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普段詩に書いていることとガンダムの世界は同じだから“すっ”と書けた――森口博子さんインタビュー

「SDガンダム Gジェネレーション スピリッツ」のOP/EDテーマ曲を歌う森口博子さん。非常に盛り上がった東京ゲームショウ2007のステージイベントを終了したあとに、今回の新曲について話を聞いてみた。

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 森口博子さんが「機動戦士Zガンダム」のオープニング「水の星に愛をこめて」を歌っていることを、ガンダムファンなら知らない人はいないだろう。「機動戦士ガンダムF91」主題歌「エターナル・ウィンド」に引き続き、3作目となるガンダム作品は、バンダイナムコゲームスから11月29日に発売される予定のプレイステーション 2ソフト「SDガンダム Gジェネレーション スピリッツ」のオープニング曲「もうひとつの未来〜starry spirits〜」と、エンディング曲「それでも、生きる」を歌うことになっている。東京ゲームショウ2007のバンダイナムコゲームス/バンプレストブースでのイベントを終えた森口さんと、本作の広野啓プロデューサー、後藤能孝プロデューサーに話を聞く機会を得たので、ここでご紹介しよう(イベントの模様は関連記事を参照してほしい)。


画像 左から広野啓プロデューサー、森口博子さん、後藤能孝プロデューサー

―― 今回のテーマ曲にかける意気込みを教えてください。

森口博子さん(以下、敬称略) わたしのオリジナル曲が150曲を超えてきまして、もちろんいままでの曲も歌い続けたいなと思っているのですが、そろそろ新しい曲にも巡り会いたいと思っていたときに、このお話をいただいて、すごくうれしかったですね。それに歴史ある“ガンダムの歌”を歌うということは、ボーカリストとして誇らしいことです。「ガンダムの歌を歌いたい」という人によく会うのですが、わたしは3度も歌わせていただいて、本当に幸せだなと思っています。

―― 今回作詞も担当されていますが、詩の中にはどのようなテーマ、気持ちを込められたのですか?

森口 エンディングテーマ曲タイトルの「それでも、生きる」にかぶるんですが、何があっても生き続けなきゃいけないです。人は。特にこういう殺伐とした時代ですし、突然何が起こるか分からないですよね。そばにあった愛がいきなりなくなっちゃったりとか。生きていれば誰でも、お別れしなければならないときは来ます。でも、そういう苦しみを順番に受け継いで生きていかなければいけない。

 テーマはもちろんいただいたんですが、普段自分が書いている詩と、ガンダムのテーマがすごくリンクしていて、伝えたいことが泉のようにわき出てきて。(ゲーム作品のように)テーマがあるときには、「ここをこうしてください」みたいに、プロデューサーの方といろいろなやりとりがあることが多いんですが、一度もダメ出しをされなくて(笑)、一発OKだったので。テーマがあるのにうれしいなと。

広野啓氏(以下、敬称略) 森口さんはガンダムの世界をとてもよくご存じですので、詩の中にもガンダムっぽい言葉がちりばめられているんですね。「魂が巡ってくる」とか、「地球」と書いて「ほし」と読ませるとか。

森口 「生命」と書いて「いのち」とか(笑)。

広野 「刻」と書いて「とき」と読ませるとか(笑)。そういう言葉がちりばめられていたので助かりました。

森口 ガンダムはもともと壮大なテーマを持っていますので。何十年も前からこのテーマは変わっていないんですが、いまになってよりいっそう、リアルに響いてきますね。メッセージ性が。昔だと、大きいテーマをみんなで理解して、そこに向かっていこう、というようなことがあるじゃないですか。いろいろなことが起こっているいまだからこそ、言い続けていたテーマが、自然に伝わりやすくなってきたと思いますね。

―― 詩の中でお気に入りのフレーズはありますか?

森口 どこのフレーズもいいんですよ(笑)。うーん。どこだろうなあ。……やっぱり最後の「さよならを受け止め、涙を力に変える」かな。どんなことがあってもやっぱり生きなきゃいけない、ということですね。

―― これまで歌われてきたガンダムの曲と、今回の主題歌では、歌われるときに決めているテーマが違うとか、気持ち的に変わったといったことはありますか?

森口 テーマは一貫して変わっていないですね。地球愛や宇宙愛がテーマにありますし。ただ楽曲が、熱い部分もあるんですけど、すごく冷静な曲調であったりする部分もあるので、そのバランスを考えることが、わたしにとっては新しい挑戦でした。オリジナルの150曲ある中では、新しいジャンルの曲ですね。熱くてどこか冷静。

 これまでは高音を生かした曲が多かったんですが、低音から入ってくあたりは、しっかり土地に足を付けて揺るがない魂、みたいな。

―― 好きなモビルスーツはありますか?

森口 えーと、かわいいなと思ったのはハロですね(笑)。エンディングの詩を書くときもそうですし、オープニングを歌う前もそうでしたが、今回のゲームの絵コンテをいただいたんですね。平面に描かれているはずの絵がすごく立体的で、色も鮮やかでして。その世界にすっと入っていけるようなリアルな絵でしたので感動しました。「ゲームの世界でこんなにリアルに、立体的に表現できるんだ」と。曲ができてからオープニングとエンディングのシーンを作ると言うことも聞きまして、世界観がよりいっそうふくらむな、とうれしかったです。

後藤能孝氏(以下、敬称略) ただ、まだできあがっておりません……(一同笑)。

広野 早めにくださいとお願いしちゃったりもしましたが……(苦笑)。

森口 ただ、曲にただ絵をを当て込むのではなくて、そうやって作ると世界観が相乗効果で広がりますよね。ボーカリストとしてはうれしいですね。

広野 開発の現場では口ずさみながら作っているそうです。

森口 うれしいですねー。それは。

―― 今回イベントで「水の星へ愛を込めて」を歌われたのを聴きましたが、デビュー当時の歌い方とは違って、歳月を経て音に厚みが加わったように思いました。

森口 昔の曲を聴くと声が若いなとは思いますが、その時々の自分の、正直なありのまますべてで歌えたらいいなと思いますね。それが生きてきた証しというか。ですのでそう言っていただけるのはうれしいです。ただ、昔の歌い方のものまねはできるんですよ(とものまね。一同爆笑)。

広野 そうなんですか!? 知らなかった(笑)。

後藤 森口さんの歌は、うちのスタッフも仕事をさぼって聴いていましたね。わたしは「ブース立てよ」とか思っていましたが(笑)。

広野 でもスタッフのみんなも、この会社入ってよかったと思ってますよ(笑)。

森口 ガンダムは本当に影響力のある作品ですよね。取材に来てくださっている皆さんもそうですし、現場で携わっている方もそうですが。TVやドラマ、コンサートに行くと「ガンダムファンです」という人に必ず会います。どの現場に行っても。そんな、社会現象にまでなった作品に参加させていただけるのはうれしいですね。わたしの人生を変えた作品なので、一生大切におつきあいしていきたいです。デビュー曲もそうですし……、ガンダムがなかったらいまわたしはここにいないですから。皆さんと一緒に歩んできたという気持ちはありますね。

―― オープニングテーマ曲をイベントで初披露された感想はいかがですか?

森口 サプライズでの登場でしたのですごくどきどきしていましたが、皆さんていねいに受け取ってくださっているのが分かって。大きく盛り上がるとかじゃなくて、じっくり受け取ってくださっている感じがしまして。レコーディングは終わったんですが、もっと自分の中で進化させて、成長させていきたいですね。

―― ライブなどで歌われる予定はあるんでしょうか。

森口 わたしの中では、今年のメインですね。12月にライブをやるんですが、タイトルとしていつも「Song for you」と付けているんですが、今回は「Vol.3 もう1つの未来」と入れました。今年の一番の核となるメッセージですね。

―― ライブなどで歌うときと違って、東京ゲームショウの会場はいろいろな音であふれていますが、大変ではないですか?

森口 来てくださっている方は思い入れが深いじゃないですか。どんなに違った音が鳴っていようと、どんなに違う時間が流れていようと、ここの時間は確固たるものがあるということを、現場に行ったら感じるんですね。なのでわたしは、どこで歌っていても変わらないです。

 それこそ昔はスーパーの入り口で歌っていたときもありましたが(笑)、わたしはどんなところでも歌えることがうれしくて、それを聴いてくださる方が1人でもいてくださるのは、「お互い生きてるね」という感じがする瞬間なんですね。それは作品作りの喜びとも違う、エネルギー交換の場でもあったりするので。ほかの音が鳴っていようと、雨が降っていようが、(歌うときに)普段着でいたとしても、魂は変わらないですね。生きている証しという感じがしますよね。

―― 開発の側から“熱い要望があった”とお聞きしたのですが、具体的にはどのような“熱いメッセージ“があったんでしょうか。

森口 わたしが普段伝えたいこととか考えていることとすごくリンクしていたので、難しいとか、困ったということが本当になくて。「いいのね? いいのね? 思いのたけを書いて!」という感じでした(笑)。たがが外れていいんですよね? という。

広野 よかったですほんとに。

後藤 ガンダムっぽいキーワードをとりあえず挙げてみようと書いたんです。

広野 「オープニングは壮大で勢いのある感じでがーっと」とか。

後藤 素人が素人のまんま言いたいことを言ったという。言うだけ言ってあとで怒られようと思った(笑)。

森口 いや、でも分かりやすかったですよ! オープニングはゲームを始めるときなんで、やる気になるというか、自分の中野ボルテージを上げるための分かりやすい曲で、エンディングは去っていくものへの賛辞だったり、レクイエムだったり。そこには愛とか信念、変わらない人間愛みたいなものを持っているということは日常的にもありますよね。

 生きていたら突然親が亡くなったりすることもあるし。人から人へのバトンタッチでわたしたちは生かされているということを素朴に感じて書けたので。いろいろな命が無条件になくなっていくいまという時代は、心が痛いですよね。それを止めるということもあるし、やむを得なく去っていく命には、絶対に何かメッセージがあると思うんですよ。その「さよなら」を無駄にしたくない。そのおかげで残っているわたしたちは生かされているということを感じながら、日々を生きたいと思います。

画像

―― 最後に、このテーマ曲を聴くファンへメッセージをお願いします。

森口 はい。ソフトを作ったスタッフの皆さんもそうですが、この楽曲を作るに当たっては、本当にいろいろな方が魂を1つにして作った作品なんですね。レコーディング現場にもプロデューサーの皆さんに来ていただいたり。わたしもレコーディングはもちろんですが、オケ録りからミックスからトラックダウンまで全部参加しまして。レコーディングなのにまるでライブであるかのようなスタジオでした。そういうみんなの思いが「一音入魂」でできあがりましたので、是非ゲームとともに、新しい曲をかわいがってください。クリアするとエンディングが聞けます!

 新曲は11月28日に発売されます(マキシシングル。税込1050円)。

後藤 (ぼそっと)70時間くらいかかるんですけどね……。

広野 仕様として、すぐにエンディングが聞けるようにするかもしれませんが、それは今後の話、ということで。

後藤 あとは「機動戦士ガンダムOO」でCMが流れる予定です。あとはゲームが11月29日に発売されますので。

森口 間に合い……ます(笑)。

後藤 と、力なく広野プロデューサーが語っていたということにしてください(笑)。

広野 いえいえいえいえ。魂を込めて語っています、と。

森口 でもスタッフの方は本当にガンダムを愛して作っていらっしゃるので。「お仕事だから(作る)」というものじゃないというのは、ファンの方にも伝わると思いますよ。集大成のソフトになっているので、一生かかっても楽しめるとおっしゃってました。

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