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「ファミリートレーナー」の舞台を走るゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(3/3 ページ)

連載第56回は「ファミリートレーナー」(バンダイ)。わたしが昔ハマっていた「ジョギングレース」に出てきた場所を、実際に走ってみました。あと「アスレチックワールド」「エアロビスタジオ」もご紹介します。

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実際の皇居一周タイムと比べてみよう

 東京駅を出て、スタート地点の二重橋まで歩く。この時点でもう太ももが痛くなってきた。いきなり不安だ。

 スタートしてすぐ、左に坂下門と、宮内庁の建物が見える。遠くに富士見櫓(やぐら)、近くに巽櫓。右側には東京駅が見える。ここからお堀に沿って走る。

画像 実は日比谷駅で降りたのだが、荷物を預けるロッカーが見つからず、東京駅まで歩いてきたのだった
画像 内堀通りから二重橋は見えないかと思っていたが、意外とよく見えた。正確には奥にある鉄橋の方が二重橋だけど
画像 巽櫓(たつみやぐら)と石垣と、幅の広い桔梗(ききょう)濠。江戸情緒満点

 大手門前を通過。「ジョギングレース」では5分32秒で通過した地点だが、実際に走ったら8分26秒もかかった。実はもう足とか肩とか胸とかがキツくなっていて、休み休み走っているから遅くなったのだ。

 例の銅像が見えた。和気清麻呂(わけのきよまろ)の像だった。1940年(昭和15年)に、皇紀2600年を記念して造られた像。和気清麻呂は奈良時代の政治家で、当時権力を持っていた僧・道鏡が天皇の位に就こうとするのを、阻止したとされる。

画像 大手門で実際の風景とゲームのグラフィックを比較してみよう。実際の大手門はこんな感じ
画像 こちらがゲーム内の大手門。さすがにファミコンだから完璧に再現とはいかないものの、頑張って表現しているほうではないかと
画像 和気清麻呂像の高さは4.2メートル。近くに東京メトロの竹橋駅がある。背後に見える建物は毎日新聞社

 6分休んで再び走るが、平川門でまた止まる。全身がかゆい。スタートから21分22秒。「ジョギングレース」では10分で通過した地点だが。竹橋を渡ると、右手に国立近代美術館の建物が見えた。もう走るのをやめて美術館に入ろうかと思ったが、道路を渡るのも面倒だったので走り続ける。

 北桔橋門(きたはねばしもん)前を通過し、乾門前でスタートからちょうど30分。ちなみに「ジョギングレース」でここを通過したのは14分42秒。

 スタートから35分余り。お堀に沿って左に曲がるとき、左手に国会議事堂が見えた。やっぱり、ゲーム内に出てきたそれっぽい建物は、国会議事堂だったのか。

 改修工事中の千鳥ヶ淵公園の脇を南下。「ジョギングレース」では21分50秒で行けた半蔵門に、42分かかって到着。

 この先は桜田濠。心地いい風が吹く。かゆみはおさまってきたが、ちょっと調子に乗って走るとまたかゆくなる。ゲームではここで多くのランナーと、抜いたり抜かれたりを繰り返したが、現実では多くのランナーに抜かれっぱなし。

画像 乾門の先には御所や新宮殿などがあるので、一般参賀の時以外は通れない
画像 まさかこの角度から国会議事堂が見えるとは思わなかった
画像 半蔵門の近くから桜田濠を眺める。お堀に架かる橋はなく、見通しがいい

 桜田門までたどり着いたが、ここでストップウォッチを誤操作してしまい、半蔵門からのタイムが分からなくなる凡ミスを犯す。力が抜けたが、また気持ちを立て直して走り出す。桜田門から6分37秒、二重橋前に無事ゴールした。

 時計を見ると、皇居一周5キロを走るのに、1時間5分くらいかかっていた。歩くのとたいして変わらない。ファミリートレーナーで走るのと、実際に走るのとでは全然違うことが分かった。タイムが30分も違う。疲れ方も違う。

 もっとも、走るのに慣れた人なら、少なくともかゆみでペースが落ちることはないだろう。ファミリートレーナーで何度か走って、ある程度慣れてから、実際の皇居一周に挑めばよかったかもしれない。

よくぞ生き残った、ファミリートレーナーよ

 今回は割と、スポーツ・フィットネス寄りのソフトを取り上げたが、「ファミリートレーナー」には、もっとゲームっぽいソフトもあった。特に有名だったのが、TBSの人気番組「風雲!たけし城」をゲーム化した、「突撃!風雲たけし城」。石を飛び移る“竜神池”や、飛んでくるボールを避けながら狭いつり橋を渡る“ジブラルタル海峡”など、番組内で参加者が挑むアトラクションが再現されている。

 そのほか、当時流行した巨大迷路をモチーフにした「迷路大作戦」、指名手配犯を捕まえる「マンハッタンポリス」、対戦のできる「ランニングスタジアム」「ファミトレ大運動会」があった。

 1987年までに8本登場した、ファミリートレーナー専用ソフトだったが、翌1988年には、年末に「風雲たけし城二」が発売されただけ。結局1989年1月発売の「来来キョンシーズ ベビーキョンシーのあみだ大冒険」が、最後のソフトとなった。

 ファミリートレーナーは話題にこそなったが、それほど大ヒットしたわけではない。マットが大きくて、プレイする場所が限られること、アパート・マンションでは足音が下の階に響くことなどが、理由として挙げられる。わたしも一時、健康のために「ジョギングレース」で毎日走っていたが、床がへこんできたのでやめた。

 そもそも、専用コントローラーを使うゲームが売れない時代だった。やはり割高感があるからだろう。ファミリートレーナーの定価も8500円(アスレチックワールドつき)と、普通のファミコンソフトよりやや高かった。

 状況が変わってきたのは1990年代後半。アーケードから「ビートマニア」「ダンスダンスレボリューション」(コナミ)、「電車でGO!」(タイトー)が、プレイステーションに移植され、ヒットしたのだ。いずれも通常のコントローラーでプレイ可能だが、別売コントローラーが発売され、好セールスを記録している。

 この頃になると、ゲームをやるユーザーの年齢層が上がってきて、大人のプレイヤーが増えた。また、これら3本はアーケードのヒット作で、それぞれ独特の操作方法が、大きな売りとなっていた。これらのコントローラーが立て続けに売れたことで、「別売コントローラーは売れない」というジンクスは払拭されたのだ。

 あらためて今、ファミリートレーナーをやってみると、プレイヤーとキャラクターが同じように動くというところが、時代をかなり先取りしていたように感じられた。ファミコン全盛時から、児童が体を動かさなくなったことは問題視されていたが、ファミリートレーナーが開発されたのは、それに対する1つの対策という面もあったのだろう。

 昨年の東京ゲームショウで、Wii版の「ファミリートレーナー」が出展された。ソフトは、大幅にリニューアルされた「アスレチックワールド」だ。画面が横からの視点だったファミコン版に対し、Wii版はランナー背後からの視点となり、また種目によってはWiiリモコンも併用することで、よりプレイヤーとランナーとの一体感が増した。今年春発売予定。

 コントローラーのジンクスが払拭された上、ゲームのコンセプトがWiiというハードのそれに近いので、Wiiユーザーにも受け入れられるのではないだろうか。

 Wii版が発売されたら、「ジョギングレース」もリメイクしてほしいと思う。いろんな場所の景色をダウンロードできるようになったら、ファミコン版より長く続けられそうだ。

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