーム開発における2本柱として、宣伝プロデューサーとプロダクションマネージャーを説明。ゲームそのものに関わるわけではなくとも、これらがしっかり機能しなければ、ゲームは世に出ることはない

 続いて橋本氏は、「FFVIIAC」が2年連続でヴェネチア国際映画祭に招聘されたことを紹介し、海外展開について言及。FFVIIACは、フルCG映像として現在、世界の頂点を極めた作品という自負があると語る。ヴェネチア以外でも、パリ、スペインの映画祭、そして最近ではロサンゼルスなどでも上演され、どこも大盛況だったと現地の映像を交えて伝える(北米版のFFXIIACが、4月25日に発売されることもあってのロサンゼルス上映会だったようだ)。橋本氏は、日本のゲーム、そして映像技術が、世界中で注目され認知されていることを再確認できる場となったと自信をみなぎらせる――。「いいものは性別、年齢、国籍など関係なく受け入れられるもの」と。

 現在、ゲーム市場ではニンテンドーDS関連が好調である。橋本氏は「ゲームづくりにおいて人数の多さは関係ない。発想がすべて。これを作るんだという気持ちが最大のチャンスを呼び込む」と喚起する。自分のアイディアをどう伝えるか。大規模プロジェクトの作り方でなくとも面白い作品は作ることができるし、最近のDSソフトの例を挙げるまでもなく、シンプルなものでも大ヒットするものだと、続くクリエイター候補生にまだそのチャンスが残っているとエールを贈る。ただし、シンプルなものほど世界に通用するものを作るのは難しいとも。

 昨今はさまざまなコラボレーションでの展開も目立つ。スクウェア・エニックスでも「ダージュ オブ ケルベロス-ファイナルファンタジーVII-」(DCFFVII)において、アーティストのGacktとのコラボレーションが記憶に新しい。会場では、宣伝プロデューサーを目指す人へのインスピレーションになればと、DCFFVIIの販促用店頭PVを流す。Gacktに限らず、総合力でモノづくりは行われるという一例だ。

FFX当時の制作体制を説明する。新入生にどこかしらのポジションで活躍してくれることを期待するとの発言

 「技術向上は常に行われ、明日には新しい作品が世に登場するかもしれないが、現時点でスクウェア・エニックスのFFXIIACは、世界一のCGチームによって製作された」のだと、橋本氏は胸を張る。「すでに卒業し同社に入社する先達も多く、能力のある人は第一線で活躍している。日本で第一線で活躍するということは、世界の第一線ということ」と、グローバルな視点を持つことと、明確なモノ作りへの意思を持ち続けることが、クリエイターには必要なのだと、プロデューサーとしての意見を挙げる。こうして橋本氏は、後に巣立ってくることになるゲーム業界へと歓迎するのだった。

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