手応え十分の激闘――悪魔と雌雄を決するハルマゲドンに勝利せよ:「ポピュラスDS」レビュー(2/2 ページ)
刻一刻と変化していく状況。その都度要求される最善の判断。ニンテンドーDS初登場となったリアルタイムシミュレーションの開祖は、シリーズ歴代の諸作と同じく、これでもかと言わんばかりに駆け引きの妙を味わわせてくれる。1プレイの時間は30分弱だが、密度は限りなく濃い。
有利と見たらハルマゲドンを仕掛けろ
信者への命令と奇跡を連動させることで有利な状況を作ったら、決着を付ける時をうかがわねばならない。有利になったからとのんびり構えていると、些細なきっかけでそれが崩壊してしまうこともあり得る。好機を逃してはならないのだ。
神と悪魔の最終戦争。それがハルマゲドンだ。すべての家や城が画面から消滅し、敵味方それぞれの信者が全員戦闘に突入する。一度ハルマゲドンが始まると、もう誰にも止められない。どちらかの信者が全滅するまで、オートバトルが繰り広げられるのだ。なお、ステージに制限時間が設定されている場合、それを過ぎると自動的にハルマゲドンへとなだれ込む。制限時間付きのステージではより迅速な判断が問われるわけだ。
マップと属性の組み合わせで生まれる多様なゲーム性
ここまでが「ポピュラスDS」の基本的なルールと進め方になるが、それをさらにバリエーションに豊かにしているのが、マップごとの個別ルールである。
マップはスタンダードである「草原」をはじめ、全部で10種類が用意されている。建物がお菓子の家になり、童話的な世界が広がる「メルヘン」、武家屋敷や天守閣が並び、侍や力士が激突する「大江戸」、おどろおどろしいグラフィックの上をゾンビとなった信者たちが徘徊する「ホラーショウ」、任天堂の歴代ハードがオブジェクトとなっている「ビットプレーン」など、どれもが個性的で見ているだけでも楽しい。
もちろん、違いは見た目だけではない。マップによって特殊ルールが定められているのだ。例えば草原を基準にすると、大江戸は信者が増えやすい代わりにサイコパワーが溜まりにくい、という性質を持っている。メルヘンはサイコパワーはたまりやすいが信者が死亡しやすく、またマップ上に障害物も多い。ホラーショウでは住民がゾンビであるため、いくら戸外を歩き回っていても死ぬことがない。
こうしたマップの特徴と神の属性が組み合わさることで、ゲームの難易度は大きく変化する。火の神を例に挙げてみよう。この神を崇める信者は攻撃力が5属性中ナンバー1である代わりに人口増加率がもっとも低く、死にやすさという点でも最低にある。この神をメルヘンで使うと仮定する。メルヘンの特徴はサイコパワーが溜まりやすく、信者が死にやすいこと。ということは火の神には非常に厳しいマップとなる。後者は弱点をさらに悪化させているだけだし、前者についても火の神はサイコパワー獲得率が最低なのだから、相手がどの属性であれ、結局不利は免れない。一方大江戸ならばどうか。信者が増えやすいという特徴は弱点を補ってくれるし、数が増えれば単体での攻撃力の高さも活きてくる。また、サイコパワーが溜まりにくいということは相手がどの属性であれ、奇跡を起こしにくいことになり、これも火の神には有利に働く。ただし、自分自身はますます奇跡が使いにくくなるから、信者のコントロールにいっそう注意せねばならなくなるだろうが。
マップの特徴は奇跡の効力にも影響する。これについても例を挙げてみよう。地の神が持つ沼の奇跡。敵信者をまとめて消し去ることができる強力な奇跡だ。水の神にも「洗脳泉」という奇跡があり、これは泉に落ちた敵信者を味方に変えてしまう。考えようによっては倒す以上に役立つといえるだろう。だが、こうした奇跡はすべて敵の信者が沼ないし泉に落ちて初めて意味を持つ。ところが、アラビア風の景観が広がる「ペルシャ」のマップでは、すべての信者が空飛ぶ絨毯に乗っているのだ。浮遊しているから当然沼や泉に落ちることはない。地の神や水の神にしてみれば、ペルシャは己の能力の一部を封印された状態で戦わねばならないマップとなるのである。
逆の場合もある。風の神に「突風」という奇跡がある。敵信者を指定した方向に吹き飛ばす効果があって、やや玄人好みの奇跡なのだが、「空中庭園」のマップで使うとまさに絶大。このマップはバビロニア風で、マップが上空高く浮いているという設定になっている。だから縁から落ちた信者は即死。マップの端に多数の信者がいるのを見つけたら、文字通り一網打尽にできるのだ。「溶岩」マップも灼熱の溶岩の海が広がっているので、そこへ落ちれば一瞬で焼死となる。こちらも相当な威力だ。
ステージ固有の補助ルールも無視できない
ゲームのバリエーションを高めてくれるのはマップだけではない。ルールもまた然りだ。ここでいうルールというのは、基本的なゲームシステムはなく、ステージごとに定められた個別の補助ルール。本編のメインモードというべき「チャレンジモード」では、初めに写真のような画面が表示され、このステージでのルールが示される。
あまり細かい話になってしまうと混乱してくるかもしれないので、ここでは、一番上に書いてある「敵陣造成」について説明しておこう。神の基本的な能力として大地の上げ下げが出来る。これが「造成」だ。ところで、家や城はマップの平地部分に建っている。とすると、もし家が建っている地面を動かして平地でなくしてしまったら? そう、家は破壊されてしまう。「敵陣造成」というのは、この恐ろしくローコストでハイリターンな作戦が可能であるという意味なのだ。
造成は自陣営の家か城、あるいは信者がいる場所から一定範囲内でのみ使用できる。だから、「敵陣造成」が可能になっているステージでは、味方を最前線に送り込み、敵の建物を壊しながら進んでいくという手法が使える。もちろん敵も使ってくるから、いきおい勝負は乱戦になる。これで制限時間も短かったりすると、さらにスゴイことになる。そこへ加えてマップが人口増加の激しい大江戸などだった場合は……?
真剣勝負の醍醐味を堪能されたし
ルールをシンプルにし、マップの特徴や補助的なルールによって多彩なゲーム性を生み出しているのがポピュラスDSだ。このようにいくつかの要素が絡み合ってくるから、勝利はなかなか難しいが、その分、達成感も大きい。ギリギリの人数差でハルマゲドンに突入した際など、運良く勝利できれば思わず拳に力が入ってしまうこと請け合いだ。時間潰しの手段ではなく、知力を尽くし、それにわずかばかりの幸運を引きつけて勝利をつかむ。これぞ、ゲームというメディアが持つ醍醐味といえるだろう。チャレンジ・スピリットにあふれた全国のプレイヤー諸君。これこそが、みなさんが求めているゲームだ!
「ポピュラスDS」 | |
対応機種 | ニンテンドーDS |
ジャンル | リアルタイム・シミュレーション |
発売日 | 2008年2月21日 |
価格(税込) | 4980円 |
人数 | 1人(ワイヤレス4人対戦) |
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