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王女と灰の戦士たちがくり広げる、美しく幻想的なストーリー「ASH 〜ARCHAIC SEALED HEAT〜」レビュー(2/2 ページ)

「ファイナルファンタジー」シリーズのプロデューサーとしておなじみの坂口博信氏の最新作はこだわりのSRPG。亡国の王女に率いられた灰の戦士が剣を取り運命に立ち向かう。美しく幻想的な世界観に魅了される。

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RPG寄りの戦闘システム

 本作は、章立てのステージクリア型・ターン制SRPG。外見はオーソドックスだが、RPG戦闘の要素も加わり、オリジナリティある仕上がりとなっている。

 一番の特徴は3人1組のチーム制を採用している点。行動の基本となるアクティブポイント(AP)はチーム全員で共有し、誰か1人でも敵の近くに行き、「たたかう」を実行すると、3人パーティのRPG戦闘が始まる。だから、チーム内の1人だけを突撃させて、3人で戦うというのも有効な作戦だ。ただし、他のメンバーがあまりに離れている場合は、攻撃力が弱まったり、技が使えなかったりする。どのくらいの距離で攻撃を仕掛けるかが作戦のポイントとなる。

 プレーヤーが戦闘を始めた場合、敵・味方、どちらかが全滅するか、チーム全員が逃げ出すまで続く(敵から攻撃された場合は1ターンのみで終わる)。SRPGでは、ほとんどが1回攻撃なので、敵のHPを削るためダメージ覚悟で飛び込むという戦法もあるが、本作ではしっかりと必勝態勢を取って攻撃に出ないとひどい目にあう。

 その代わり、APはチーム全員で共有しているため、もともとの量も多く、行動の自由度は高い。やり方によってはミッションのスピードクリアも可能だ。速くクリアすればするほどランクが高くなり、いい武器ももらえる。

 SRPGの醍醐味のひとつである、敵と味方ががっちり組み合い、一手一手を詰め将棋的に進めていく楽しみとは、少々趣が異なり、新鮮なプレイ感覚が待っている。既存のSRPGのつもりで遊ぶと、勝手が違うと感じるかもしれない。

画像 上から見下ろすタイプのマップ画面。目的地のマス目をタッチすると移動してくれる。色の暗い部分へ行くほど消費APは増える
画像 このタイプのSRPGでは集団戦闘は珍しい。攻撃するとモーションの演出が入るのは、丁寧な作りだがテンポが遅くなる一因でもある
画像 ダメージを与えたり、受けたりするとEXゲージが貯まり、MAX時、特定のキャラは必殺技を発動できる。このエフェクトは必見!

パーティメンバーを練る面白さ

 フィールドに出られるのは通常3チーム、合計9人のユニット。1チームは、アイシャやダンなどリーダーユニットと2人の灰の戦士で構成される。一般兵にあたる灰の戦士の職業は以下の7種類。パーティの編成にプレーヤーのセンスが発揮される。先ほど書いたが、移動性能や攻撃のレンジ、また、本作ではかなり有効な地水火風の属性攻撃を考慮して選びたい。

ホワイトマジック

 白魔法を得意とする女魔法使い。回復もさることながら、防御力をアップする「シェル」の使い勝手がいい。ただし物理攻撃には弱いので、前線は避けるほうがよいだろう。

ブラックマジック

 黒魔法のエキスパート。地水火風の4属性すべての攻撃魔法を使いこなせる存在は頼もしい。長距離攻撃がOKなので、後衛役には欠かせない。

バトラー

 防御力重視の戦士。攻撃後に防御力がアップするスキル「ストーンウォール」、敵から狙われやすくなるアビリティ「ウォークライ」を習得すれば、戦闘の流れが読みやすい。

アイテマー

 物の能力を最大限に引き出すアイテム使い。使い方によって回復役にも砲兵にもなる万能型だ。複数の敵に打ち出す「アイテムワイド」は、苦手属性を突ければ強力。ただ、弾にはお金がかかる。

スティーラー

 素早さが高い格闘家。攻撃すると物を盗むことがある。打たれ弱いが移動時の消費APが低いので長距離攻撃型と組み合わせたい。「××へ到達せよ」という到達ミッションでも力を発揮する。

ロングソード

 双剣を振りかざし、複数攻撃が得意な剣士。防御力無視の「ガードスパイク」、直接攻撃にしては射程が長い「バックスパイク」が役に立つ。魔法で属性を付与して戦うと強力だ。

モンスターマジック

 支援魔法のスペシャリスト。HPやMPを毎ターンごとに自動回復する「ジェネレ」系魔法は作戦の生命線となりうる存在。各マップの最初に各チームにかけまくろう。

 灰の戦士はチーム編成画面で、いつでも召喚可能。この段階ですでに戦いは始まっている。安全性重視ならホワイトマジックは入れておきたいが、それでは攻撃力が弱まりクリアまで時間がかかる。うまい組み合わせを見つけて、いかにターン数を減らすか。これを考えるとがぜん面白くなってくる。

画像 使い方次第ではある意味最強となるアイテマー。アイテムをどのように使うか、考えるのが楽しい職業だ。ただし金食い虫でもある
画像 かわいい顔して手癖が悪いスティーラー。移動距離の長さは天下一品で、アイテム回収にはもってこい。このゲームの柔軟性を象徴する職業だ

はかなくも残酷なシステム・エンゲージ

 ある程度章が進むと出現するエンゲージは、灰の戦士が持つスキルをリーダーが吸収するというもの。リーダーと一緒に出撃すると上がる「忠誠心」が一定以上あれば意志を受け継ぐエンゲージが可能になる。

 ホワイトマジックの回復魔法「ヒール」、敵スキル発動を阻止する「アタックキャンセル」、攻撃時、敵から物を盗める「スティールアタック」など、役に立つスキルは多い。エンゲージすると、リーダーはスキルを覚えるだけでなくパラメータも高まってパワーアップする。

 どんどんやりたいところだが、デメリットもある。スキルに熟練度があり、せっかく灰の戦士を鍛えて強くしたのにリーダーには引き継がれない……。それと、ともに戦った愛着ある兵士が消えてしまうのはちょっと寂しい。冷たいようだが、スキル吸収用の兵士と、熟練度を高めて長く付き合う仲間を分けるのがいいかもしれない。エンゲージは、育成と合成とスキルの編成、3つをうまく混ぜ合わせた作りになっている。

画像 灰の中から命を失った戦士たちが蘇る。エンゲージするか、じっくり育てるか。悩みどころだ
画像 エンゲージして覚えるスキルは最大3つ。また、スキルだけではなくパラメータも変化する。どうリーダーを育てるか?

不満な点はあるものの“いぶし銀”の味にはまる一作

 操作はすべてタッチペンで行う。敵を複数選択するのが楽、といった便利な面もあるが、マップ上のユニットが細かく、タッチしづらさも感じた。慣れれば解消するとはいえ、操作の部分はもう少し練れたのではないかと思う。

 もうひとつ不満な点を挙げるなら、戦闘のテンポがややもったりとしている。攻撃時、アイシャたちのモーションはキレがあって格好いい。しかし、戦闘が多いため、同じモーションを何度も見せられるとさすがに飽きてくる。敵も同様にモーションを取り、複数攻撃の場合は1体1体ダメージを受けている演出が……。モーションカット機能があってもよかったのではないだろうか。

 ほかにもデータの表示の仕方など、気になる点もあるが、これがオリジナルの1作目と考えるとクオリティは相当高い。新しい戦闘システムに挑戦しているので、プレイするほうも、これまでの感覚で結論を急ぐのではなく、じっくり付き合ってあげたいところだ。いろいろ工夫して遊んでいるうちに、ジワジワといぶし銀の味が出てきて、深みにハマっていく。万人受けするとは言いがたいものの、じっくりと腰を据えてプレイしたい向きにはまちがいなく良作といえるだろう。

(C) 2007 Nintendo / MISTWALKER


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