突然の販売開始、予想もしなかった低価格、フルHD対応――サプライズ尽くしのプレイステーション 3版「鉄拳5DR」:「鉄拳5 DARK RESURRECTION」レビュー(2/2 ページ)
このゲーム業界、発売延期の報は珍しくないが、発売が早まることは滅多になく、ましてや事前に何のアナウンスもなく発売されるソフトなんて聞いたことがない。年の暮れにバンダイナムコが仕掛けたサプライズ。見事なお手並み、いやはや参りました。
アイテム集めや段位認定など、やり込み要素は多い
プレイステーション 3版「鉄拳5DR」のゲームモードは、全部で3種類。いつもなら、起動時に懐かしのおまけゲームがプレイできたり、本編も遊び尽くせないほど多彩なゲームモードが搭載されていたりと、サービス精神旺盛なところを見せてくれるナムコレーベルだが、今回はダウンロード販売ということもあってか、かなりシンプルにまとめた印象だ。
まず「アーケードバトル」は、文字通りアーケード版「鉄拳5DR」と同じで、最終ボスの仁八を倒せばクリアとなるモード。初めから34人の全キャラが使用可能で、さらにアーケードバトルを一度クリア(難易度は問わず)すれば仁八も使えるようになる。
次に「ゴーストバトル」だが、これはさまざまなプレイヤーの特徴を反映した“ゴースト”が次々と出現するモードで、同じキャラクターでもその使い手によって動きにかなり違いが見られ、あたかもゲームセンターで対戦しているかのような感覚で楽しめる。このモードは、対戦相手に負ける(コンティニューをしない)か、自分で「EXIT」を選択するまで延々と続く。また、試合に勝利した後、次の対戦相手を3人の中から選ぶことができる。
この2つのモードでは、対戦相手を倒すことでファイトマネーを獲得でき、貯めたファイトマネーで新しいコスチュームやアクセサリなどのアイテムを購入して、自分のキャラクターをカスタマイズすることができる。鉄拳シリーズに登場するキャラクターたちはどれも“濃い”ことでつとに有名だが、このアイテムがまたキテレツなものばかりでおかしい。また、ある程度試合を続けていると「昇級試合」が始まることもあり、それに勝利するとキャラクターの位が昇格する。ストーリーモードや、キャラクター個別のエンディングは特に用意されていないものの、このアイテム収集と昇格がプレイのモチベーションを高める。
最後の「VSバトル」は、2P対戦用のモード。このモードでは、メモリースティックなどを使ってカスタマイズデータを持ち寄り、自分のカスタマイズキャラクターで対戦することもできる。
残念ながら、今回のプレイステーション 3版「鉄拳5DR」にはオンライン対戦モードが搭載されていない。また、各キャラクターのコマンドリストはプレイ中のポーズメニューでいつでも確認できるが、プラクティスモードがないことも心残りだ。ダウンロード販売という形態ゆえに、あまり多くの機能を搭載できない事情があったのかもしれない。ただ、HDDにインストールする方式なら、後から追加要素を配信することも決して不可能ではないだろうから、新アイテムやゴーストデータの追加などを期待したいところ。
ダウンロード販売が定着するかどうかの試金石となりそうな一作
改めて考えると、「鉄拳」シリーズというのは「リッジレーサー」シリーズや「テイルズ オブ」シリーズに並ぶ、旧ナムコ時代からの看板タイトル。その最新作ともなれば、パッケージ販売でも確実に本数は出るはずで、それをあえてプレイステーション 3でダウンロード販売にしたことは、かなり思い切った決断と思う。何より、税込み2000円という戦略的な価格設定は、おそらく誰も予想できなかったはず。オンライン対戦ができないのは確かに惜しまれるが、この内容とクオリティで2000円なら大いに満足できる。
今回のプレイステーション 3版「鉄拳5DR」は、家庭用ゲーム機におけるダウンロード販売の1つの試金石になるのではないかと感じた。プレイステーション 3に限らず、WiiにもXbox 360にもゲームコンテンツをオンラインで販売する仕組みはあるが、その多くは昔懐かしいゲームなど過去のソフト資産を再利用したものであったり、少人数で開発できるカジュアルなタイプのゲームがほとんど。それに対して、バンダイナムコがパッケージ販売でも十分に通用しそうなタイトルをダウンロード販売に振り向けたことが興味深いところで、最終的な販売数がどの程度まで伸びるかにいまから大いに関心を寄せている。また、他のメーカーが今後どのような形で追従するのか(あるいはしないのか)、その動向も気になるところだ。
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