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多様化に対応することでゲーム産業は第2ステージへと飛躍する――和田洋一氏基調講演

東京ゲームショウ2006の基調講演は、ソニーコンピュータエンタテインメントの久夛良木健氏に続き、CESA会長かつスクウェア・エニックス代表取締役社長である和田洋一氏が登壇。現在のゲーム産業が置かれている現状や、今後のゲーム産業が発展するために必要なことについて語った。

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社団法人コンピュータエンターテインメント協会会長の和田洋一氏。スクウェア・エニックス社長という立場ではなくCESA会長という立場での基調講演であった

 直前に行われた久夛良木のトークセッションにおいて、プレイステーション 3の価格改定(値下げ)と、20GバイトモデルへのHDMI端子の搭載というサプライズが発表された直後ということもあり、和田氏は登場するやいなや「私の方からは何のサプライズもございません」と会場の笑いを取った。

 実際、今回の基調講演では、和田氏はスクウェア・エニックス社長という立場ではなく、CESA(社団法人コンピュータエンターテインメント協会)会長という立場での登壇。スクウェア・エニックスが開発中のタイトルなどに関する話題は一切なく、現在のゲーム産業が置かれている現状を紹介しつつ、今後ゲーム産業がさらなる発展を遂げるためにどういったことが必要なのか、という内容の基調講演となった。ちなみに、今回の基調講演全体で語られた内容は、先月(8月30日)に昭和女子大学で行われた「CESAデベロッパーズカンファレンス 2006」での和田氏の講演をほぼ踏襲したものであった。

 まず初めに、現在の家庭用ゲームおよびPCゲームを合わせたゲーム産業全体の市場規模の伸び率が示された。ワールドワイドで見ると、ゲーム産業は年平均9.3%、ネットワークゲームも含めると11.8%と高い成長率を誇っており、さらに家庭用ゲームだけに限ると年15.4%という極めて高い成長率となっている。とはいえ、日本のゲーム市場はこのところ芳しくなく、さらに北米市場も昨年ついにマイナス成長になるなど、一部では悲観的な見方もある。しかし和田氏は、「一部に市場が飽和してきていると指摘している方もいらっしゃいますが」と前置きしながら、日本におけるゲームへの参加状況と、ゲームへの参加意向を示すグラフを表示しつつ、「まだまだゲーム産業は成長できる可能性を秘めている」と指摘。確かに、40代男性で50%、40代女性で40%ほどと、ゲームを楽しんでみたいと考えている人はかなり多く、このユーザー層を取り込めるならば、今後さらなる成長が期待できるだろう。

 では、そのためには何をすればいいのか。その点について「ゲーム産業における危機意識は、量的観点ではなく、質的観点で持つべきだ」と指摘する。ユーザーのゲームへの参加意向を見る限り、取り込めるユーザーに関しては問題がなく今後も楽観視していい。しかし、幅広い世代のユーザー層を取り込むためには、多様なジャンルをカバーしていく必要があり、そのためにも今後は質的な変革が必要となる。これは、従来からの和田氏の持論であり、今回の基調講演でもその持論をベースに話題が展開された。

ワールドワイドで見ると、ゲーム産業は平均11.8%という非常に高い成長率を誇っている
ゲーム市場が飽和していると言われているが、参加意向は非常に高く、潜在的な需要は非常に大きいと指摘
潜在的需要は大きく量の心配はいらない。しかし、幅広いユーザー層を取り込むためには質的な変革が不可欠

多様化への対応力が今後の飛躍へのカギ

 和田氏は、現段階でもゲーム市場は巨大な潜在市場であり、プレイ端末の広がりや、既存の流通だけでなくネットワークを絡めるなどビジネスモデルの多様化などによって、新規参入による成功や更なる収益の拡大が期待できるとし、非常に大きなチャンスがある市場であると指摘。

 その一方で、コンテンツの多様化に対応できなかったり、単純にタイトルを出すだけで終わらせたり、ビジネスモデルの多様化に対応できないようでは、逆に大きなリスクになるとも苦言を呈す。「今後ゲーム産業は、大きく変質しながら『第2ステージ』へ上がっていくものと思っています。変化しなければ上がっていけません。変化すれば、必ず上がっていくはずです」と和田氏は語りつつ、そのカギとして、様々な面での多様化に対応できる力が必要だと提唱した。

 では、多様化に対応するためにはどうすればいいのか。その問いに対して、和田氏はいくつかのヒントとなる考えを示した。

  • 今までターゲットにしていなかったユーザー層が何を望んでいるのか、どういったライフスタイルを営んでいるのかを考え、それをコンテンツに反映させる。
  • ゲームが楽しめる端末や機材の多様化に対応する。
  • 新たなユーザーインタフェース(入力機器)に対応する。
  • (まだ議論は進んでいないが)新たなアウトプット(ディスプレイ以外の出力装置)に対応する。
  • 対コンピュータから、コンピュータを介した対人間のコミュニケーションへシフトする。
  • (ネットワークゲームのように)ユーザー自身がゲームを構成するデータの一部になるような、ユーザー参加型コンテンツへシフトさせる。

 もちろん、こういった点を実現していくには、様々な課題がある。とはいえ、その変化を実現することによって、確実にゲーム産業は次のレベルへとシフトしていく。これが和田氏の考えである。

多様化に対応することで、ゲーム産業は第2ステージに飛躍する

 現在、ゲーム産業は3兆円という非常に巨大な市場規模に成長している。しかし、さらにもう1ステップ進むためには、開発者側も相当な変化を覚悟しなければならない。「第2ステージはチャンスに満ちています。ただ、今までと同じ事をするのではなく、多様化に対応しなければなりません。それによって、より広いユーザーを獲得できますし、より新しい体験をユーザーに届けられるのです。」最後に和田氏は、会場に集まったゲーム業界関係者に向けてこのように語り、基調講演が締めくくられた。

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