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人とドラキュラとの壮絶な戦いのクロニクル――リメイク作品の進むべき方向を示す「悪魔城ドラキュラ Xクロニクル」レビュー(4/4 ページ)

その重厚な世界観や耽美な登場キャラ、優れたバランスなどで変わらない人気を誇る「悪魔城ドラキュラ」。そのシリーズ最新作となる、「悪魔城ドラキュラ Xクロニクル」が登場する。ひと足先にエンディングまでプレイし、リメイク作品の正統進化を確認した。

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オリジナル版よりも見やすく、より遊びやすくなったリメイク版

 では実際に、ステージ0から物語を追いかけつつ、オリジナル版との差異などを中心に見てみよう。

 ステージ0は、リヒターのみのシーン。悪魔城へと乗り込む場面で、死神と戦う。パッと見た瞬間に、オリジナル版と比べて奥行きのある背景になっているため、非常に臨場感がある。さらに、PSPのワイド画面に合わせて表示されるエリアが広いため、常に広範囲を見渡せることも大きい。このシリーズは、常に敵の出現位置や行動を確認して、先読みしながら攻撃を仕掛ける必要があるだけに、見える範囲が広いというのは大きい。これもまた、オリジナル版と比べて本作がプレイしやすくなっている部分だろう。なお、死神の鎌を破壊すれば骸骨弾を放って逃げていき、本編スタートとなる。

分岐点は分かりやすい場所にあるのだが、人間の盲点をついているために気づかないことが多い

 ステージ1は、炎に包まれた街が舞台。基本的な操作方法を覚えるのが、このステージの目的だ……が、他のシリーズと大きく違うのは、各面に分岐点が用意されていることだろう。ここも例外ではなく、中盤には隠された分岐点が存在する。このステージでは、リヒターでもマリアでも’(ダッシュ)の付く裏ステージへと進めるが、マリアでなければ裏ステージにたどり着けない面も存在する。ただし、一度どちらかのキャラで裏ステージへアクセスすれば、別キャラクターでのプレイも可能になるので問題ないだろう。

 プレイしていて感心するのは、その描画の細かさ。燃えさかる炎もそうだし、立ち上がる水しぶきなども、本当に良くできている。敵のやられる様も細かく描かれており、極論するならばドット絵のポリゴン版、ともいえる緻密さだ。オリジナル版のクオリティもかなりのものだったが、今作はそれを遙かに上回っていると言い切ってもいいだろう。これは全ステージに共通しており、とにかく芸が細かい。

 ステージの最後にはボスが待ち受けているが、PSP版では新たにムービーが挿入されるようになった。また、オリジナル版ではセルアニメだった部分は、すべてCGムービーへと置き換えられ、ゲームの全体的な雰囲気に合わせられている。今では、ゲームもハイビジョン映像が当たり前になっているため、プレイステーション 3やXbox 360での映像を見た後だと物足りなさを感じるかもしれないが、あくまでもムービーはオマケであることを考えれば、必要以上に凝っていない現状くらいがちょうど良いのかもしれない。

 なお、ボスは素直に進めばワイバーン、分岐ルートを通るとサーペントとなる。ボスを倒せば魔力の玉が出現し、それを回収すればステージクリアとなる。ところが、一部のボスは死ぬ間際の反撃を食らわせてくるので、最後まで気を抜かないようにしよう。この攻撃で死ぬことはないものの、ノーダメージであれば1アップするので、こんなところでダメージは受けたくないもの。オリジナル版と比べると、いくぶんか最後の攻撃も避けやすくなっているので、涙を飲んだ人でもリベンジを果たせるだろう。

緻密に描かれた背景や細かな動きをするキャラに、技術の進歩を感じる
プレイ中も、随所にCGムービーが挿入される。が、見入っているとピンチになるのでほどほどに
最初のボスだけあって、難易度は高くない。落ち着いて戦えば、すぐに倒せるはず

古くからのドラキュラプレーヤーなら、このシーンで過去シリーズを思い出すだろう

 無事にクリアすれば、ステージ2または2’の開始となる。どことなく見たことがある光景だな……と思った人は、古くからのドラキュラプレーヤーだろう。モデルとなっているのは、ファミコン版「悪魔城ドラキュラ」のステージ1だからだ。懐かしい背景に「VampireKiller」をBGMとして先へ進んでいく。なお、ステージ2のどこかにはさらわれたマリアが捕らえられていて、彼女を助けるとマリアプレイが選択できるようになる。特に難しくもないので、すぐに見つけることができるはずだ。そのシーンも、オリジナル版ではセルアニメだったものが、CGムービーへと変更されている。オリジナル版もいいが、やはりCGムービーの方がしっくり来るのは、全体的な雰囲気からだろう。

 このステージ以降、全体的に言えるのが画面の見やすさだ。オリジナル版をPSPでプレイすると、どうしてもPSPクオリティ液晶のために残像が残り、敵がどこにいるのか分からなくなることが多かった。しかし、リメイク版である本作ではそのようなことがないため、きわめてスムースにプレイできた。もっとも、PSP-2000を所有している人ならば、家庭用テレビに映し出せば解決できることだけに、それほど深刻な問題ではないが……。オリジナル版がテレビに映し出すことを考えて作られているだけに、こればかりはしょうがないだろう。

 ちなみに、ステージ2’にはショートカットできる場所が存在し、そこを通ればボスと戦うことなくステージ3’に進めてしまう。見つけるまでは大変だが、場所はオリジナル版と同じなので、覚えている人は進んでみよう。

 ステージ3では、ドラキュラシリーズではお馴染みの、壁から骨が生えているドラゴンが登場する。オリジナル版では非常に手を焼いたが、リメイク版では難易度調整が入ったようで、明らかに簡単に突破できた。正直な話、オリジナル版をプレイしていて、何度PSPを投げ捨てそうになったか分からないほどだっただけに、これはうれしい変更だ。また、ステージにはPCエンジン版の「血の輪廻」や、プレイステーション版「月下の夜想曲」が遊べるようになるアイテム、曲などが隠されている。それらを集めるのも、本作の楽しみの1つだ。さらに、このステージで流れる曲は、あの名曲と歌われた「BloodyTears」。否が応にも雰囲気は盛り上がるというもの。

ステージ2ボスはウェアウルフ。素早い動きに翻弄されず、地道にムチを叩き込もう
オリジナル版で煮え湯を飲まされた人も、今作なら苦労せずにクリアできるはず
ステージ3ボスはミノタウロス。最後のアッパーは、警戒していても避けるのは大変

数々の仕掛けが、プレーヤーの行く手を阻む。実際に、こんなのに当たったらタダでは済まないだろうが……

 ステージ4になると、難易度も少しずつアップしてくる。とはいえ、何度も繰り返しプレイすれば覚えられるので、“心地良い難しさ”といったところ。仮にゲームオーバーになっても、コンティニューすればステージのスタート地点からやり直せるので、問題ないだろう。オリジナル版と同じくコンティニュー回数がカウントされるので、増えるのがイヤだという人は、ゲームオーバーになったらタイトル画面に戻り、もう一度ステージを選び直せばOKだ。

 ステージ4’では急流の中、丸太に乗ってステージの最後まで流されながら敵と戦うシーンがある。オリジナル版と比べてリアル感、スピード感ともにアップしているため、プレイしていて気持ちよささえ感じるほどだ。このあたりからも、リメイクに費やした心意気と時間が分かるというもの。

 また、例によって壁にはさまざまなアイテムが隠されている。リヒターなら肉、マリアならアイスクリームなど、回復アイテムが出現することも多いので、怪しいと思った場所は隅から隅まで攻撃してみよう。回復アイテムも、オリジナル版と比べると、より美味しそうになっているので、ゲットしたときのうれしさもひとしお(笑)。思わず耳に効果音が入ってきそうなほど、よく描けている。このような細かいところ1つにも職人技が光っていることに、毎度ながら感心してしまう。正しいリメイクというのは、本作のようなことをいうのだろうと、しみじみ思ってしまったほどだ。

ピンチに陥ったとき、肉のありがたみがよく分かる。今作ではパッと見で、レアっぽい焼き具合になっているような気がする?

 2ステージ構成の最後となるステージ5は、通常通りに進むと、最後に死神との戦いが待っている。シリーズ恒例の相手であり、ある意味ドラキュラシリーズ主人公永遠のライバルかもしれない。毎度ながら、鎌を飛ばしてくる攻撃は手強く、一筋縄ではいかない。途中までダメージを与えると、パフォーマンスを見せた後に自らが攻撃してくるのだが、そのシーンでの迫力は、オリジナル版以上に良くできていたため、思わず見とれてしまった。

 当時としては、オリジナル版の演出も凄かったのだろうが、本作を見てしまうと、それもかすんでしまう。ムービーを使わなくとも、ここまで凝れるのかと感心してしまった。ちなみに、ステージ5で一度死神を倒していれば、4’から5’へと進める。最後には、オリジナル版にはいなかったボスが出現するが、死神ではない。かなりの強敵であることは間違いないので、覚悟を決めて戦いに望みたい。非常に苦労させられた、とだけ記しておこう。

 ようやくたどり着いたステージ6では、ボスと順番に戦っていく。最初はクリア不可能に思えるものの、コツをつかむとほとんどダメージを受けずに最初の4ボスは倒せてしまえる。どうしても倒せないときは、メニュー画面でテクニックを選び、お金を払ってボス戦を戦う様子を見てみると良いだろう。その技術に、思わず唸ってしまうかもしれない。

 最後に登場するのは、悪魔神官シャフト。PCエンジン版より、さらにリアルな攻撃をしかけてくる。とはいえ、やはりオリジナル版よりも若干ながら簡単になっていると感じたので、あまり苦労はしないはずだ。だが、ここで彼を倒しても、物語は終わらない……。

 「月下の夜想曲」にも同じような構成の場面がある、ステージ7。シリーズお馴染みの時計塔を舞台に、敵との死闘を繰り広げていく。一つ不思議だったのは、PCエンジン版ではステージ後半にアネットが捕まっているのだが、本作では同じ場所へ行っても敵が出てくるだけだったこと。果たして、彼女はどこにいるのだろうか? 他にも何人かの女性が捕らえられているらしいが、残念ながら助け出せたのはマリアのみ。他のキャラがどこにいるかは、各人で探し出して欲しい。最後に待つボスが誰になるかで、その後の展開も変わってくるのだ。

 FINALステージと銘打たれたステージ8。先に「月下の夜想曲」をプレイした人であれば、ゲーム最初のイベントシーンを思い出すに違いない。そう、あの場面とまったく同じなのだから……。ドラキュラ伯爵も、オリジナル版と比べて戦いやすいと感じたので、アクションゲームが得意な人ならば、ほとんどダメージを受けずに倒せてしまうだろう。ただし、普通に倒したところで、最後にシャフトが現れてドラキュラ伯爵を助けてしまう。息の根を止めるには、悪魔城内に捕らわれている人物を全員助け出すことが必須となる。

ステージ6のボスとして登場するシャフト。避けることよりも、攻撃に専念すれば怖くない相手だ
アネットを助け出せるか否かで、登場するボスも変化する。プレイヤーは何者と戦うことになるだろうか
悪魔城の城主・ドラキュラ伯爵。攻撃方法は、お馴染みのワープなど。一度倒しても、恐ろしい形となり復活する

据え置き機で発売されてもおかしくないほどのボリュームは、お買い得感たっぷり

 リヒターのみで一直線にクリアしても、消化率は1/4程度。同じコースをマリアでプレイしたり、裏ステージをリヒター&マリアでプレイすることで、少しずつクリア率が上昇していく。100%にするまでは相当の時間がかかるので、長期間堪能できるゲームであることは間違いないだろう。

 なお、前述したように、途中で落ちているアイテムを回収することで、オリジナル版と「月下の夜想曲」がプレイできるようになる。オリジナル版はPCエンジン版を忠実に移植しているが、UMDのスピンアップが遅いため、時々声やBGMがずれてしまうのが惜しいところだ。もっとも、これはUMDというハードの物理的な影響なので、いかんともしがたいが……。それ以外の部分の移植度は完璧で、家庭用テレビに映し出してプレイすれば、PCエンジン版との違いも分からないほど。同時に、PCエンジンにて通常のCD-ROM(CD-ROM^2ではなく)にPCエンジン版「血の輪廻」を入れて起動したときだけに遊べた、あの「あくまぢょおどらきゅらぺけ」も収録されている。

当時プレイした人には、懐かしくてたまらないだろう。もちろん、アニメーションも声も当時のままに収録されている
偶然で見つけた人もいるかもしれないタイトル。リメイク版をプレイしていて、アイテムを回収すればいつでも遊べる

時間を吸い取られるように遊んでしまう危険性がある(笑)ので、ハマりすぎには注意しよう

 もう1つの「月下の夜想曲」は、若干ながら修正が加えられていて、条件を満たすとマリアでのプレイが可能になっている。こちらも長く遊べた1本だっただけに、マリアプレイだけでも相当の時間、楽しめる。

 それ以外にも、ステージ途中で回収したBGMを、任意ステージで鳴らすことが可能など、さまざまな部分で手が加えられていて、制作者が新しい面白さを提供しているのがよく分かった。それらが裏目に出ていないタイトルというのもまた珍しく、そういった意味ではリメイク作品の進むべき方向を示した、貴重なタイトルであるとも言えるかもしれない。

「悪魔城ドラキュラ Xクロニクル」
対応機種PSP
ジャンルアクション
発売日2007年11月8日
価格(税込)5229円
プレイ人数1〜2人
(C)1986 2007 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.


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提供:コナミ株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年11月18日

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