3Dでグリグリと動かせる通好みの箱庭ゲーム:「A列車で行こう8」レビュー(3/3 ページ)
鉄道に興味はなくともゲーム好きなら必ず名前を知っている、日本を代表する箱庭ゲー「A列車で行こう」シリーズ。地味ながらも愛され続けている「A列車」の秘密とは何か? シリーズ初心者にして鉄道マニアでもない筆者が体当たりでレビュー!?
リプレイ――「山から海へ」で中州島に東京タワーを建てろ!(2回目)
さぁ、お待ちかねの(以下省略)。
今回は“路線の直線距離が長ければ利益率が上がる”という部分に着目し、あえて遠回りする路線を作った上で、そこから中州島に向けて線路を引っ張っていく作戦をとる。「なにをムダなことを」と言われそうだが、人生なんて、ムダの連続なんです。偉い人には、それが分からないのです。なにしろ筆者は、線路にポイントやサイディング(どちらも線路を分岐させるもの)の作り方が“端以外の線路上で線路敷設を行い、クリックしていけば切り替わる”ということを把握するために6時間もかけたのだ!(実話) どうだ、まいったか! あーっはははは……はぁ。
とにもかくにも、「中州島タワー」(勝手に命名)を建設するべく、ミッション開始!
余談だが、本作では駅に名前を付けられる。そこで筆者は東端の駅を「東端駅」、中州島の駅を「中州島駅」と命名。ただ、中州島駅ができるまでの道程は、決して平坦とは言えなかった。
まず車両の問題。
筆者は東端駅に向かう路線が普通より長いことから、旅客車両を通勤型のAR3ではなく、急行列車のAR4にしていた。そうなると貨物車両も1段階上のものを使うべきだと思い、なにも考えず、貨物車両のDC4ではなく急行貨物車両のEC6に変えたのだが、これによりサイディング・ポイントで車両同士の正面衝突が多発! といっても、このゲームでは“車両が止まる”だけなので損害らしい損害はない。しかし、車両が止まれば利益が出ないし、資材も滞る。「なぜ? どうして?」とあわてながら原因を探り……理由はすぐ解明された。
AR4の巡航速度は「100」。
EC6の巡航速度は「117」。
これを事実上、1本の路線で走らせていたのだから、いずれサイディング・ポイントで鉢合わせが起こるのは必定というもの。というわけで、旅客車両を巡航速度が「117」の特急列車「AR5」に変更すれば問題なし……なのだが、この時、筆者はAR5の巡航速度が117であることを知らないばかりか、たまたまクリックミスで選択してしまったJR貨物の急行貨物車両「Mc250系」の巡航速度が「100」であることを知ったばかりだったせいで、余計な苦悩を背負うことになる。
オリジナル車両縛りに殉じるべきか。破るべきか。
結論は「縛り? なにそれ」。
かくして東端駅に到着するMc250系。これを世に、厚顔無恥と言う。
そうこうしているうちに中州島駅も発展。タワーは資材消費数900という化け物だ。「資材置き場(大)」1つに置ける資材の数は最大で128なのだから、最低でも「大」が7つと「小」が1つないと、建設に必要な資材を集められないことになる。発展が止まるのを待っていたのも、そのためだ。駅周辺が発展すると他会社が勝手にいろいろと建設してしまい、せっかくためた資材を浪費してしまう。だからこそ、タワーのような大物は、発展が止まるのを待ってからでないと、建設に着手できないのだ。
だが、時は来た。
どーん!
資材置き場がキレイになりました……ではなく、これにてミッションコンプリート!
いやぁ、良かった良かった。
「惜しい……」と思ってしまう通好みのゲーム
本作の結論は、とにもかくにも「惜しい……」の一言だ。
今回はダイヤ(車両の運行予定)の調整や、物件の使い方、さらには株取引、新幹線やリニアなどのプロジェクトを度外視したうえで、“ランドマークの1つを建てる”ことだけを目指してみたが……その試行錯誤&迷走ぶりを見ればお分かりの通り、本作は、まったくの初心者が遊ぶものとしては不親切な作りをしていると思う。鉄道好きでなくとも、筆者のようにシミュレーションゲームに慣れているユーザーであれば、自分なりの遊び方を見出せる奥深さを備えているのだが、そこにたどり着くまでが大変だったのだ。
また、今回のレビューに際してPC版の前作「A列車で行こう7」にも触れてみたが、今作がXbox 360版(A列車で行こうHX)の移植であるせいなのか、操作性については、正直、前作より悪くなったと判断するしかないところも残念だ。
しかし、面白い。これは間違いない。
鉄道を走らせるだけで、何もない荒野に家が建ち、道路が整備され、再開発が行われ、ビルやマンションなどが建ち並んでいく……まるで生き物のように変化している“街“の動脈を握ることで、ユーザー自身を世界に引き込んでいくような不思議な魅力が「A列車」にはある。
シリーズ第一作目が産声をあげたのは1985年12月。なんと「スーパーマリオブラザーズ」が発売された年と同じだ。その頃から根強いファンに愛され続けてきた「A列車で行こう」シリーズ。その理由を、できれば多くの人に味わってほしい。そう思えるだけに……とにもかくにも、惜しい。本当に面白いゲームなのに。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.