くねくねハニィの「世界不況がもたらす影」 :くねくねハニィの「最近どうよ?」(その28)(2/3 ページ)
前回の原稿をあげてからアメリカに取材に行ってた様子のくねくねハニィ。零下の北東部から30度越えのカリフォルニアまで横断。温度差で大風邪をひいたらしいが、不況を肌で感じてきたかは不明なので、記事を読んでみてはいかが?
どうなんだ? アメリカの景気
全体的に株価は落ちまくってますが、ではゲームメーカーの株価は? というと、もちろんあおりを受けて軒並み大幅に下げています。そのため、みなし資産が下がって資産価値が大幅に目減りしてしまったのも事実。コレに関してはまた後で触れることにするね。
記事の最初の方で書いたけど、ハニィが11月末にアメリカに行った時にはショッピングモール中セールだらけでした。年末のホリデーシーズンってのもあって、ブランド店舗が全製品30%引きとか信じられないこともやってたわ。そういうところではかなり人が混雑してたから大丈夫かなと思ってたけど、地元の方に聞いてみたところ、景気は明らかに悪くなっており、その先行き不透明感からか、どうやらみんなのサイフの紐はかなり閉められてるみたい。
まずはホリデーシーズンであろうとも家族旅行に行かなくなったんだって。家族4人でちょっとした旅行をした場合、交通費(飛行機代とか)+宿泊代だけで最低でも2000ドル(20万円くらい)前後はかかってしまうわけで、そんな一時の快楽を求めず、不安な将来のためにとっておこう、ってのが一般的な感情みたい。
また、消費が冷え込むんじゃないか? と小売店側が危機感を感じて、やたらとセールを展開してるって話があったりする。こういうセールは毎年タイミングが決まっていたので、お客さんは買い控えしていたみたいね。「どうせセールになる」って思ってるから。でも、今年は不景気の影響もあって小売店の業績がよくないから、セールのタイミングを早めて集客している、ってことらしい。
それに、車や大きな家電製品などの大物は買い控えしていることは間違いないの。もちろんご存知の通り、不動産に関してはバブルと言われていた西海岸に関しては特に値下がり幅が大きい。
そういう意味では、ここのところハニィが感じてた「アメリカ人は金持ってるなぁ」って考え方は正しかったみたい。ものすごいバブルだったんです。大きな家を持って、ハイデフのテレビを持ち、高級車に乗り、ホリデーには家族そろって豪華旅行をする、ってのがそこら辺で見えてたからね。ある意味今までが異常だったとも言えるかもね。
冷え込んでるのか? ゲーム市場
ではゲーム市場は冷えているのか? と言うと、業界関係者もそうは言ってないのだ。2008年の10月のNPDデータを見てみると、現行ハードが安定期に入った前年10月に比べて売上ベースで18%の伸びが見られてるの。すごいよね〜。でも、ここで気をつけなきゃいけないのは、ハードとソフトの伸び率の差。
ハードの伸びは5%にとどまっていて、ペリフェラルに関しては8%マイナスになっている。その一方でソフトの売上は35%の伸び。つまり、ゲーム市場はソフトウェアが牽引しているの。つまり、「新規でゲーム機を買う人は増えていないけど、ゲーム機を持ってる人はソフトを積極的に買っている」ってことなのだね。もちろん現行機がひと通り出回ったって考え方もできるけど、景気の悪い時に高価なハードがバンバン売れるってのも考えにくいよね〜。
ってことで、ゲーム市場は相変わらず伸びているのだ。特にソフトウェアはますます堅調に。では、なぜ景気が悪いのにソフトは売れるんだろう? と考えてみると、旅行に20万円かけるよりは安いし、それでいて家族で楽しめるし、持っているハードは有効に使えるし、ってことなんだろうね。ハードでは、Wiiがダントツに売れている、と言う状況を鑑みると、ファミリーや友人たちと家で楽しめるパーティゲーム用のハードが好調って意味ではうなずけるよね。
映画に家族4人で出かけたとしても結構なお金になるでしょ? ゲームの方が購入金額(ゲームソフトは高くても1本6000円くらい)と楽しめる時間を考えるとコストパフォーマンス的には高いわけで、日本でもバブルがはじけたときにゲーム市場は打撃が少なかったと言われているのね。外出せずに、お金を大きく使わず、家の中でコンパクトに娯楽を楽しむことができる、ってことでむしろ歓迎されているエンターテインメントなのかもしれません。ズバリ、市場は冷え込んでいませんよ〜。
ゲーム業界はどうなんだ?
ところが、業界では不穏な空気が漂っているのだ。何でだ? 市場も伸びていて不況もどこ吹く風なのでは? な〜んて思いがちですけど、実はゲーム業界をとりまくいろいろな問題がなんとなく閉塞感を発しているのは間違いないのだ。
(1)リテイラーの買い控え
リテイラーとはつまり販売する小売店のこと。ゲーム業界で言うと、Target、WalmartなどのGMS(大型スーパー)、Best Buy、Fry'sなどの家電量販店、GameStop(だいぶ前に同業のEBと合併)などのゲーム専門店に分けられるのね。GMS→家電量販店→ゲーム専門店、後ろに行くにしたがってゲーム専門性が高くなるので、品揃えなどで大きな差が出ますけどね。
どんなゲームタイトルもひと通りあるといわれるFry's。日本で言うとソフマップみたいな感じかしら? ものすごく広いです。奥行きが伝えられないのが残念。
同じような家電量販店でBestBuyというのがあるんですが、ここはFry'sほど品揃えはよくありません。あくまでも家電屋さんなので、かなりピックアップされたものしか置いてませんの。
世の中の不況を受けて、各リテイラーのバイヤーは在庫リスクを避けたいという単純なアイデアで「売れそうもないものは仕入れない」という方向に走っている様子。このバイヤーさんたち、必ずしもゲームソフトマーケティングのプロフェッショナルとは限らない(特にGMSや家電量販店ではね)ので、アンパイのみってことも多くて、せっかくユーザーが買いに来ても限られたタイトルしか置いてないってこともよくあるの。
せっかく市場は盛り上がってるのに、中堅以下のタイトルだと棚にさえ置いてもらえない、という悲劇的な状況がさらに加速している(もともとその傾向はあったのでね〜)。特に年末商戦に向けて200タイトルを超えると言われているニンテンドーDSタイトルなんぞ、棚の争奪戦は必至(必死でもある)でしょうなぁ。
これって、ユーザー向いてないっていうか……。これだけユーザーはタイトル購買意欲があるのに、店に行ったら「あれ、売ってない」って状況を作るわけで、市場がせっかく大きくなってるのに台無しではないか。そんなこんなでメーカーも市場が伸びているからって安心できない状況が続いているわけですね。
(2)開発費高騰と資産価値低下
現行機に移行するときからそもそもの問題点として、開発費が高騰している(旧世代の数倍〜数十倍)のに、ソフト単価はそれほど上げることはできないってジレンマの下、メーカーは販売強化に加えて、プロジェクト横断ができるツールやエンジンを駆使して何とか1タイトル当たりの開発費を下げていく努力をしてきているのね。ただ、そうそう簡単に高騰した開発費を抑えることは難しく、大きなタイトルにしかお金と人員を避けないというハリウッド化が進んでいるってのはだいぶ前にお伝えした通り。
さらに前述したように、株価の急激な下落によって各メーカーのみなし資産が目減りしてしまって、投資が資本・資産に対して大きな負担になっているように見えてしまうのだ。ちょっと難しいかなぁ。例えば、1株100円の会社が500株を発行していたとして資本の価値は5万円だけど、株価が50円になってしまうと2万5000円の価値に目減りしてしまうってこと。また、固定資産として持っていた不動産価値が500円だったのに、250円に値下がりしてしまったら、この会社の財産価値が下落したってことでしょ? これが含み資産の目減り。いずれにしても、会社としては何も変わってなくても(実はキャッシュフローは円滑だったりする)、何となくイケてない感じになるのだ。
メーカーとしての経営では、これら資本や資産に対しての投資額ってのが検討されることになるんだけど、ゲーム開発はまさにこの「投資」になるわけで、資産が減っているなら投資も控える、って流れになるのだ。
実際にTHQが11月の頭に傘下のゲーム開発会社5社(Paradigm Entertainment、Mass Media、Helixe、Locomotive Games、そしてSandblast Games)を一斉に閉め、Rainbow StudiosとJuice Gamesの2社に関しては大幅なリストラ(解雇)をしたの。
また、EAがワールドワイドで6%の人員削減を行うと10月末に発表したの。世界各国でEAで働く9000人の6%ってことなので約540人ってことなんでしょうけど、一時、1株60ドルを超えていたEAの株価は現在27ドル前後まで落ちたことを考えると、やむを得ない決断だったと言う人もいるくらい。
ま、EAもTHQもタイトル自体の調子が良くないのもあるんだけどね。それにしても、これらのリストラの風潮が続くのか、それとも市場が押し上げてゲーム業界に活気をもたらすのか。希望的には後者ですけどね……。
でも、経営上のみなし資産が減ったからと言って、キャッシュフローが悪いわけではないはずで、使える現ナマ(お金)は潤沢にあるのだ。ぜひ、これを投資に回して欲しいもんだけどなぁ。残念なことに投資に失敗して株主に怒られるくらいなら、銀行に寝かして金利をつけたほうがいいかもしれないってことみたい。うぬぬぬぬ、つまんないことになってるなぁ。
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