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やっとできました――「ロストオデッセイ」完成披露&オーケストラコンサート

マイクロソフトは11月19日、オーチャードホールにおいて「ロストオデッセイ」完成披露記者会見および「Orchestral Pieces from LOST ODYSSEY & BLUE DRAGON」を開催。スペシャルゲストも登場した。

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 マイクロソフトは、12月6日に発売を予定しているXbox 360用RPG「ロストオデッセイ」の完成披露記者会見およびオーケストラコンサート「Orchestral Pieces from LOST ODYSSEY & BLUE DRAGON」を渋谷のオーチャードホールにおいて開催した。

 「ロストオデッセイ」完成披露記者会見では、制作総指揮の坂口博信氏をはじめ、作中に挿入されるエピソードシナリオを担当した重松清氏、そしてサウンド担当の植松伸夫氏が登壇。キャラクターデザインの井上雄彦氏からはビデオコメントが上映された。また、スペシャルゲストとして、キャラクターボイスを担当した俳優の豊川悦司さん、豊原功補さん、上原多香子さんも登場した。


途中、チーム崩壊の危機を乗り越え、完成にこぎつけたと坂口氏

 「ロストオデッセイ」のオープニングムービーから始まった完成披露記者会見では、坂口氏が「約3年半かけて制作してきましたが、正直途中でチームが崩壊する危機もありました」と衝撃発言。この危機から救ったのは井上氏のイラストや重松氏のストーリー、そして植松氏の音楽をはじめとした多くのスタッフのおかげだと、改めて完成したことへの感謝を述べた。キャラクターボイスも役者そのものが生きたものとなり、徐々に完成していくにつれ自信を深めたと明かす。

 その後、坂口氏は完成した「ロストオデッセイ」を実機でデモプレイすることに。実は坂口氏、Xbox 360 Briefing 2007の際のデモプレイでおもわず敵に全滅させられるという失態を冒している。坂口氏はその時のことを引き合いに出し「前回は戦闘で負けてしまい、ネット上で叩かれまして。だから今日はちょっと事前に強い魔法を仕込みました」と、あけすけなくズルをしての戦闘となった。功を奏してか、戦闘では危なげなく(実は途中ちょっと危ない場面はあった)派手な魔法を使って勝利して見せた。ここではストーリーの流れと戦闘がシームレスに気持ちよくつながっていくように気をつけたと坂口氏は、カメラワークを含めた演出面について本作の要点を語った。

 その後は「千年の夢」のシナリオを担当した重松氏と、音楽を担当した植松氏も加わり、長き制作期間中の話に及ぶ。2人とも完成して感慨ひとしおといった感じで、互いにようやくできたという想いなのだとか。特に重松氏はキャラクターデザインが井上氏から上がってきて以来、常に執筆するPCの壁紙には主人公のカイムが設定されており「あのするどい目つきに睨まれながらの3年でした」と、一時は完成するのかと悩んだ時期もあったと苦しかった心境を吐露した。

 「人間を描きたい。今までのゲームと違うものにしたい」という坂口氏の殺し文句にやられたという重松氏は、「当初自分の作品とゲームとの相性はそれほどよくないのではないかと不安だった」と明かす。しかし、坂口氏をクリエイターとして尊敬しており、かつ小説が1人で取り組むことに対し、みんなで創り上げるという作業だったことが新鮮だったし、プレッシャーもあって、今はやってよかったと振り返る。植松氏は坂口氏との長い付き合いからか、逆に重松氏にお願いしたことに「なるほどな」と納得できることだったとのこと。

 「ゲーム=悪」のような偏見がまだある現状を早く打破したいと語る植松氏は、音楽について「千年死ねないという設定を考え続けて、今回の音楽を生み出しました。そのため明るいテーマは書けなかったが、坂口さんの女性のボーカルを入れたいという希望を受け、母親の声に聞こえるようなやわらかい愛に包まれる曲に仕上がった」と、重くならない工夫のほかさまざまな実験を施している自信作と胸を張る。坂口氏も気持ちは同じで、「今回は同じ曲が別の場所で多用されてもなんの違和感もない」と絶賛していた。

「Xbox 360 Briefing 2007」での悪夢が蘇る……。というわけで、今回はちょっとズルをして強力な魔法を仕込んだ(笑)
ロビーで先行発売している重松氏の新刊について触れ、井上氏のイラストをあいまって、ゲームとは違う雰囲気を醸し出していると絶賛する
キャラクターデザインを担当した井上氏からは、「いよいよ完成ということで、僕自身も作ったキャラクターがどのように育っているのか、とても楽しみにしています」と、映像でコメントが寄せられた

キャラクターボイスを務めた豊川さん、豊原さん、上原さんの3人も合流。豊川さんは役柄について聞かれると「ていねいに演じることを心がけた」と語り、豊原さんは「ダイナミックで楽しい仕事をさせてもらいました」と楽しんだ様子。上原さんも「ゲームは初めての経験で壮大な作品に参加でき光栄です」と、キャラクターをつかんだ様子

 最後にスペシャルゲストとしてキャラクターボイスを務めたカイム役の豊川悦司さん、ヤンセン役の豊原功補さん、サラ役の上原多香子さんが登壇。「ロストオデッセイ」に声優として参加したことについて、どのような心構えであったかなどに応えてくれた。

 主人公のカイムについて聞かれた豊川さんは「最初にシナリオをいただいた時に、映画にしたくなるくらいのすごく深いドラマとダイナミズム、エンターテインメント性がミックスされていて、自分が芝居をするつもりやらせてもらいました」とコメント。千年死ねないという主人公の苦悩を難しいと前置きし「僕はきちっと死んでいきたいですね。人間らしく。死なないと生まれてきた意味がないような気がして」と語った。

 制作過程でアドリブが際立ったと紹介された豊原さんは、「キャラクタが人間臭くて、暴れ回るヤンセンは、非常によくしゃべるキャラクタなのですが、ヤンセンが2行しゃべると、カイムが『……』、ヤンセンが2行しゃべるとカイムが『……』、ヤンセンが3行しゃべると、カイムが『あぁ』と。非常に不公平感があって、報酬はいったいどうなっているんだと気になりつつやってました」と会場を笑わせる。豊原さんは収録の際、英語版を担当した俳優がアドリブを多く入れていることを知り、では自分もとアドリブを多用したのだとか。なお、イベントに合わせてヤンセン風で登場したのだそうだが……似てる! 夕べの酒も残っているとのことで、キャラクターとの親和性は抜群なようだ。

 カイムと同じく、千年死なないという設定のサラを演じた上原さんは、「想像はつかないけど、サラと同じく運命を素直に見つめて、ワタシなら後の人のために書き物をしていきたいかな」と発言。「カイムとヤンセンだったら、どちらが好みのタイプ?」という司会からの質問に「サラは役どころでもカイムを愛していますし、無口なんだけど男らしい姿に惹かれます。ワタシも感情移入してしまいますね」と、隣のヤンセン役の豊原さんが悔しがる場面も。

 プロモーションムービー上映後に坂口氏は、「生まれた我が子という感じです。制作が終了し、この間ディスクが届いたのですが、改めてプレイしてみると、改めてやってみる価値のある作品だと感じました」とアピールした。



 記者会見後には、Xbox 360用RPG「ブルードラゴン」と「ロストオデッセイ」の楽曲をオーケストラで演奏する「Orchestral Pieces from LOST ODYSSEY & BLUE DRAGON」を開催。吉住典洋氏の指揮のもと、日本フィルハーモニー交響楽団によるフルオーケストラコンサートが開催された。コンサートは中山博之氏の編曲の元、前半「ブルードラゴン」の楽曲を、後半は「ロストオデッセイ」の楽曲を演奏する2部構成で進行。「ロストオデッセイ」では、コーラスに国分友里恵さんを迎えてそれぞれ各タイトル7曲が演奏された。演奏された曲目は以下のとおり。

第1部:「ブルードラゴン」

  • 01:「水辺」
  • 02:「嘆きの鐘〜地鮫が来る!〜危機のメドレー」
  • 03:「大地を進め」
  • 04:「洞窟」
  • 05:「笑顔」
  • 06:「剣聖師団」
  • 07:「Blue Dragon Main Theme」

第2部:「ロストオデッセイ」

  • 01:「メインテーマ」
  • 02:「戦場」
  • 03:「暗闇の放浪者」
  • 04:「大航海」
  • 05:「強敵出現!」
  • 06:「Eclipse of Time」
  • 07:「What You Are」

 なお、なりやまない拍手を受け、ラストにはアンコールも演奏された。本邦初公開のバージョンで植松氏も「貴重なので隠し撮りしてらっしゃる人がいたら、YouTubeにでもアップしておいてください」とリップサービスするひとコマも。これには会場も大爆笑で、演奏自体も和やかな時間を過ごすことができた。「ブルードラゴン」を聞き、ゲームの各シーンを思い出し、「ロストオデッセイ」を聞きまだ見ぬ世界に思いを描く……。来場者も寒気もどこ吹く風、ほっこりとした気持ちで帰えることができたようだ。

いまだ発売前の楽曲のコンサートというのは珍しいと植松氏が言うとおり、実に幸運な来場者たちである
会場ロビーでは重松清氏の「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢」の先行発売を行っていた。11月20日発売。価格は1680円(税込)
また、試遊台も2台展示。休憩時間に遊ぶ姿も見られた

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