「SDガンダム スカッドハンマーズ」――ハンマーをデザインした大河原邦男氏に直撃インタビュー:+D GUNDAM その4 Wiiリモコンでガンダムハンマーを振り回せ!(2/2 ページ)
+D GUNDAMにまたも大物ゲストが登場! 連載4回目にして、早くもモビルスーツの生みの親でもあるメカデザイナー大河原邦男氏へのインタビューが実現した。Wii本体と当時発売のソフト「SDガンダム スカッドハンマーズ」で、ハンマーのデザインとキービジュアルを担当した大河原氏に、このゲームについて語ってもらった。
ビジュアル重視のゲーム性からゲーム本来の楽しさへ移行
――Wiiという任天堂の次世代ゲーム機でこの「SDガンダム スカッドハンマーズ」が発売されるわけですが、このゲームについての印象をお聞かせください。
大河原 このゲーム自体が今までにない新しいもので、デモンストレーションを見せてもらったときにもゲーム本来のおもしろさを感じたので、子供から大人まで楽しめるんじゃないかな。今まで、ずっとビジュアルを追いかけていたガンダムのゲームの世界から、ゲーム本来の楽しさをもった方向に移行していると感じました。
本来、僕は“かわいい”とか“笑っちゃう”というのは好きなんで、ガンダムみたいに後で理屈をつけなきゃいけないような世界というのは面倒くさいんですよね(笑)。ヤッターマンみたいな世界だと、絶対に後から「そこはおかしい」というような指摘はないの、結構楽しめるんですよ。
――ガンダムなどのモビルスーツのデザインと、今回のハンマーのデザインや、大河原ファクトリーで作られているようなアイテムのデザインの違いみたいなものはありますか?
大河原 僕がメカデザインの仕事を始めてから、作品の中でモビルスーツだけとかロボットだけをデザインするというのは実はつい最近のことなんですよ。今までは1人で全部やるのが普通だったし、そういう訓練をずっとやってきているんで、ロボットのデザインはあくまでもごく一部の仕事で、作品に登場する他の道具だとか兵器だとか、乗り物だとかすべてを昔はやっていたんです。だから、仕事だったら何でもやってきたし、それなりの自信はあるんで、デザインをする上での対象がああだからこうだからというのはないんですよ。今回はたまたまハンマーのデザインということで、より気を使わないで遊んだというところはありますけどね。
現在のように、アニメーションが好きで、それでメカデザインのお仕事を始めたような人は照れてしまって、今回の僕のようなハンマーのデザインはできないと思うんですよ。やるとしたらもうちょっと理屈つけて、火を噴き出すんならこういう構造だろうなとか考えてデザインするんじゃないかな。僕なんかだと、ストレートに身の回りで火が出るといったらガス台だなっていうことで、台所にあって火が出るアレだなって子供でも理解できるものを取り入れる。照れないでやるということが僕のやり方ですよね。そもそも、僕の場合はメカデザイナーという名前はもらったけど、やっていることは形を設定する仕事だと思っているので、アーティストというよりは“職人”ということが、目指しているものですし。
監督の求めるものを形にするのがメカデザインの仕事
――ちょっと余談になりますが、25年も前にデザインされたモビルスーツたちが、いまだに圧倒的な支持を受け、高い人気を誇っていますが、その心境というのは?
大河原 それは富野さん(注:総監督 富野由悠季氏)のラフがあったからですよ(笑)。昔のモビルスーツを今見ると、デッサンは狂っているし、面と面は繋がらないし、全部やり直したいですけどね。まさかここまで続くとは思っていなかったし、残ってしまうとああでもない、こうでもないと。もう25年もさらされているわけですからね。
――イチファンとしては複雑なものがありますが(笑)
大河原 あの頃は「ゼンダマン」も同時にやっていたし「ザ・ウルトラマン」もやっていて、毎週放映のアニメの仕事を3本抱えていたんで、物理的に考えても1本を2日くらいでアップしないといけないわけですから、その中でモビルスーツや小物や戦艦を仕上げないといけないわけですよ。だから、何が一番うらやましいかといったら、人気が出てきてOVAから参加する人ですね(笑)。ベースがあって、そこから派生させればいいわけですから。僕もスケジュールに追われずにじっくりとデザインしてみたいですよ。
まあ、監督や演出家が求めているデザインを出せるように技術を磨いていけば、行き詰まるということはないんですね。監督が求めているものを的確に出せばいいのだし、次に監督が替わったとしても、またその人が求めているものを出すと、おのずとして出てくるものも変わってくるわけだから、前の作品と今回の作品が似ているということもないし、もう次の新しいデザインが出ないということもない。だから、本当に長くメカデザインの仕事を続けていくのであれば、そういう方向にシフトしていったほうがいいと思うんですけど、やっぱりみんなアーティストになりたがるというか(笑)。そうすると、デザインするときにも自分にウソをつけないから苦しむわけですよね。僕の場合は、監督が求めているのだからそれを出すのが一番素直だし、疲れないで済むんですよね。
ただ、小物はいいんですけど、乗り物は時代でセンスが変わるんですよね。でも、ロボットっていうのは完全にコスチュームなので、時代が変わろうがデザイナーの個性を出せば、それなりに時代遅れとはならないからいいんですけどね。
――ゲームを遊ぶユーザーに向けてコメントをお願いします。
大河原 今までのゲームというのは、ハードも違うんですけど“ビジュアル的に進んだものがいいゲーム”というような、そういう捉え方が浸透していたみたいですが、ここ最近はゲーム本来の楽しみ方を求めるように、戻りつつあるんじゃないかと思います。Wiiというハードについても、「SDガンダム スカッドハンマーズ」を最初にプレゼンテーションを受けたときに、将来もアイディア次第でおもしろいゲームができるんじゃないかなと、なんかそんな感じがしたんですね。ゲームが持つ本来の爽快感だとか、やって楽しかっただとか、理屈なく楽しめるゲームだと思うので、そういうものを味わってほしいですね。
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