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“非情な戦争の中の人間ドラマ”を描くチャレンジタイトル「戦場のヴァルキュリア」インタビュー(3/4 ページ)

セガから4月24日に発売されるプレイステーション 3「戦場のヴァルキュリア」は、戦場でくり広げられる人間ドラマを描いている作品だ。いわゆる“シリーズもの”とは異なり、1からチャレンジした作品だが、本作の魅力について、プロデューサーを務めた野中竜太郎氏と、チーフプロデューサーの西野陽氏に話を聞いた。

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水彩画のタッチを計算で表現するのは次世代機だからできた

――描画システムの「CANVAS」についてお聞きしたいんですが、暖かみのあるイラストタッチの絵のような雰囲気で作ろうと、最初から考えていたのですか?

野中 正確に言うと、本作を“戦場ドラマ”にしようと思って作り出した時には、プレイステーション 3が登場していませんでした。なので画面表現も今とはまったく違います。

西野 もともとはプレイステーション 2での企画でしたから。そのあとPSPになった時もありましたし。構想からのスタートで見ると4、5年はかかっているんじゃないでしょうか。「サクラ大戦V」を作っている時から考えていましたから。

野中 わたしもそのころは「Kunoichi -忍-」を作っていましたし。当初「戦場ドラマをやろう」ということだけは決めていましたが、ゲームシステムを詰める前の段階で、どういう場面があるんだろう、どういうドラマがあるんだろう、といったことを考えていたのが2003年の秋くらいでしょうか。ただその時点ですでに本庄さんや、音楽を担当していただいた崎元仁さんにはお話をしていました。

西野 そこから、具体的にゲームを作ろう、となった時に次世代機が出てきました。社内で新しい画面表現を研究しているチームがあって、そこで研究していたアイディアは「戦場のヴァルキュリア」に使えるのでは? となったわけです。そのとき初めて、初期の「CANVAS」で戦車の上に人が乗っている絵を描きました。水彩画っぽいモデルを作って社内で検討した結果、「これで行きます」となったんです。

野中 そのチームは「CANVAS」だけじゃなくて、コミック調であるとか、リアル調であるとか、いろいろな研究をしていたんです。ただ、リアル調だと、海外によくあるFPSみたいな、リアルであるけれど破壊的なイメージというか、厳しいイメージが先行してしまいます。我々としては、そこに生きる人々の、戦争を乗り越えた将来の希望であったり、戦火の中での友情を描きたいので、表面的な映像表現にユーザーがハードルを感じて「遊べません」と思われてしまうのはいやだったんです。

西野 あまり血なまぐさいのは苦手という人もいますので……。優しいタッチで、というコンセプトを基に、新しい画面表現をそのチームと組んで作ってみたときに出てきたのが、水彩画タッチの「CANVAS」という表現だったわけです。

野中 キャラクターをどれだけ魅力的に描けるか、キャラクターの親しみやすさや、世界観へどれだけ共感を持てるかによって、ゲームへの感情移入が変わってきます。そのときに水彩画タッチという表現が出てきました。画面デモができた時に「これはすごい」と思いましたね。

西野 最初はただのイラストのように見える水彩画タッチの画面が「実は3Dです」と言ってぐるっと動かすとみんなビックリします。「これだ!」と思いましたね。

野中 社内でも「戦争物をやりたい」というと、リアル調のイメージが先に立ってしまうんです。でも水彩画タッチのグラフィックで人間ドラマを描く、ということで、やっとテーマが理解してもらえました。

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――キャラクターが魅力的なのはもちろんですが、背景のタッチがいいですよね。

野中 トゥーンレンダリングだけだと、アニメなのでキャラクターが軽くなってしまいます。でも、手描きのイラストのいびつな感じというか、ラフな感じが画面の中に出てくることで、安心感、共感が得やすいだろうと思っていました。ただし、ゲームの中で、リアルタイムで描かなければいけませんので、そこは苦労しましたね。ムービーだけだったら簡単だったんですけど、戦闘シーンになった時にいきなりリアルCGになるのも違うだろう、と(笑)。

――そのためには、プレイステーション 3でないとならなかったわけですね。

西野 プレイステーション 3でも相当無理してますからね。

野中 ものすごく努力をして、ああいう“ラフな画面”を作っています。細かいところでは、描線から色がはみ出るとか、塗り残しがあったりとか……。

西野 画面の奥の方に行くと、形が崩れてぼやけるとか、水彩画の“いい意味でのいい加減さ”みたいなものを“計算で出す”こともやっていますので。そこにマシンパワーを使っています。

野中 もちろんユーザーの中には、なんでこういう方向性で、この画面表現を選んだんだ、と思われる方もいるでしょう。でもプレイしてもらえば、「こういうことがやりたかったのか」と分かっていただけると思っています。最後はキャラクターやドラマにフォーカスした作りになっていますし。

戦略によって変わる状況――そして敵をすべて倒すのが目的ではない

――“お勧めの部隊構成”っていうのはありますか……?

野中 うーん。それぞれのシーンで変わってくるので難しいですね……。ただわたしは、ドライなシステムだとかいろいろと言いましたけど、やっぱり仲間がいなくなるのはいやなので(笑)、割と慎重派なんですよ。戦車をきちんと進めて弾よけにしたり。支援兵は1人は入れておきたいですよね。

 ただ、狙撃兵はあまり使わないプレイスタイルですね。先ほどの話じゃないですが、わたしとは微妙に相性がよくないんです(笑)。人によっては狙撃兵が大好きで使う場合もあるんですけど。あとは突撃兵が好きですね。基本なんでしょう。人力で突撃、というのは。

 また先ほども述べたように、短いターンでクリアすると評価が上がるんですが、1回目のプレイだとそこまでは難しいでしょうから、じっくりと戦ってクリアするスタイルをお勧めしたいですね。

西野 わたしは狙撃兵大好きです。消極的かもしれませんが、じわじわと攻める方法でしょうか。まあ結局は勝てばいいじゃん、ということですよ(爆笑)。ただ、敵として狙撃兵が出てくるとつらいですよね。「まずやつらを片付けろ」みたいな(笑)。

野中 開発チームの中では、支援兵が大好きという人もいますね。支援兵って攻撃力が極端に低いわけでもないですし、地雷を解体できるし、戦車も修理できるし、弾薬の供給もできる。また、ラグナエイドでのHP回復量が多いので、意外と使えるぞ、と。狙撃兵は弾数制限があるので、それと組ませると使えますし。

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――ウェルキンが出す「オーダー」の使い方にポイントはあるんでしょうか。CPを消費しますし、使い方が難しいかなと思ったりしたんですが。

西野 オーダーは“困った時用”かもしれません。このオーダーにCPを割くのか? ということは考えてしまいますよね。

野中 開発チームでもオーダーを多用する人もいますが、CPを2個や3個使うのはなるべく避けて、戦車も最小限でしか動かさない、という人もいます。でも使い方によってはオーダーは有効なんです。回避能力を上げておいて突撃させるとか、遊び方は人によって千差万別ですね。いろいろと探してみてください。ちなみに、プロデュース陣は2人ともオーダーはあまり使わず、堅実に行くタイプです(笑)。

西野 もっと冒険しなきゃいけないのかな(笑)。

野中 現場に行くに従って激しい戦いをしてますね。「突撃ー!」みたいな(笑)。行動不能になったら衛生兵を呼べばいいという考えもありますし、意外と思い切って進むほうがいいかもしれませんね。そういえば衛生兵は人物総覧のリストでは「衛生兵」という表記だけですが、何か秘密があるらしいです、とだけ言っておきます。

西野 放置していてもユニットは体力を回復しますし、体力回復用のラグナエイドは無限に使えるわけですから、意外と何とかなるんですよ。やられるというよりも、「撃たれるのはイヤだな」となって先に出られなくなるんです。思い切らないと戦況が変わらないので、勇気を持って進んでみることをお勧めします。決断力を養えるソフトだと思いますよ(笑)。

――それに、1回プレイしてクリアできなくても、何回か試していると戦略が見えてきたりして、あっさりと終わる時もありますね。

西野 トライ&エラーじゃないですけど、そのうちに何とかなるんですよ。1回目は慎重に行かなければならないと思いますが、めげずにプレイしていただければ。

野中 作戦がはまって、あっさりとクリアできたりする時もありますし。1つ1つ敵を倒して進んで行こうとするとターン数が足りなくなってしまうこともありますので、そこは思い切って飛び込んでみることも必要ですね。

 ミッションのクリア目的は敵を全部倒すことではありませんので、そのためにはどこを通って、どの敵を倒せばいいのかを見極めるかが重要ですね。それに、コマンドモードでは時間制限がありませんので、敵が見えている状況で戦略を考える余裕もあるかと思います。どうすればうまくいくのかを考えてプレイしていただければと思います

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