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「東方見文録」弾幕系じゃない方の“東方”ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(3/3 ページ)

連載第83回は「東方見文録」。ナツメのファミコン参入第1弾でしたが、カルトな展開のアドベンチャーゲームとして、翌年発売の「アイドル八犬伝」と並び称される存在でした。エンディングも衝撃的。

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 元の首都・大都に着いた文録とマルコは、チンキンに謁見し、アフマットのクーデター計画を伝えると、上都に取って返す。そしてその場にあった材料を混ぜて黒色火薬を作り、竹筒をバズーカにして宮殿に砲弾を発射! 一撃で木っ端微塵に破壊してしまう。

 この展開も荒唐無稽に見えるが、火薬を作って竹筒をバズーカにするくだりは、スタートレック「宇宙大作戦」の、「怪獣ゴーンとの対決」という話に出てくるらしい(わたしはスタジオぬえの「宇宙でパズル」という本で知った)。

 かくしてフビライ・ハーンへの謁見を果たした2人。文録は望みどおり、元国の船団とともに“黄金の国ジパング”へ向かうこととなる。ただし船団の目的は、ジパングとの交易ではなかった。

皇太子チンキンも実在の人物なのに、このゲームでは「おチビちゃん」扱いである
早朝バズーカよろしく上都の宮殿を攻撃。一発で宮殿が影も形もなくなるほどのすごい威力だ
フビライ・ハーンに謁見。このゲームが発売される前の年まで総理大臣だった中曽根さんに似てる

文録! 文録! 助けて文録!

 この記事を書くにあたって、ネットで「東方見聞録」について調べてみたが、調べれば調べるほど、このゲームに対するイメージが変わってきた。破天荒に思えるストーリーにも、その多くに元ネタがあって、作り手が「東方見聞録」をよく研究していることがうかがえるのだ。今ネットで調べてもあまり情報が出てこない、マルコ・ポーロの足跡や、あの時代の中国・中央アジア情勢を、当時よくこれだけ調べたなあと思う。

 アドベンチャーゲームとしても、意外にいい出来。プレイ時間は短いが、音の高さを使って抜ける迷路とか、2人がメッセージウィンドウに逃れる演出とか、場面によって変わる枠のデザインとか、けっこう凝っている。正しい選択肢を選ぶと、効果音が鳴るという親切さも見逃せない。

 もっとも、無理やりな展開や、危なすぎてここには書けないネタが、どっさりあるのも事実。最後の第5章に入ると、一層そういうのが増えて、“プレイヤー置いてけぼり感”が強くなっていく。

 文録とマルコが乗った船は、フビライがジパング征服のために遣わしたものだった。つまり元寇、弘安の役である。マルコ・ポーロが元寇に同行しているのも変だが、この章のツッコミどころはそこじゃない。

 本来この戦では、日本側の激しい抵抗と“神風”によって、元国の船団は壊滅的な被害を受ける。だが航行中、一向に神風が吹かないことで、文録は「このままでは日本が占領されてしまう」と心配する。これは彼の思い違いで、神風が吹くのは元軍と日本軍が戦端を開いた後のこと。だが文録はあせってしまい、タイムマシンを遠隔操作して、強引に神風を呼び込もうとした。

文録のせいでタイムマシンが暴走。芸者が空を飛び交い、日米貿易摩擦の波が渦巻き、上越新幹線がマッハ3で走る
いかに14万の大軍といえども、戦闘機の砲撃の前にはひとたまりもない。マルコも巻き込まれてしまう

 詳しくは書かないし書けないが、一応史実どおり元国の船団は壊滅する。だが問題はその後だ。まずマルコがこの戦闘に巻き込まれて姿を消す。文録はジパングの岸に打ち揚げられるが、タイムマシンの暴走による時空のひずみに陥ったジパングは、時代も世界観もぐちゃぐちゃ。文録が思い描いていた鎌倉時代の日本とは、遠くかけ離れてしまっていた……。

 ファミコンの変てこアドベンチャーゲームとして、「アイドル八犬伝」(トーワチキ)と並び称される「東方見文録」。だが「アイドル八犬伝」と大きく違うのは、ハッピーエンドで終わらないことだ。

 わたしは個人的に“鬱展開”と“人死に”が嫌いなのだが、このゲームの場合はあまりにハチャメチャ過ぎて、鬱な気分になるよりも、あ然とする方が先だった。

 もっとも、この変なジパングをもうちょっと見てみたい気もするので、文録がこの国を探索しつつ、歴史を正しい形に戻していくような、続編があったら良かったのになあと思う。

 そして実はマルコが生きていて、ゲーム中盤で文録と再会する。そういうストーリーを後ろにつなげたら、「東方見文録」の第5章も、それほどおかしな話ではないように見える……かなあ。

ジパングで文録には、恐ろしい運命が待ち受けていた。タイムトラベルもののSF作品に、あり得る展開かもしれないが
衝撃のエンディング画面。このままスタッフ紹介に入って、ゲームは終わる

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