オヤジに訪れた三度目の“なつやすみ”は、懐かしくて、やさしくて、ちょっぴり切ない:「ぼくのなつやすみ3 -北国篇- 小さなボクの大草原」レビュー(1/3 ページ)
待ち焦がれていた、あの“なつやすみ”がやってきた。少年時代に過ごした夏休みを情感豊かに再現した「ぼくのなつやすみ」のシリーズ最新作が、実に5年ぶりに登場。PS3によって映像とサウンドの表現力が一段と高まり、遊びの幅も広がった今作をプレイすれば、子供の頃の思い出が鮮やかによみがえってくる。
今度の舞台は北海道。牧場を営む親戚宅で過ごす夏休み
とうの昔に過ぎ去った少年時代の夏休み。そのおぼろになる記憶をありありと呼び覚まし、懐旧の念に駆られていく「ぼくのなつやすみ」というゲームが登場したときは、驚きとともに深い感銘を受けた。古いものを見たり聞いたりして懐かしく思うのとは少し違っていて、心まで文字通り童心に返り、ひとりの子供として夏休みをもう一度楽しむことができてしまうからだ。
この希有なゲーム性は多方面から高く評価され、また確かな実績も残した。プレイステーションで2000年に発売された1作目は、CESA主催の第5回ゲーム大賞でニューウェーブ賞とパッケージデザイン賞を受賞。その2年後にプレイステーション 2で発売された続編の「ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇」は、第6回文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品に選ばれている。この2作の累計出荷本数は、2005年までに100万本(廉価版を含む)を超え、いまもなお売れ続けているほど息の長いヒット作になっている。
そしてこの夏、待望の3作目「ぼくのなつやすみ3 -北国篇- 小さなボクの大草原」(以下、ぼくのなつやすみ3)がプレイステーション 3で発売となった。昨年の夏にPSPで1作目をリメイクした「ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!」も発売されているが、完全な新作としては2002年の「2」以来、実に5年ぶりとなる。
ゲーム中の時代設定が1975年(昭和50年)であることや、母親が臨月を迎え、主人公の“ボク”くんが夏休みの間、田舎の親戚宅に預けられることになるなど、基本的なシチュエーションは今回も変わっていない。舞台は、1作目が北関東の山あい、2作目が伊豆半島の海沿いにある田舎町という設定だったが、今回は北海道の牧場だ。そこで酪農を営む吉本家で夏休みの1ヶ月間を過ごすことになる。なお、過去2作のボクの年齢は9歳(小学3年生)だったのに、今回のボクはなぜか10歳(小学4年生)になっている。この違いが何を意図してのものなのかも、大いに興味をひくところだ。
今回、ボクくんがお世話になる吉本家は、おじちゃん、おばちゃん、長女の緑、次女でもうすぐ1歳になる日向、農協で働いているおじいちゃんの5人家族。酪農を営んでいることから、家の近くには牛舎やサイロ、放牧地などがある。この放牧地は傾斜が急なので、ダンボールをソリ代わりに「草すべり」が楽しめる。これが今回加えられた新要素のひとつ。そのほかには、乳牛の乳搾りや、産まれたばかりの仔牛にミルクを与えるなど、牧場ならではの体験が盛り込まれている。
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