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優しさから感動へ、立川から全国へ「イース」、「イースII」ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/3 ページ)

今年20周年を迎え、さまざまな企画で盛り上がる「イース」シリーズ(日本ファルコム)。数々のPCや家庭用ゲーム機で発売された、名作アクションRPG。実は、わたしが初めてプレイしたコンピューターRPGでした。

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豪華なマニュアルが世界観を補完

 ストーリーも充実している。序盤はリリアの病気を治すために、医師を救い出し、薬の材料を取ってくる。その後は、6冊の本の返還、氷壁や溶岩地帯の冒険を経て、モンスターの拠点・サルモンの神殿へと乗り込んでいく。神殿は広大で、この中でも数多くのイベントが起こる。

 「イース」、「イースII」とも、謎がまったくないわけではないが、考えていろいろ試すうちに解ける謎が多い。ついお遊びでテレパシーの魔法を使ってみたくなる状況で、実際に使ってみると先へ進めるようになるなど、ヒントの出し方がうまい。

画像 後半に出てくる謎の1つ。モンスターの会議の内容を聞こうとするアドル。小さな声を聞くアイテムはあるが、それだけでは内容がわからない
画像 「イース」同様、どこでも体力を回復できるアイテムがあるが、「イースII」では、ちょっとわかりにくい場所に隠されている

 「イース」、「イースII」でもう1つ触れておきたいことは、マニュアルの豪華さだ。家庭用ゲーム機版ではそうでもないのだが、PC版はハードカバーで厚い。

 「イース」では、アドルがミネアの町へ行くことになった経緯が、実に詳しく書かれている。この文章自体が1つの冒険小説となっていて、小説のラストがそのまま、ゲームの入口になっている。まさにメディアミックスだ。

 メディアミックスといえば、「イース」は小説、マンガ、OVA(オリジナルビデオアニメ)にもなっている。元のゲームに魅力的な人物が多数登場したことに加え、「イースII」のマニュアルに都築和彦氏が描いた人物イラストの印象が強かったので、マンガやアニメになっても違和感がないのだ。

(逆に、登場人物がリアルタッチで描かれたX68000版は、正直、違和感があった)

 アニメ的なキャラクター表現は、同じ日本ファルコムの「ロマンシア」でも使われていた。しかし「ロマンシア」は、ゲーム自体の難度がきわめて高く、かわいいキャラクターとのギャップがあった(当時の広告を見る限り、どうも意図的にギャップを作っていたようだが)。

 これに対し「イース」は、“優しさ”をコンセプトに作られていたので、キャラクターのルックスが、ゲーム内容とよくマッチしていた。そのため、ゲームマニアじゃない人々にも支持されて、大ヒットにつながったのだ。

“CD-ROMで何ができるか?”を示す

画像 キャラクターがしゃべるシーンのいくつかでは、その人物の顔がアップになってカットイン

 「イース」は1989年、PCエンジンCDロムロムに移植された(移植・発売元:ハドソン)。CD-ROMの大容量を生かして、「イース」、「イースII」を1つにまとめ、「イースI・II」として発売された。

 大容量に加え、音楽CD同様の“生音”が使えるというCD-ROMの長所が、存分に発揮された。重要なシーンのセリフは、声優さんがしゃべって、音声として聴くことができる。今のゲームでは当たり前となったことだが、当時はこれが衝撃的で、新しかった。

 BGMもアレンジされて、さらに輝きを増す。例の「イースII」廃墟のテーマ(RUINS OF MOONDORIA)の「カンコンカン!」は、「ストトトトットコトットコ」に変わっていた。……文字で表すとマヌケだが、実際に聴くと心地良いビートなのだ。

 もちろん「イースII」のオープニングデモも強化。PC版よりもシーン数が増えている。リリアは声を出してしゃべる。

 「イースI・II」は、PCエンジン用CD-ROMシステム「CDロムロム」の方向性に、大きな影響を与えた。ただしその後の同機種では、アニメ的表現だけに頼ったゲームが、いくつか出たことも否めない。

 「イースI・II」はゲーム自体がよくできていて、しかもアニメ的表現とマッチしたゲームバランスだったからこそ、成功したのだといえよう。

これが「イース」でなかったらなあ

 さて、ファミコン版にも触れておかなければなるまい。

 「イース」がファミコンに移植されたのは1988年(移植・発売元:ビクター音楽産業)。PC版のプレイ時間の短さを嫌ってか、大幅なアレンジが施されている。

 まず、迷宮やフィールドが、PC版より大幅に広くなった。

 次に、PC版になかった謎が加わった。例えば、廃坑に通じる道に池があって進めない。

 フィールドの奥にあるワープポイントからワープを繰り返して、泉の妖精に会い、町でサラナの杖を探し、妖精から輝きの笛をもらい、フィールドの木を動かしてサラナの杖を目覚めさせ、池に入れば水が干上がるので、やっと廃坑へ行くことができる。

 さらに、廃坑にも大きな廃坑と小さな廃坑があり、最初は小さな方にしか入れない。ここで「くちたるとびらくぐり」で始まる文章を見つける。

 この「くちたるとびら」が、PC版になかった、ミネアの町の城壁にずらっと並んだ扉のことだと気づかない限り、そして「くちたるとびら」が、その中にたった1つだけある、取っ手のない扉のことだとわからない限り、メインの廃坑に行くことはできないのだ。

 そしてゲームバランス。レベルをかなり上げても、モンスターに背後から攻撃されると、非常に大きなダメージを受ける。即死も珍しくない。

 あるエリアで、強いザコキャラと戦って、やっとのことでレベルを上げると、次のエリアでは恐ろしい勢いでレベルが上がる、なんてこともあった。

画像 「くちたるとびら」は、この写真の左上にある。確かに取っ手はないが、くちているようには見えない
画像 PC版にはない、鎖(?)を伝って進む場面。半キャラずらしができなくて苦労する

 ……とまあいろいろ書いたが、全体的にはそれほどひどい出来ではなく、アクションRPGとしてそこそこ楽しめるゲームだと思う。

 ……これが「イース」でなかったらの話だが。

 今なら謎解きやマップは、攻略サイトで確認できるから、ボス戦さえどうにか頑張れば、クリアーするのは難しくない、はず。

 なお、1990年に同じビクター音楽産業から発売された、ファミコン版「イースII」は、PC版にかなり忠実な移植。ファミコンで、あの凝ったグラフィックが、よく再現されていることに驚く。オープニングデモもよくできている。

画像
ファミコン版「イースII」。サルモンの神殿の立体構造も、可能な限り再現されている

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