ライバルが照らすアイドルたちの新たな魅力──携帯ゲーム機ならではの“燃えるアイマス進化形”:「アイドルマスターSP」レビュー(3/3 ページ)
アーケード、Xbox 360で好評を博した「アイドルマスター」が、満を持してPSPで登場した。ライバルとの出会いが紡ぎだす新たなストーリー、アーケード以来の蓄積によって洗練されたシステムとグラフィック。これは単なる移植ではない、アイドルマスターのひとつの到達点だ。
シリーズ最大の楽曲数
アイドルマスターの大きな魅力は、いうまでもなく楽曲の数々だ。アーケード版は10曲、Xbox 360版では16曲が使えたが、アイドルマスターSPでは既存の16曲に加え、さらに共通曲である「Colorful Days」と、各キャラクター専用曲が追加されている。専用曲は、コロムビアミュージックエンタテインメントから2007年に発売されたCD「MASTER ARTIST(以下、MA)」シリーズに収録されていたもの。さらにほかのキャラクターのMA曲も、PlayStation Storeから購入できるので、楽曲バリエーションは非常に幅広い。MA曲はアイドルマスターSP向けに新録しているので、持ち歌であればCDと聴き比べて変化を楽しむことができる。また、MA曲は元々各キャラクター専用に作られているので、曲調や音域も幅広い。別のキャラクターの楽曲を歌うことで、新たなイメージが引き出されているのも楽しめる。
そして、逆の意味で新鮮なのが、961プロの響と貴音だ。まず、961プロの本来の持ち歌である「オーバーマスター」は、ステージで聴くことは残念ながらできない。が、ストーリープロデュースで3日目を終えると、社長が新たなライバルとして961プロのアイドルを紹介してくれる。その時にオーバーマスターが流れるので、ボタンを押さずに聞いていれば、ゲームサイズのオーバーマスターが最後まで堪能できる。シングルCDに収録されているのは3人バージョンなので、響、貴音、美希のソロバージョンが聞けるのは実は貴重だ。
そして、ゲーム中である条件を満たすと、響、貴音、美希の3人が事務所モードに呼び出せるようになる。事務所モードでは961プロの3人もアクセサリーの着せ替えと楽曲の変更ができるので、オーディションを勝ち抜けば、既存の16曲+「Colorful Days」を、すべて3人に歌わせることができるのだ。通信オーディションはソロでも開催可能なので、楽曲とアクセサリーでバランスのいいパラメーターにし、満点を取れるぐらいのオーディションならば、高い確率でアクシデントなしのPVが撮影できる。アイドルマスターSPでは事務所モードでも30曲分のライブビデオが保存できるので、気に入った曲は保存しておけばいいだろう。
響は「オーバーマスター」のハマり具合を見れば分かる通り、当然、「エージェント夜を往く」や「relations」といったクールなダンスナンバーとの相性は抜群。ステージを降りた元気で前向きな響が良ければ、「太陽のジェラシー」や「ポジティブ」がオススメだし、イメージにピッタリな「おはよう朝ご飯!!」、掟破りの「Colorful Days」も、前向きな歌詞と正拳突きやキメポーズの辺りなどは、まるで響にあつらえたようにハマる。だが個人的には、「まっすぐ」や「思い出をありがとう」などのしっとりしたボーカル曲で見せる響の歌声の透明さが、新しい一面を見つけた感じで非常に気に入っている。
そして、961プロのボーカル担当である貴音だ。才能の塊な設定である961プロの中でもボーカルに秀でた存在だけに、貴音の歌はかなりのレベル。基本的にアイドルマスターの歌の傾向として、“キャラクターの側に歌を引きよせ、歌い方によってキャラクターを表現する”ニュアンスが強い。しかし貴音に関しては、かなり各歌の側に合わせて演技や歌の表情をつけている感じがあり、歌の引き出しが非常に多彩で、しかも巧い。流石は銀色の王女という感じだ。どの曲も安定しているだけに全部聞いてみて、と言いたいところだが、だからこそ正統派のアイドルソング、中でも歌詞のイメージがバッチリとハマる「魔法をかけて!」や、めいっぱいカワイイ系に針を振った「私はアイドル」がオススメだ。
美希に関しては、基本的にXbox 360版でおなじみの楽曲の数々。だが、美希の唯一の新曲である「Colorful Days」は、ストーリープロデュースのプレイ後、美希がこの曲を歌っていることを噛みしめながら聴いていると、ちょっと泣いてしまいそうになるので注意が必要だ。
楽曲の話に付け加えると、今までのアイドルマスターシリーズで、常に挙げられていた“ビデオやライブ写真の保存枠が足りない”という要望が、各キャラクターに30枠ずつ+事務所にも30枠と、これでもかと叶えられていることも見逃せない。この辺りは、メモリースティックを保存媒体に気軽に使えるPSPならではだろう。
コミュニケーションツールとしてのアイドルマスターSP
最後にPSPならではの要素として挙げておきたいのが、当たり前だがどこでもできるプレイ環境の自由度の高さだ。最近では筆者も、アイドルマスターSP用にPSPを必ず携帯するようになった。先日もアイドルマスターの声優さんが出演しているライブ会場を訪れた時、開演前・終演後はプロデューサーたちによる名刺交換の輪があちこちで見られた。5月には東名阪福のライブツアーが決定しているアイドルマスターだが、ライブ会場では事務所モードが全部屋満員、などという風景が見られるのではと期待しているところだ。
ネットワークを介しての対戦も熱いが、やはり知り合いと対面してライブでオーディションを戦えるのは非常に楽しい。個人的には各ジャンル1位しか星がもらえないため、思い出ボムの駆け引きが熱い「HIT-TV」が遊びの対戦では一番盛り上がるのではないかと思う。
長々と書いてきたが、アイドルマスターSPは敷居が低く、ストーリーとシステム回りを充実させ、初めて触れるプレイヤーにも熟練プレイヤーにも楽しめる非常にバランスのいい作品に仕上がっている。これまで興味はあったが所有ハードの関係や、なんとなくの気分で乗り遅れていたプレイヤーには、ぜひ一度触ってほしいタイトルだと自信を持って勧めたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 発売前対決は961プロの圧勝!? 「アイマスSP」961プロシークレットライブの様子をお届け
先週の765プロ側に続き、今週は961プロ側のシークレットイベントが東京・渋谷にて開催された。果たして765プロ対961プロの勝負の行方は!? - 沸き起こる「変態!」コールに会場が一体となった「アイマスSP」765プロライブ
2月の「アイドルマスターSP」発売に先駆け、昨年12月に765プロ、961プロよりそれぞれリリースされたCDシングル。その購入者のみ参加することができる、シークレットライブの会場に潜入してきた。 - 「アイドルマスターSP」発売延期
- 日々是遊戯:「アイマスSP」765プロの公式サイトがオープン! したけれど……
バンダイナムコゲームスより2009年1月22日発売予定のPSP「アイドルマスターSP」。その発売に先駆けて、765プロ&961プロの公式サイトがオープンしているのだが、両社の格差はサイトの作りにまで表れているようで……。 - 東京ゲームショウ2008:日本ゲーム大賞2008「フューチャー部門」に12作品選出
日本ゲーム大賞2008の「フューチャー部門」受賞作品が、TGS最終日となる10月12日に発表され、「モンスターハンター3(トライ)」など12作品が選出された。「ドラクエIX」は2年連続受賞? - 東京ゲームショウ2008:「アイドルマスターSP」テーマソングを初お披露目――シングルCDも発売決定
東京ゲームショウ2008の主催者イベントステージにて、“THE IDOLM@STER SP Presents「765プロダクション新曲発表会 in TGS 2008.10.11」”が開催。765プロダクションと961プロダクションに所属するアイドルが登場し、ライブなどを行った。 - 東京ゲームショウ2008 バンダイナムコブース:ガンダム、アイマス、テイルズなど、人気作が目白押し
バンダイナムコブースは、毎年非常に多数の試遊タイトルを用意し、プレイするだけでも大変というイメージが強い。もちろん今年も、試遊可能なものだけで21タイトル、映像出展も含めると全34タイトルと、非常に豊富な出展タイトル数を誇っている。 - 東京ゲームショウ2008 SCEJブース:PS3とPSP、いずれも充実のラインアップ――SCEJブースリポート
今月はPS3もPSPも新型が発売されるとあって、おそらく土日に盛況を見せるのではないかと思われるSCEJブース。PS3、PSPともになかなか魅力的な新作がそろってきた感がある。期待の新作をいち早くチェックしてみよう。 - プロデューサーさん! 今度はPSP、しかも3バージョンが発売ですよ――「アイドルマスターSP」
アーケード、Xbox 360で人気の「アイドルマスター」がPSPに登場する。今回は3つのバージョンが発売予定で、それぞれに3人の個性豊かなアイドル候補生を収録。また、「デュオ」「トリオ」を組ませるのではなく、アイドルひとりを集中して育成していくスタイルに変更している。