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国内初お披露目となる「人喰いの大鷲トリコ」――上田文人ディレクターに聞いてみた

E3で公開されたPS3用ソフト「人喰いの大鷲トリコ」が国内で初めて公開となった。会場では映像出展となったが、注目度も高かったようです。

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トリコってなんですか?

上田文人氏の趣味はツーリングです

 今年のE3での発表されたプレイステーション 3向けソフト「人喰いの大鷲トリコ」が、東京ゲームショウ会場で映像出展されている。「人喰いの大鷲トリコ」は、「ICO」や「ワンダと巨像」を手がけた上田文人氏が手がける最新作で、大鷲トリコと少年のふれあいを軸に、そこにさまざまな外的要因が絡んでくる内容となる。

 今回、東京ゲームショウ会場でディレクター/ゲームデザイナーを務める上田文人氏にお話をうかがう機会を得た。国内初お披露目となる心境を聞いてみた。


東京ゲームショウでは、新たに日本向けに製作された映像が用意されている

―― 日本初公開ということで、見どころと意気込みをお願いします。

上田氏 映像の内容自体は新しいステージとかではなく、「トリコ」の細かい機微や情報量に注目してほしいというものになっております。「ICO」や「ワンダと巨像」は海外の評価が日本以上に高ったのですが、僕は日本で生まれて育っていることもあり、日本の人に向けて作っているという意識があります。まず、日本の人に喜んでほしい。だからこそ、今回東京ゲームショウで発表できてうれしい。

―― その日本人向けといわれる部分は?

上田氏 (自分の作品が)海外でそれほど評価されているのかは分からないんです。ただ、意識的に風景も日本人が好ましいものになっていると思うし、自身が影響されたものも日本のものが多いので、それがミックスされて出ていると思います。影響を受けたものはたくさんあるのでそれが何かは言及しませんが、完成して時間が経てばインスパイアされたものなど言える時があるかと思います。

―― 今回の映像で注目してもらいたいところは?

上田氏 羽の細かい動きや顔の皮膚の動き、それに背景の草の揺れなど、PS3だからこそできる表現を注目してもらいたいです。やはり、映像だからこそ分かるPS3の表現力は特に見てもらいたい。当たり前に作ることが難しいんです。普通に動かすと、どうしても従来だと構図的に無理があって、動きと動きの間に不自然な飛びが出てしまっていたり、首の動かす動きや速度が物理法則に則っていなかったりしたのですが、PS3では極力違和感ないように開発しています。僕自身、昔から動物を飼っていて、それこそ犬や猫、鳥、ヘビ、サルなど、身近で飼ってきたからこそ、蓄積しているものがあると思うんです。そうした蓄積を存分に引き出せるハードでの開発を進めているところです。これまで、出したかった情報が表現できなかったフラストレーションがあったのですが、PS3ではより現実に近付ける、実在感のある世界が構築できるのがよかった点です。ただし、できることが多くなったために作業量が増えているのも事実です。できることがありすぎてどう取捨選択するかがこれからの課題かもしれません。

犬でもなく猫でもなく鳥でもない架空の動物「トリコ」

―― 開発状況はいかがですか?

上田氏 苦戦はしています。毎度毎度のことですが(笑)。特にトリコの動きを制御する部分に細心の注意をはらっているので、いかに自然に見せるかがコストがかかっていますね。

―― トリコと少年がゲーム中でどうかかわってくるのかを教えてください。

上田氏 常にかかわっているんです。進行にもかかわっているし、進行に関係していないところでもつながっています。2つで1つというか。もちろんバラバラで動いているので、少年がトリコに乗っかったら大きな生物を操作するのではなく、独自にトリコは生きているんです。

―― 今回、ロゴが正式に決定したそうですね。

上田氏 キャラクターデザインもそうですが、いろんな要素がミックスしている作品です。ある程度ミックスしていますが、完全に混ぜてない。違和感を残すよう混ぜているのは、デザイン的なフックであったり、デザインの制約でなっているからです。ロゴもそれに準じていまして、いろんなものがミックスされています。字体的には3つほどが混ざっています。トリコも鳥や犬や猫などがミックスされていますし。

―― 気になったのですが、トリコって何類になるのでしょうか?

上田氏 なんだろ(笑)。一応、大鷲と呼ばれているので、一応鳥なんでしょうか? でも鳥とは違うので……鳥っぽい? くらいで押さえておいてください。

―― こうしたトリコのような架空の動物がまだ出てくるのでしょうか?

上田氏 それは言えません。ただ、こうしてトリコがいるくらいですから、いるかもしれませんね。

―― 独自の世界観についても気になります。

上田氏 今まで当たり前のように構築してきているだけなんです。特別、ほかと違っていることをしている意識はありません。そのゲームの中での実在感を重視しているので、そこを皆さんにも体験してほしいし、感じてほしい。よくヨーロッパ的な風景や世界観だと言われることがありますが、どちらかというとレベルデザインの設計の都合であったり、光源を確保するためにここに窓が必要だとか、解像度が上がったがゆえに画面の間を持たせる必要に迫られ、草をはやしてみたり構造物を置いてみたりとか、そういう構造からできているものが多いかと思います。すべてに理由があるというのでしょうか。

―― 過去作には「寂寥感」のようなものを感じることがありましたが。

上田氏 やはりキャラクターが多く出せないなどのゲームデザインの制約やリアリティの確保のために、これまでの作品のような雰囲気しか出せなかったという側面があるかと思います。ただ、「人喰いの大鷲トリコ」は、動物がテーマなのでこれまでのタイトルとは雰囲気が変わっているし、コミカルな部分も出ているんじゃないかと思います。ゲームプレイヤーが楽しみに待っていてくるからこそ我々の励みにもなりますし、その期待に応えるためにも頑張ります。もう少し待っててください。

―― 2010年には発売できそうですか?

上田氏 僕自身、のんびり作りたいとかまったくなくて、すごくせっかちな性格なので早く作りたいと思っているんです。「ワンダと巨像」も「ICO」のマスターアップのころに絵コンテを描き始めたのですが、「人喰いの大鷲トリコ」も「ワンダと巨像」の海外版が終わる頃に「次はこういうのが作りたい」とおもむろに考え始めたんです。自然に次の構想が浮かんできたというか。NPCとのふれあいを含め、前作、前々作でできなかったことも本作ではできるようになっているものも多いので、そのへんも期待してほしいです。


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