これだけ詰まって1500円! Wiiウェアの可能性を示した、お手本的箱庭シム:「小さな王様と約束の国 FFCC」レビュー(2/2 ページ)
インターネットを通じて、Wiiの新作ソフトウェアをダウンロードして遊ぶことができるサービス「Wiiウェア」がスタートした。第1弾タイトルの中には、なんとあの「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」の名前も……。
少しずつにぎわっていく、自分だけの王国
では、日中はただ冒険者の帰りを待つだけなのかというと、もちろんそんなことはない。王様はその「建築術」を使って王国を発展させることで、間接的に冒険者たちのサポートを行っていくことができる。例えば民家を建てれば新たな冒険者がやってくるし、武器屋を建てれば冒険者が武器を使って戦えるようになる。他にも、冒険者がパーティを組めるようになる「酒場」、白魔道士にジョブチェンジできる「白魔法学院」、旅の冒険者や他種族の旅人たちが街を訪ねてくれるようになる「宿屋」などなど、建物にはそれぞれ冒険者を支援する様々な役割があり、国を発展させることがそのまま冒険者の強化につながっていくというわけだ。
ちなみに初期状態では民家しか建てられないが、ゲームを進める(ダンジョンをクリアする)につれて、やがて武器屋が建築可能になり、さらにパン屋、公園、防具屋……と、どんどんレパートリーが広がっていく。建物が増えればより手強いダンジョンに挑めるようになるし、手強いダンジョンをクリアすればさらに良い建物が建築できるようになる。このスパイラルが生み出す中毒性はかなりのもので、「あしたこそはあのダンジョンをクリアできるかも」「せっかく新しい建物が建設可能になったし、あと1日……」と、ついつい“やめられない止まらない”状態になりがちなので、遊ぶ際にはくれぐれもご注意を。
他にも、国民と会話することで王国の「幸せ度」を上げたり、時にはやる気を失った冒険者を励ましてあげたりと、直接ダンジョンに出向くことはなくとも、街で王様がすべきことはかなり多く、1日はアッという間に過ぎていく。日ごとににぎやかに発展していく王国、たくましく成長していく冒険者たち、次々出現する新しいダンジョン――。慣れてくるとある程度は行動パターンができあがってくるものの、それでも「昨日より進んだ今日」が毎日コツコツと積み重なっていくのはうれしいものだ。現実もこんなに順調ならいいのに、などとついつい考えたくなるが、たまには現実を忘れて王国再建に精を出すのも悪くない。
早くも追加コンテンツ配信開始! その効果は?
また、発売から1週間後の4月1日には、なんと早速「追加コンテンツ」が配信されたので、こちらの内容についても補足しておこう。
現在配信中の追加コンテンツは、リルティ・セルキー・ユークの各種族が冒険者としてやってくるようになる「リルティの家」「セルキーの家」「ユークの家」と、新たな建物が建設可能になる「聖なるほこら」「豪華な家」、そして王様と大臣の新しい洋服「王様のお着替え」「チャイムのおめかし」の7種類となっている。価格はそれぞれ100〜300Wiiポイントで、3種族の家については、3つセットで800Wiiポイントとお買い得な(別個に買うと900Wiiポイント)「3種族の家パック」も用意されており、全部のコンテンツを購入すると合計1300Wiiポイントになる計算だ。
追加コンテンツと聞いて、「買わないと楽しめないんじゃないの?」と不安に感じている人もいるかもしれないが、結論から言えばそんなことはまったくない。もっとも変化が大きいと思われる「3種族の家」についても、冒険者の初期パラメータが少し異なるだけで(リルティは戦士向き、セルキーはシーフ、ユークは魔道士にそれぞれジョブが固定される)、特に買わなくてもゲームの進行上不利になったりはしないので安心してほしい。他のコンテンツについても同様に“あればちょっと便利”な程度で、どちらかと言えば実用性よりも“自己満足”用のアイテムと考えるべきだろう。
シンプルでベストな価格設定
こうした追加コンテンツの販売は、Xbox 360などではすでに当たり前になりつつあるが、あちらが「ソフトはフルプライスで販売し、さらに上乗せで課金」というスタイルをとっているのに対し、こちらはソフト自体の価格が1500Wiiポイントと抑えられているのが特徴的だ。もちろんパッケージソフトとダウンロードゲームの価格を単純に並べるわけにはいかないが、ともあれ「ソフト自体を低価格で販売し、あとはユーザーの判断で追加購入も可能」というビジネスモデルを提示した点はもっと評価してもいいはず。少なくとも本作では、1500円あればユーザーはエンディングまでひととおりの内容を楽しむことができるし、筆者のように「面白かった! もっと楽しみたい!」という人は、さらに1300円払ってプレイの幅を広げることもできる。デフォルトが「SIMPLE」価格、第1弾コンテンツを合わせるとちょうど「ベスト版」価格になるというのも、どことなく意図的なものを感じるが、さすがにそれは深読みのしすぎだろうか。
ただひとつ不安に感じたのは、わずか512MB(=4000ブロック相当)という、内蔵メモリの記憶容量だ。本作の購入には287ブロックの空きが必要だが、すでにバーチャルコンソールなどで遊びまくりだった筆者は、いくつかのソフトをSDカードに避難させてようやく本作分の空き容量を確保することができた。追加コンテンツについても各1〜3ブロックと、わずかながらメモリを消費するため、今後こうしたタイトルが増えてきた場合、間違いなくWiiの内蔵メモリ容量は大きなネックになってくると予想される。このあたりにどう対応していくか、任天堂の取り組みに期待したいところだ。
1500円なら安すぎる、Wiiウェアのお手本的タイトル
話をゲームに戻すが、部分的に見れば、戦闘や探索などのシーンが一切カットされていたりと、パッケージゲームに比べれば、確かに物足りなく感じた部分はある。すべてをユーザーの想像力に任せるというのは面白いが、例えば常に画面端に全体マップのようなものを表示しておいて、冒険者が今、どこで何をしているのかを簡単に確認できるような仕組みがあれば、もっと感情移入度が高まったのではないだろうか。実際、終盤のあるイベントバトルでは、画面下部にボスの体力ゲージが表示され、街にいてもボスの体力が減っていく様子を確認できたのだが、この時はかなり手に汗握る戦いが楽しめた。街で冒険者の安全を祈るしかないもどかしさも本作の魅力とは言え、“ボスの体力の動き”だけでこれだけ興奮できるのなら、もうちょっと演出を増やしてくれてもバチはあたらなかった気がする。
とは言え、1周にかかるプレイ時間は10〜20時間と、ボリューム的にはパッケージゲームと比べても何らそん色はない。それも、長ったらしい戦闘や探索を一切カットしてこの時間だから、ゲームのテンポも抜群。クリア後には一部データを引き継いでの「2周目」も用意されており、これだけ濃密な時間を過ごせて1500円なら、個人的には安すぎるくらいだと感じた。目を見張るようなムービーなどなくとも、優れたシステムとアイデアさえあれば、充分に面白いゲームは作れることを証明した、まさに「Wiiウェア」のお手本のようなタイトルだと思う。まだプレイしていない人は、この機会にぜひ一度体験してみてほしい。
「小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」 | |
対応機種 | Wii(Wiiウェア) |
ジャンル | 国造りRPG |
発売日 | 2008年3月25日(配信中) |
価格 | 1500Wiiポイント |
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