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今夜は真摯にネガティブトークをしようじゃないかヒライタケシの「投げる前から変化球」(その3)(2/3 ページ)

ヒライタケシの「投げる前から変化球」第3回目をお届けしよう。今回は「モバゲー」を1人で作ったディー・エヌ・エーの川崎修平氏を招き、若き技術者へモノ申す? ともにスペランカーが大好きな2人が、どのような会話が展開するのか……。

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平井 今のデジタルエンターテインメントに足りないものはなんでしょうか。毎日、夜も眠れるほど考えているのですが(笑)、僕はそれって発想力だと思っているんです。自由を売りにして自由じゃなくなっている感覚に、エンジニアは逃げているんじゃないかって。昔はもっとエンジニアが技術的発想を多くしていたんじゃないですか。それが、今は技術に追いつくのが精一杯で、発想にまで及んでいない。僕は「ビジネスは“はざま”だ」と思っていまして。はざまに技術が存在していると思っているのです。ビジネスサイドにない発想を技術サイドが発想して、はじめて新しいビジネスモデルができるんじゃないですか。そこの発想力が落ちているんです。

川崎 今は忙しすぎるというか、見なくちゃいけない情報が多いんですよ。ここを習得していればエンジニアとして一応やっていけるというものがあって、それが膨大ですよね。追いついていくのに精一杯なんじゃないかな。

平井 インターネットの普及も関係するのでしょうが、毎日情報についていくのがやっと。それについていこうとするとどんどん自分の時間が足りなくなる。

川崎 毎日、ニュースをチェックして流行の技術をチェックして、それだけで終わってしまう。これ知っていなければ仲間外れみたいなことが多くて。でも実際現場で、そういうものを追っかけて話している人にいざモノを作らせてみると、なんか違うというか、分かっていないことが多いんです。使えないというか、使いこなせていないというか。発想以前ですよね。技術の使いどころすら分かっていないで、知ったつもりでいるのですから。

平井 大前提として当たり前が存在している。よく、僕の言うこともおかしいらしくて、行間をうまく説明できてないことがあるんです。かみ砕いて話さないといけない。分かってくれないんですよね。新しい情報を積極的に取り入れることはできても、そこから発想するエンジニアが少ないんです。すべてがインターネットに答えがあるように思えるのも原因と思う。今は調べれば出てくるし、しかも画一的になっちゃう。ルールが決まってて、こう作らないといけないみたいな凡例に皆が依存している。

 会社で2週間に一度、テクニカルカンファレンスを開いていて、必ずエンジニアに発表させているんです。うちは20人くらいしかいないけど、必ず誰か1人、自分が作ったものを発表させています。20人で交代して回して、発表させることを大前提にして新しいシステムなりを作らせる発想を持ってもらうように仕掛けています。日本のエンジニアの発想が世界を席巻するような時代がまた来ればいいんですが。そういえば、ディー・エヌ・エーでは情報共有をどうしていますか?

川崎 情報共有は雑談ベースでやっています。考え方の共有は現場レベルで摺り合わせているというか。

平井 自分の中で、こうすればもっとよくなるのにという明確な考えがあるんですよ。川崎さんの中で、別業種でもいいのですが、こうすればいいのにというイメージありますか?

川崎 思ったことはやってきているので特には。こうすればいいと思ったら作っていますね。

平井 僕なんて発想レベルで止まっていることも多いので、結果を出されていてすごいな。

川崎 良くも悪くもあまりしゃべりが得意ではないのがいいかもしれません。

平井 作って見せると。プレゼンテーションする際はそのほうがいいんでしょうね。作ってからプレゼンするということを僕もしていますから。川崎さんも取締役ということで、ビジネスサイドからの葛藤みたいなことはありますか?

川崎 僕はあまりないかなー。モノ作りの人という立場は変わってませんから。ディー・エヌ・エーじゃなければ放られているんじゃないかな(苦笑)。

平井 ディー・エヌ・エーは、スピード感があるイメージですよね。誰かがやってみようと思ったらとりあえずやってみる社風なんでしょう。モバイルのネットワークも含めて、コンソール的にはマッシュアップが起こりつつあるじゃないですか。ネットワークタイトルも多くなっていますが、実にコンソールにはサーバエンジニアが少ないんです。データベースレベルを理解している人が少なくて、VisualStudio(ソフトウェア開発製品群及びそれらを管理する統合開発環境)を使って開発はできるけど、LAMP環境(OSであるLinux、WebサーバであるApache HTTP Server、データベースであるMySQL、スクリプト言語であるPerl、PHP、Pythonを総称した頭文字からなる造語)だと何も作れない人が多い。

川崎 ゲーム業界とウェブ系業界になにかしら垣根があるんですかね。

平井 PCオンラインとモバイルのマッシュアップが成功している前例はないし、コンソールにいたってはモバイルは眼中にないといった状況でしょう。コンソールで成功すると、いきなり他を見下すようなクリエイターが多いのも問題のような気がします。コンソールのエンジニアがモバイルのエンジニアを、グラフィックがプアーであるゆえにバカにしている目線も許せないんです。全然素質が違うんですよ。いかにフレームワークがすごくてコンソールでいいものを出しても、ネットワークが分かっていない。もっと互いに近くに寄って、吸収したほうがいいんです。ビジネスは狭間なのですから。逆はないですか?

川崎 モバイルというかWeb系のエンジニア全般に言えるのですが、そんなに違いはないですね。ただ、離れているという感覚です。すごく近いことをやっているのに。

平井 同じ“クルマ”というもので走っているのに、モバイルはモバイルの専用レーンを走るみたいなイメージですか。

川崎 道は間違いなく隣を走っているんですけどね。

平井 ネガティブトークっぽくなってきましたね。先ほどの発想の話と同じく、マッシュアップの発想がないのか、PCオンラインとモバイルの連動なんて、現状ではアバターがどうしたとか、せいぜいモバイルでちくちくキャラクターを育成できるのが可能、とかのレベルでしょう。結局、PCオンラインのグラフィックに無理矢理連動させているにすぎません。どうせならPCオンラインではアクションに特化させて、モバイルではシミュレーションに特化させて連動させるとかするべきでしょう。そういう連動がヘタなんです。タイトルにもよりますが、技術サイドなら想像できるところがあると思います。

川崎 お互いの得意領域でうまくつなげていくことが肝要ですよね。うちでいうとアプリでこういうことをやりたいといった際、ゲーム業界の知識がないとできないことをやっていきたいのに言葉が分からない。だから教えてもらうとか。

平井 僕にできることであればいつでも呼んでいただければ。先端の情報と既存の情報を組み合わせていかないといけない段階で、取捨選択していく基準とかありますか? 僕はプロダクトがしっかり決まっていればトリアージ(災害医療用語で、選別するを意味する)するものを決めていけますね。いいものをわざととがらせる場合もある。開発にはそういうトリアージする能力が必要だとも思います。

川崎 長い開発期間には無駄も発生しますよね?

平井 無駄も生まれます。出口を意識するんですけど……この作品が世に出た時にどうユーザーにささるかを意識するんです。コンテンツ自体丸くなってしまうと、取り扱ってくれない。わざととがらせるのはそういうことです。時代に合わないと売れないしささらない。

川崎 モノ作りって、はやった時のイメージを持って作るじゃないですか。夢を持って。現実と夢をつないでいく階段を作れない人が多いってことですかね。

平井 コンソールだとシリーズものが強いイメージがありますが、モバイルだとどうですか?

川崎 モバイルはないですねー。むしろ、ないので怖い。ブランドイメージは強くないので、その時その時に面白いもので勝負しているって感じです。

平井 PCオンラインと似ているけど、運営開発は大事ですよね。そういう意味ではこの2つは相性がいいと思うのですが、連動は実は少ない。キューエンタテインメントではそこに一石を投じたいと思っています。話は変わりますが、今のエンジニアに必要なものってなんでしょうか?

川崎 モバイル系に必要な技術という観点では、変化に対応し追従し、最高の表現ができるような能力ですね。学校で教えてもらったところで、現場に出たときには陳腐化しているので、リアルタイムに吸収できる人が欲しいです。情報系に興味があって、作りながら育っていける人じゃないと厳しい。

平井 基礎研究と開発を同時にできる人は重要だと思います、どの業界でも。リアルタイムの情報を得ながら、自分の作っていくものを深く掘り下げられる。僕は、そこに危機感を感じていて、調査と開発が両方できる体質を作りたいと常々思っているんです。コンソールはやはりネットワークサーバエンジニアもそうだけど、コンソール以外の新しいものを持ってくるという発想をもっと持つべきでしょう。テリトリー内の技術は進んでいるけど、そこでイニシアティブをとって新しい発想をするまでいっていません。新しいものを取りに行く発想ができる人材を僕はほしいですね。

 日本ってまだビリーブインテクノロジーという幻想が生きているじゃないですか。日本はパス・ディペンデンシー(経路依存性)というか、コンソールの文化が長いのでそこから一度外れるべきなんでしょうね。そういう意味でも、いい意味で協業ができればいい。川崎さんとはいっしょにゲームを作ってみたいですね。

川崎 そうですね。一度、がっつり組んでやってみたいですよね。

平井 日本の優秀なエンジニアだけ集めてエンターテインメントをやってみたいです。

川崎 同じ業界内の勉強熱心なエンジニアの集まりはすごく多いのですが、業界をまたいだ集まりは少ないんです。

平井 業界的に我々が成功すれば可能性はあると思います。成功した上でお話させていただければ幸いです。海外で展開してみるのも面白いかもしれませんね。

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