次世代ゲーム機を知るための用語解説――映像関連用語編:「ハイデフ」、「D4」、「HDMI」ってなに?(2/2 ページ)
E3 2006では、プレイステーション 3やWiiなど、すでに発売されているXbox 360とあわせて、本格的な次世代機ゲームの展示が行われることだろう。そこで「知った気になっているつもり」の次世代機用語を、改めて確認しておこう。
D端子(D1/D2/D3/D4/D5)
家庭用ゲーム機とテレビを接続する場合に利用される映像用の接続端子としては、コンポジットビデオ端子やSビデオ端子がおなじみだが、現在ではD端子を利用している人の方が多いのではないだろうか。このD端子は、EIAJ(日本電子機械工業会)が定めた日本独自規格の接続端子で、コネクタが「D」の形をしているところからD端子と名付けられている。「D」という文字が付いていることからD端子で接続すれば映像信号がデジタルで伝送されると思っている人が多いようだが、それは間違い。伝送される映像信号は、アナログ方式のコンポーネント映像信号だ。
アナログ方式の映像信号は、「輝度信号(Y)」と「色信号(C)」という2種類の成分によって成り立っている。映像機器をコンポジットビデオ端子で接続した場合、輝度信号と色信号が混合された映像信号が伝送され、その映像信号を受けた映像機器側(テレビなど)で輝度信号と色信号を分離(この作業をY/C分離という)し、実際の映像が表示される。非常に単純な映像信号の伝送方式だが、輝度信号と色信号を複合して伝送するためそれぞれを完全に分離できず、表示時にクロスカラーやドット障害という映像ノイズが発生してしまう。また、Sビデオ端子では、映像信号の輝度信号と色信号がそれぞれ独立して伝送されるため、コンポジットビデオで接続した場合よりも映像ノイズが出にくく、きれいな映像が表示可能となる。とはいえ、コンポジットビデオやSビデオでは、いわゆるハイビジョンクオリティの映像信号は伝送できない。
それに対し、コンポーネント映像信号では、輝度信号と色信号を分離するだけでなく、色信号を青成分(Cb/Pb)と赤成分(Cr/Pr)に分離した状態で伝送される。これによって、ハイビジョン映像信号(1080i/720p/1080p)の伝送も可能となっている。ただ、コンポーネント映像信号を伝送するには3本のケーブルを接続する必要があり面倒だ。そこで手軽にコンポーネント映像信号を利用できるように、1本のケーブルだけで接続できるようにしたのがD端子である。ちなみにD端子では、コンポーネント映像信号に加え、4:3や16:9といった映像の表示画角を表す信号も伝送できるようになっている。
D端子で伝送できる映像信号としては、D1からD5まで5種類の規格が定められている。詳しい映像規格は下の表を見てもらうとして、それら規格を簡単に言ってしまえば、アナログテレビ放送に相当するのがD1、プレイステーション2やゲームキューブなどのプログレッシブ表示時に相当するのがD2、ハイビジョン放送に相当するのがD3、Xbox 360のゲーム映像表示に相当するのがD4、プレイステーション 3が対応する最高の映像出力に相当するのがD5だ。基本的に、上位の規格になるほど美しい映像が表示されると考えればよい。そして、それぞれの映像信号の入力に対応するテレビを利用しなければ、それぞれの映像は楽しめない。
D端子規格 | 映像フォーマット | 走査線数 | 走査方式 | 対応機器など |
---|---|---|---|---|
D1 | 480i(525i) | 480本 | インターレース | アナログテレビ放送 |
D2 | 480p(525p) | 480本 | プログレッシブ | プレイステーション2、ゲームキューブ、Xbox |
D3 | 1080i(1125i) | 1080本 | インターレース | ハイビジョン放送 |
D4 | 720p(750p) | 720本 | プログレッシブ | Xbox 360、多くのハイビジョンテレビ |
D5 | 1080p(1125p) | 1080本 | プログレッシブ | プレイステーション3、一部のハイビジョンテレビ |
HDMI
次世代ゲーム機と呼ばれている製品のうち、Xbox 360はコンポーネント映像信号出力端子(D端子)を備えている。それに対しプレイステーション 3では、コンポーネント映像信号出力に加えて、次世代の映像信号出力端子である「HDMI(High Definition Multimedia Interface)」端子が搭載されることになっている。このHDMIは、パソコンと液晶ディスプレイ(正確にはデジタル駆動方式のディスプレイ)を接続するための規格である「DVI」をベースとして、家電製品向けに機能拡張したものだ。
HDMIの特徴は、何と言っても映像信号と音声信号が無圧縮のデジタル信号で伝送されるところだ。映像機器からテレビへ、映像信号・音声信号ともにデジタルデータのまま全く劣化せずに伝送されるので、非常に高品質な映像が楽しめる。ハイビジョン対応液晶テレビやプラズマテレビなどデジタル駆動方式の表示デバイスと次世代のデジタル映像機器を接続するには、HDMIが最も有利となる。
また、D端子では、接続ケーブルで映像信号のみが伝送され、音声信号は別途音声用のケーブルを利用しなければならないが、HDMIでは映像信号に加えて音声信号も伝送されるため、1本のケーブルを接続するだけで接続作業が完了するというメリットがある。さらに、接続機器間でリモート制御信号のやりとりも可能となっているので、例えばテレビのリモコンを使ってHDMIで接続したAV機器の操作も可能となる。
プレイステーション 3がHDMIを搭載するのは、高解像度のゲーム画像を劣化させずに表示させるのはもちろんのこと、標準搭載されるBlu-rayドライブを利用した、次世代映像ディスク規格であるBlu-rayディスクの再生もサポートしているからだ。
Blu-rayディスクは、著作権保護のため映像信号を暗号化されたデジタル信号のまま伝送することを基本としている(日本では2010年まではD端子を利用したアナログ出力も許可され、その後可否が再検討されることになっている)。それには、著作権保護機構「HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)」をサポートするデジタル信号伝送システムであるHDMIの利用が不可欠となる。そのため、プレイステーション 3にはHDMI端子が不可欠というわけである。
ちなみに、今年3月に行われた「PS Business Briefing 2006 March」で、プレイステーション 3の発売が今年11月上旬にずれ込むことが発表されたが、この遅れの原因になったと言われているのが、HDMIの規格上の問題だ。
従来のHDMI規格では、データ伝送能力の制約があり、最大でも1080iでR/G/B各色8bitの色深度(いわゆる24bitカラー)での表示しかできない。しかし、1月に発表された次世代HDMI規格では、データ伝送能力が従来の2倍に拡張され、1080pでR/G/B各色12bitの色深度(36bitカラー)での表示がサポートされるようになる。これによって1ピクセルあたり約10億色を超える色表現が可能となり、まさしく次世代の表示品質を実現できるようになるのだ。この次世代HDMIの規格策定が遅れたことが、プレイステーション 3の発売時期を遅らせた原因のひとつなのである。
とはいえ、プレイステーション 3を純粋にゲームを楽しむための機器と考えれば、HDMI端子は必須ではない。もちろん、D端子などでテレビと接続した場合には、プレイステーション 3の最高の映像クオリティが得られなくなる可能性があるものの、HDMI端子を持たないテレビでもプレイステーション 3のゲームを楽しむことは可能だ。
ちなみに、外付けドライブを利用して次世代光ディスクである「HD DVD」をサポートすることになるXbox 360も、HD DVDビデオを最大限のクオリティで楽しむためにHDMI端子の搭載が必要になると思われる。ただ実際には、HDMI端子が搭載されるとしてもそれは外付けHD DVDドライブ側に用意されるか、HDMI端子は用意されずにXbox 360側のD端子(コンポーネント映像信号)での出力のみになる可能性が高い。
今回は、映像に関連する技術用語をいくつか解説してきたが、次世代ゲーム機には、これら以外にもまだまだたくさんの最新技術が採用されることになる。もちろん、それらも今後順次解説していく予定だ。また、解説してもらいたい用語があれば、こちらのフォームから、ぜひともリクエストしてもらいたい。
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