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これからどうなっちゃうの? 2008年ゲーム市場くねくねハニィの「最近どうよ?」(その20)(2/2 ページ)

気がつけば20回目。2008年最初のハニィは、今年のゲーム市場をグローバルな視点で考えてみました。あくまでもハニィ的な視点ってことをお断りしておくってことでよろしこ。

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ソフト

 家庭用ゲーム機向けで一番売れたソフトはなぁに? と聞かれれば、Xbox 360向け「Halo 3」 (マイクロソフト)の482万本。2位は「Wii Play with Wii Remote」(日本名:はじめてのWii)」(任天堂) の412万本、3位は11月に発売になったばっかりのXbox 360版「Call of Duty 4: Modern Warfare」(Activision)の304万本。話題性の高かった音楽ゲーム「Guitar Hero III: Legends of Rock」(Activision)はPS2版が272万本。そして、Wiiの「Super Mario Galaxy」 (任天堂)が252万本でした。

 お気づきの通り、マルチプラットフォーム展開をしているとプラットフォーム別に順位が出てしまうけど、同じシリーズでほぼ内容が一緒であれば、トータルの数字で表示すべきとハニィは思うのであった。ってことで、ハニィ独断プラットフォーム無視タイトルランキングを並べると、1位は「Guitar Hero 3」で587万本、2位は「Wii Play with Wii Remote」。3位はやっぱり強い「Halo 3」、4位は「Call of Duty 4: Modern Warfare」で400万本、5位が2006年末に発売された「Guitar Hero 2」が2007年も好調で342万本ということになるかしら。

〜参考:マルチプラットフォームタイトルの詳細〜

タイトルXbox 360版PS3版PS2版Wii版合計
「Guitar Hero 3」(Activision)149万本43万本272万本123万本587万本
「Call of Duty 4」(Activision)−304万本96万本400万本
「Guitar Hero 2」(Activision)153万本189万本342万本 
「Assassin's Creed」(Ubisoft)187万本78万本265万本
「Rock Band」(MTV Games)78万本25万本10万本113万本

 「大型のタイトルはマルチプラットフォームが基本になりつつある」ってことだね。上記の通り、次世代機向けに作ってみると圧倒的にXbox 360の売れ方がいいわけで、ソフト開発の際に「PCまたはXbox 360で開発してから、他のフォーマットへ移植する」って流れは止められないかもね。コントローラやスペックが大きく違うWiiは、ある意味別格なので、イチから作らざるを得ない。という意味では、「PCまたはXbox 360で開発してから、PS3またはPS2へ移植する」が、正しい表現なのかもしれないっす。

 上記の開発の意味でもPS3の劣勢は触れなきゃいけないところ。ソニープラットフォームで年間ソフト売上ベスト10(2007)入りしているのは2つで、いずれもPS2向け。「Guitar Hero III」(272万本)と「Guitar Hero 2」(189万本)。残念ながらPS3向けでランクインしているソフトはないのだ。マイクロソフトが自社フォーマットXbox 360の独占タイトルをたくさん売っているって状況に加えて、マルチプラットフォーム化されたサードパーティタイトルにおいても、PS3版に大きく水をあけて本数を稼ぎ出している。キラータイトル不在とサードパーティタイトルの販売本数の少なさは、SCEにはダブルで痛いところ。

 4月29日に発売されると発表のあった「Grand Theft Auto IV」が初のマルチプラットフォーム化(Xbox 360とPS3に向けて開発中)をするのですけど(ホントは2007年年末商戦に発売される予定だったけど遅延していた)、今まではPSフォーマットのみのリリースだった本作品の販売本数シェアが今後の北米におけるPS3 vs Xbox 360の新たな試金石になるのではないかと考えられます。

 ハンドヘルド向けソフトのランキングはほぼニンテンドーDS向けソフトが独占。ポケモンの「Diamond」(248万本)と「Pearl」(176万本)や、「ゼルダ」、「スーパーマリオ」、「マリオカート」などなど余裕のミリオン超えをしておりますね。その中で、2005年に発売された「nintendogs」はいまだに売れ続けていて、4種類あわせて2007年だけで194万本、累計で555万本を達成していますの。トップ10を見てみるとほぼすべてが任天堂タイトル。サードパーティさんは毎月ランキングにほとんど見られません。

 では、PSPのソフトは売れてないのか? 確かに一見売れてないように見えます。ランキングに入らないためか「PSPソフトは売れない」ってイメージと、オリジナリティがあまり多く見られないため、キラーが生まれにくいってこともあるみたい。実際に2007年、PSPで一番売れたソフトは「Madden NFL '08」(52万本)で、ミリオン続出のニンテンドーDSと比べるととても売れてないイメージがあるけど、でも実際はソフト装着率(ハード1台あたりのソフト購入率)を見てみるとニンテンドーDSが約4.5本、PSPが約4.0本なんですね。ってことはあんまり変わらないのだ。

 つまり、ニンテンドーDSは売れるソフトはものすご〜く売れる(ミリオン超連発)けど、まったく売れないソフトがたくさんある。PSPはバカ売れしないけどそこそこタイトルがひしめいている。ソフト提供者にとって、ニンテンドーDSは大博打、PSPはローリスクローリターンなんですよ。

ハード三つ巴のゲーム市場! どうする日本のソフト開発!

 前にも言い訳した通り、欧州に関しては実情が把握できない状態なんだけど、いろいろなパブリッシャーの方々のお話を聞いた結果を書いてみようかと。ステレオタイプでごめんなさいね〜。

 英国ではほぼアメリカと同じ状況が起こっている模様なのですわ。Wii不足、Xbox 360が人気であるってところかな? でも、欧州全体ということで見てみると、ソニーというブランドへのロイヤリティの高さが際立つんですよ。「どんなに値段が高かろうとどんなにソフト不足だろうと、ソニーを選ぶ!」と断言しているラテン系の人もいたわ(笑)。

 実際はどうなのかというのは検証のしようがないのだけれど、PS3が一番好調な市場ってことは言えるみたいね。検証してみると、「MotorStorm」や「Resistance」などファーストパーティタイトルはほぼミリオンに近い数をたたき出しているし、お膝元UBIソフト(フランスの会社なので)の「Assassins' Creed」に関しては、明らかにXbox 360版よりもPS3版のほうが売れている! サッカーソフトがEAやコナミからも発売(EA:FIFA、コナミ:Pro Evolution Soccor)されているから、サッカー好きのヨーロッパでは結構キラーにはなったはずですしね。

 大雑把な情報で申し訳ない……。しかし、ソフト開発の危機管理としては最悪のシナリオを準備せざるをえないわけ。最悪のシナリオとは何かって? 各テリトリーが別々に動くということでしょう。極端なことを言うと、日本はWii、北米はXbox 360、欧州はPS3がメインのハードになる。つまり、各市場バラバラのアプローチが必要になるという仮定をすると、どうやって戦略を書くのか? いや、どうやって生き残っていくのか? ということを考えなければならない。

 マルチプラットフォームが鍵なのか? マルチプラットフォーム展開するにはそれなりの規模と投資が必要になるから、ある程度大きなリスクを伴いますね。中堅のパブリッシャーやデベロッパーがこの大きなリスクテイキングができるのか? では、特化なのか? たとえば日本でまったく奮っていないXbox 360に対して、自分が分からない市場のユーザーに受け入れられるものを提供できるか? と、まぁ、本当に悩ましいものですね。だからと言って、状況を見つつプラットフォームをコロコロと変えるには、それなりの制作期間がかかるわけで、その後の市場変動のリスクも背負うってことになります。

 じゃあどうしようかなぁと考えると、どうしてもパッケージビジネスからダウンロードビジネスへの移行をそろそろ考えてほしいところ(過去何度も書いているので、もう耳にタコでしょうね)。そろそろトライアルだけでもしてみませんか? インフラも整ってきつつありますし。次世代機でマッシブに遊ぶ人もいれば、ちょい時間つぶしのおもしろゲームを探している人もいるわけですよ。もっと言えば、ハードコアユーザーだって、ライトなゲームで息抜きってことだってあるわけですわ。

 マルチプラットフォームが実現できて、在庫リスクもなく、コピーされるリスクも少なく、中古も考えなくて良い、パッチを当てればリマスターもいらない……。高額な開発費をかけずとも、ゲーム性でユーザーを虜にすることができるのは、日本の職人芸ができる業だと思うわけですね。ネットワーク後進国の日本の開発者が(ごめんなさい)いきなり大作ネットワークゲームに出て行くには危険がいっぱい。もう海外は成熟していて中途半端は許されない市場になってるってことも理解したうえで挑戦してほしいの。

ハニィのあとがき

 読者の皆様、新年初の「最近どうよ?」でございまする。北米の2007年度、おったまげたね〜。サブプライム問題などとても感じさせない娯楽の王国ですよ。市場規模は金額ベースでほぼ日本の3倍強。単価が下落することを考えると、数量ベースでは5〜6倍と推定されますね。

 それにしてもWiiの勢いが止まらない。日本ではだいぶ落ち着いた感がありますが、北米では発売から1年経っても恒常的な「在庫不足」状態。月生産180万台って言ってたから、12月は8割くらいの生産数を全部北米に投入したと思われます。北米の2007年を振り返ると、ハード側面で見ると、

  • 1:任天堂の復活と新規市場創造
  • 2:まさかのSCEの転落
  • 3:マイクロソフトのゲーム市場における地位確立

 と言い切れると思われます。ニンテンドーDSが出たときに多くのアナリストがPSPに軍配を上げたし、Wiiのスペックを見て「次世代機とは言えない」と批判する声も多かったけど、結局はハードの見てくれではなく、「そのハードでどんな体験ができるのか?」、「どんな付加価値が享受できるのか?」と、ゲーム機としてはまったくもって当たり前の理論を任天堂さんは示してくれたと言えましょう。SCEは今年が正念場。PS3の「Home」のローンチも含め、ソフト面でのインフラ整備の失敗は許されません。それにしてもXbox 360のハード台数に対するソフト売り上げ本数(装着率)を見ると、ユーザーのロイヤリティの高さは史上まれに見るものですね。ターゲットに対して的確にソフトを供給している、と言えましょうな。

 また、ソフト面で行けば、

  • 1:Activitionの興隆
  • 2:EAの不振

 が目に見えましたね。Activisionは「Call of Duty」シリーズなどのオリジナルも持ちつつ、一時期EAが独占していた映画版権物を積極的にプッシュしていました。さらに「Guitar Hero」シリーズの爆発的ヒットのおかげで、北米における不動の地位を得たとも言えるでしょうね。ただ、EAは相変わらずスポーツでは最強だし、2007年に複数の開発会社を買収したこともあって、今仕込んでいるものの成果は2008年末以降に見られるはず。今年の年末商戦ではそこもチェックしないといけませんね。

 あー、年が明けるのはいいけど、また年取っちゃったなぁ。今年もまだまだ書きますよぉ〜。GDCの取材も含め、2月はまたまた北米市場を見てくるので次回の「最近どうよ?」も読んでくださいませませ。

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくってやたら大きく育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の語り口調ですが、もう慣れてくださいとしか言えません。言ってる中身は至極マジメなので。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。

ハニィさん、いろいろ書いてますけど、大丈夫ですか? わたしは心配でなりません……。GDCも期待しておりますよ。あ、そうそう、ハニィをGDCでこきつかってくれる優しい足長おじさん(応相談)、募集しております!


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