第4回ピンチの後にはチャンスあり! プレイヤーへの爽快感を高める「逆転の法則」:なぜ、人はゲームにハマルのか?(3/3 ページ)
スポーツでもゲームでも、味方と敵とで好守が逆転するシステムは実はコンテンツを面白くする普遍的な要素なのかも?
さらにはRPGにおいても、逆転のアイデアを取り入れたことで面白さが増した例があります。勘のいい人ならもしかしたらピンときたかもしれませんが、1994年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)がスーパーファミコン用ソフトとして発売した「ファイナルファンタジー6」がその答えのひとつです。
「FF6」では、残りのHPが少なくなった味方はうずくままって「瀕死状態」になってしまいます。敵にやられないようにするためには、魔法やポーションなどのアイテムを使用してHPを回復させるのが当然セオリーとなりますが、同時の多くの味方が瀕死になってしまうと、誰か1人を回復する間にほかの仲間が死んでしまう、などというシチュエーションが往々にして(特に対ボス戦においては)起こります。
そこで考案されたアイデアが、瀕死のときに限り「たたかう」コマンドを実行すると16分の1の確率で各主人公キャラごとに固有の強力な必殺技が発生するというもの。ムービーを見れば明らかなように、(上から2番目のキャラの)ヤリを使った通常攻撃よりもはるかに大きなダメージを与える「モーグリらんぶ」が見事炸裂して、敵にトドメを刺していますよね。
実はこの必殺技、ソフトに添付されたマニュアルにはどこにも明記されていない、いわゆる隠し技となっていました。しかし、あらかじめプレイヤーに知らせなかったことによって、「危うく全滅するところを助かった……」とか、「よくぞピンチを救ってくれたな、偉いぞ○○!」などというように、ホッとしたり感動した思い出が今なお鮮烈に記憶されることになっているのではないでしょうか? また、対ボス戦のように難易度が高いバトルにおいては、プレイヤー側の形勢が不利になってしまっても、「もしかしたら必殺技が出て助かるかもしれない……」とプレイヤーが一縷(いちる)の望みを託しつつ、最後までモチベーションを維持する効果もあるでしょう。
ちなみに、HPが減ると隠し必殺技が使えるようになる例はこれ以前にも存在し、1992年にSNK(現:SNKプレイモア)が発売した対戦格闘ゲーム「餓狼伝説2」にも導入されていました(※ただし、技を出すためには各キャラクターごとに固有の隠しコマンドを知っていることが必要ですが……)。また最近の作品においては、HPが減ると自動的に攻撃力が大幅にアップする「レイジ」と呼ばれるシステムを取り入れた「鉄拳6」も、逆転の要素を生み出す作品の例として挙げられるかと思います。こうして見ると、ジャンルを問わずいつの時代でも「逆転」というキーワードは欠かせないもののようですね。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
(C)1994 スクウェア
以上、ビデオゲームにおける「逆転の法則」はお楽しみいただけましたでしょうか? 次回以降も、ゲームの面白さの秘密やゲームニクス的発想によるコラムを(不定期ながらも)お送りしていきますので、どうぞお楽しみに!
今回使用したソフトはココで遊べます!
- 「パックマン」PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.1」
- 「マッピー」PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.2」
- 「ボンジャック」:Wiiバーチャルコンソールアーケード(配信中)
- 「ギャラガ」PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.1」:Wiiバーチャルコンソールアーケード(配信中)
- 「ギャプラス」:Wiiバーチャルコンソールアーケード(配信中)
- 「ファイナルファンタジー6」:スーパーファミコン、ゲームボーイアドバンス、プレイステーション用各ソフト
著者プロフィール
鴫原 盛之Morihiro Shigihara
1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。
(近況・私信コメント覧)
「今年5月より発売になりました「デジタルゲームの教科書」におきまして、筆者は第16章「アーケードゲーム業界の歴史と現況」の執筆を担当いたしました。ゲーム業界への就職、または転職を考えているみなさんには特にオススメですよ。ぜひご一読を!」
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