E3 2009で何があったのか? まとめて読みたいあなたのために(後編):E3 2009総括(2/2 ページ)
ロサンゼルスで開催されたElectronic Entertainment Expo(E3 2009)を振り返る。後編ではSCEについて。
PSPラインアップ
- 「Motorstorm: Arctic Edge」(SCE/2009年秋発売予定)
- 「LittleBigPlanet Portable」(SCE/2009年発売予定)
- 「Metal Gear Solid: Peace Walker」(Konami/2010年発売予定)
- 「Resident Evil Portable」(Capcom/発売未定)
- 「Jak and Daxter: The Lost Frontier」(SCE/2009年発売予定)
- 「Dissida Final Fantasy」(Square Enix/2009年8月25日発売予定)
- 「SOCOM: U.S. Navy SEALs Fireteam Bravo 3」(SCE/2009年年末発売予定)
- 「Hot Shots Tennis」(SCE/発売未定)
- 「Fat Princess PSP」(SCE/発売未定)
- 「Hannah Montana: Rock Out the Show」(Disney/2009年8月4日発売予定)
「Hannah Montana: Rock Out the Show」は、LilacカラーのPSP(限定版)に同梱予定。会場はディズニーアイドルのタイトルに狂喜。
PlayStation Motion Controller(PSMC)
前日のマイクロソフトの「Project Natal」に対するSCEのモーションコントローラの実演があった。こちらもNatal同様具体的なソフトや発売日の発表はなかった(2010年春予定)。
短い棒状のコントローラ(マイク型?)をCCDカメラを使って認識するものである。コントローラをバッドに見立ててボールを打つ、ソードに見立てて振り回すデモ、ムチ、筆、などいろいろなデモが披露された。基本はEye Toyの技術である。対応ソフトの発表が待たれるところだ。
SCEのまとめ
多くのエクスクルーシブタイトルが発表された。2009年末〜2010年初にむけてのPS3およびのPSPのタイトルは期待ができる。「God Of War」シリーズは、マイクロソフトの「Halo」シリーズに匹敵するようなSCEの看板タイトルに育ちつつあることも感じられた。また、たくさんの大型タイトルの続編の発表もあったが、「Infamous」や「M.A.G.」、「Agent」など新規IPタイトルも多数見られたのは喜ばしいことである。
その中で記者一押しのPS3新規コンテンツは「Little Big Planet」に次ぐUCG「ModNation Racers」。デフォルメキャラによるレースゲームと言う設定は、いかにもライトユーザも入りやすい。シムシティの要領で整地をして、コース(オフロードにもできる)を作るのはもちろん、山や谷や湖を作ったり家を建てたりもできる。できたコースはアップロードして友人たちとレースをすることができる。ただ単に準備されたコースをレースして楽しむもよし、美しいコースやとてつもなく難しいコースを作って友人に自慢するもよし。発売が楽しみである。
ちなみに、「Final Fantasy XIV Online」には本当に驚かされた。PSP goはリークもあったため、会場も予期していたことだが、こちらは「サプライズ」以外の何モノでもなかった。
今回の目玉はPSP goとモーションコントローラであろう。ファーストパーティのカンファレンスで唯一新規ハードの発表をしたSCEであるが、コンテンツのデジタルダウンロード化が必至である流れを見ると、時代にマッチしたハードの到来と言えよう。残念なのは、PSP-3000との併売による価格面、ビジネス面での戦略が見えないことだ。今後の販売状況やSCEの政策を見守りたい。
モーションコントローラに関しては、今後3rdパーティを含めてソフトにどう生かしていくかが課題だ。しかしながら、タイミング的には任天堂に後れを取り、マイクロソフトに画期的なアイデアを抜かれ、「無難なコントローラ」との評価である。「PS2時代にEye Toy技術を製品化して、早い段階でモーションコントローラの先進技術を持っていたのにも関わらず、最後のエントリーになってしまったのは残念だ」との声も聞かれた。Wiiの「Wii Sports」に匹敵するようなマストバイタイトルの出現によるPS3の奮起に期待したいところだ。
E3総括
Expo自体は「ちょうどいいスケール」、これが現地での大方の評価だ。大きすぎず小さすぎず、コンパクトでありつつも豪華であったと言えよう。前述したが、3年前までのごった返すほどの人出でもなく、昨年一昨年の人影が疎ら、という状況でもなく、誠に「ちょうどいい」という言葉がぴったりの大きさであったと言えよう。
各社ブースも盛況であった。3rdパーティはソフトのイメージを使ったコスチュームを着たコンパニオンや着ぐるみなどを繰り出させ、爆音とは行かないまでもBGMに乗った華やかな雰囲気のブース構成を取っていた。
プラットフォーマ―はと言うと、マイクロソフトは、看板タイトル「Halo 3: ODST」のプレイを待つ長い列が印象的だった。もちろん、アメリカでBig Nと言われる任天堂は、大きなスペースにごちゃごちゃと試遊台を置かず、ゆとりを持ったブース作り(Wiiコントローラの特性上、スペースを使うからとも)に余裕が見られた。お隣のSCEはというと、今年は元気であったと言える。新型PSPはもちろん、タイトルもかなり充実しているためか各種タイトルのプレイアブルを待つ列が常に見られた。
スケールはかなり戻ったものの、残念なのは、Game Critics Awards Best of E3が発表されなくなったことだ。大きなE3の時にはショー中に発表&受賞セレモニーが行われていたのだが、E3が小さくなってから、後日発表が続いていた。本年も昨年同様、ノミネートが6月16日、発表が6月23日の予定だ。続報を待とう。
プラットフォーマーカンファレンス
3社とも甲乙つけがたいインパクトと安定感のあるカンファレンスだったと言える。プラットフォームの追加として、ソニーのPSP goが一番大きなニュースであったが、それにも負けないくらいのいろいろなサプライズがあった。Super Marioが4人のプレイヤーでプレイできる!という「New Super Mario Bros. Wii」、Team Ninjaによる「Metroid: Other M」、コントローラをまったく使わないMSの「Project Natal」、そしてまったく予想していなった「Final Fantasy XIV Online」などなど。
記者は今回のカンファレンスに共通する3つのキーワードを語りたい。
1. SNS
Xbox LIVEでの「Facebook Experience」や「Twitter」対応、DSiの「Facebook」へのデータアップロードなど、単なる「ゲーム機」としてではなく、PCやモバイル端末とのシェアにより、ソーシャルネットワークの中でのユーザの利便性を高めて「エンターテインメント機」として魅力を高める動きである。
排他的でクローズドであったゲームプラットフォームが、オープン化の傾向にあるのは、プラットフォーマーが方針を変えたのではなく、ユーザの多様化に対応することが使命となったという時代の流れであろう。
2.UGC
かなり前から取り沙汰されている言葉だが、ネットワーク対応に次いで、いよいよ本格的にコンテンツに含まれてくる可能性が高いと感じた。「Forza Motorsports」は前作でも車の外装アートをユーザが描いてアップロード、バーチャルな取引がされるなど盛んにされており、本作「Forza Motorsports 3」では自分のドライビングをビデオクリップにしてシェアできるなど、ユーザが与えられたゲームを単に遊ぶだけではなく、さらに友人に自慢したり、笑わせたりする道具にもなる。ソーシャルに広がっていくと言う意味では、上記SNS傾向にもつながって、ゲームタイトルという道具を使って、個人の楽しみ方を広げていく場を提供していると言えるだろう。
SCEのところで紹介した「ModNation Racers」や、DS向けの「James Patterson’s Women's Murder Club:Games of Passion」、DSi Ware専用タイトル「Mario VS Donkey Kong: Minis March Again!」なども、“ユーザーがゲームを遊ぶ”にとどまらず、“自ら作っていく”“シェアする”ところまでカバーされる。真の意味での「インタラクティブ」とはこういうことから進んでいくのかもしれない。
3.モーションコントローラ
Wiiのコントローラは発表された際に業界的には「異色」なものと判断された。なぜなら作り手がそれに慣れていないからだ。しかし、Wiiの爆発的なブームによって、ユーザが「直感的な操作」を歓迎していることが証明されたわけで、マイクロソフトもSCEも後手ながらこれらの開発に力を入れているということであろう。
マイクロソフトのProject Natalは「コントローラ」と言うべきハードが存在しない(カメラは必要だが)ところが画期的だ。まさにユーザーの動きを感知するだけ。ユーザーは何のペリフェラルも要しない。だた、実際にモノを持たずにコントロールしている気分になるのか、例えば、ハンドルを持たずに空回しをしてドライビング気分が味わえるのか? などの疑問がないわけでもない。
SCEのPSMCも含めて、任天堂の宮本氏が語った「ユーザーが快適に遊んでもらえるレベルまで落し込む」ところまで確認するまではコメントを控えたい。さらに言えば、技術的なものに加えて、ユーザを魅了するタイトルが必然であることは自明の理であろう。
マルチプラットフォーム化とチャレンジタイトルの出現
記者はプラットフォーマーのプレスカンファレンスしか参加しなかったが、3rdパーティ各社は精力的なプレスカンファレンスを行っていたようだ。1stパーティののHaloシリーズ、God of Warシリーズ、スーパーマリオシリーズに始まり、KONAMIのMetal Gearシリーズ、カプコンのResident Evil(バイオハザード)シリーズ、スクウェア・エニックスのファイナルファンタジーシリーズなどなどマルチプラットフォーム展開は日系のパブリッシャーに浸透してきたようだ。
マルチプラットフォーム化を積極的に進めているのを感じながらも、逆に限定したプラットフォームに専用タイトルを供給している様子が見られた。業界がまだチャレンジ精神を失っていないことの証明ではないだろうか。特に、Wii向けにハードコアタイトルは難しいのではないかとの評価の中、Wii向け「Dead Space: Extraction」(EA)やセガの「The Conduit」など、チャレンジは止まらない。
また、大型IPの続編だけに流れるかと思われたタイトル群も、Alan Wake(MS)、Heavy Rain(SCE)、Agent(Rock Star Games)など新規IPへのトライアルも継続している。
定番タイトルで利益を確保し、一方でチャレンジも怠らずに続けている、安定と攻めのバランスの良さの印象を強く受けた。北米のゲーム業界はまだまだ元気である。
あとがき
久し振りに、ものすごい距離を歩くExpoであり、3日の会期後足が棒のようになった。総括して60〜70%戻りのE3であった。集客数やパブリッシャーのリアクションを見ても、結果としては大成功と言えよう。
前述したが、北米のゲーム業界にまだ陰りは見られない。コントローラを含むインフラやスペックの移行にメーカーがうまく迅速に対応している様子が見られる。上述したが、デジタルコンテンツ化、UGC化などの流れは止まらない。この流れに日本のメーカーが遅れを取らないためにも、情報の迅速な処理と判断を願いたいところだ。
まったくの余談だが、プラットフォーマ―のカンファレンススケジュールに関してはE3開催前日にマイクロソフト、開催初日午前中に任天堂、ソニーが立て続けに行われるのが定例になっている。今年も同じ状況で、任天堂が10時30分くらいまで会場近くのClub Nokiaでカンファレンスを行い、多くの人がそこからシャトルバスでSCEのカンファレンス会場Shrine Auditoriumに移動したのだが、かなりギリギリの到着で、レジストレーションエリアは大混乱を極めていた。それによりカンファレンス自体が若干開始を遅らせてしまったのだ。後日SCEAに「どうしてこんなにキツイ時間でカンファレンスを行うことになったのか?」と質問したところ、この時間設定はESA(Entertainment Software Association:E3の運営を行っている)が指定するものでSCEAがコントロールできるものではない、とのこと。質問はESAにすべきだったと反省する記者であった。
カリフォルニアのすがすがしい青空の中行われたE3。来年も同様の形で行われる予定だ。E3の各社のカンファレンス、ブースの雰囲気を見れば、業界の勢いや各社の戦略も感じられる。また、現地パブリッシャーとの会話の中でも、将来の戦略の糧となる情報がそこかしこに散りばめられている、と感じた。今から考えるのはせっかちだろうが、また来年もここで業界人が集まって大きなイベントを行う。日本の業界関係者も、空気だけでもぜひ感じてほしいと考える。
関連キーワード
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