第5回 ゲームをより面白くする「4ステージ1セットの法則」:なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/2 ページ)
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の5回目は、ゲームに秘めたる「4」の数字を紐解きます。
この法則を使ったゲームの存在は任天堂に限った話ではありません。「スーパーマリオ」よりも前の1984年に、ナムコ(現:バンダイナムコゲームス)が発売した「パックランド」がその最たる例ではないでしょうか。
「パックランド」は、敵のモンスターに捕まらないように主人公のパックマンを操作してゴール地点へ到達すればステージクリアとなるアクションゲームです。全48ステージで構成され、4ステージごとにひとつの「TRIP」という単位でステージを区切っています。1〜3面までは画面を左から右へと進み、3面をクリアするとフェアリーの女王と思しきキャラクターが現われて、パックマンが迷子になった妖精を送り届けてくれたお礼に空を飛べる「魔法のクツ」をプレゼントしてくれるうれしい演出があります。すると次の4面に限り「魔法のクツ」を履いた状態でプレイできるとともに、これから帰り道を進むということで進行方向が右から左へと逆転します。そして無事ゴール地点にたどり着くとそこにはパックマンの自宅があり、妻のミズ・パックマンとベビーがお出迎えをしてくれます(※TRIP2以降も同様)。また、動画を再生した方はすぐに気づいたかと思いますが4面に限りBGMが異なっており、プレイヤーは一刻も早くゴールに着きたくなるような気分にさせてくれます。
本作もわずか4面という短い時間の間にきちんとしたストーリー性を盛り込み、プレイヤーに大きな感動と達成感を与える完成度の高さは今なお色あせることがありません。筆者も初めて「魔法のクツ」をもらったり無事自宅に戻れたときの感動は、あれから20年以上が経過した現在でも忘れがたい思い出として残っています。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
もうひとつ、カプコンが同じく1985年に発売した「戦場の狼」にも実は「4ステージ1セットの法則」が存在しています。まずオープニングのシーンで主人公のスーパージョーは味方のヘリコプターによって戦場に運ばれると、飛び去るヘリに向かって手を振って見送るところから戦いがスタートします。1〜3面をクリア後にはスーパージョーがタバコを吸うなどして束の間の休息をとる演出があり、そして4面のラストの場面で激しい攻撃に耐えて見事勝利するとファンファーレが鳴ってプレイヤーを祝福するとともに、先ほど見送ったヘリが今度は出迎えに来てくれて新たな戦場へと再び送り届けてくれるようになっています。本作でも4面になるとBGMが変わり、さらに終盤になると敵軍がスーパージョーの侵入に対して警戒を促すサイレンの音が鳴り響き、プレイヤーにさらなるスリルと臨場感を高めてくれる素晴らしい演出も見逃せないところです。
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これまたナムコが1985年に発売した「メトロクロス」は、ちょっと変わった「4ステージ1セットの法則」を取り入れた作品です。本作は制限時間をオーバーしないうちにゴール地点まで到達すればステージクリアとなるアクションゲームで、1〜3面までは各ステージごとに残り時間があらかじめ設定されています。で、ここで注目していただきたいのは、4面の開始時点まで1〜3面までの残りタイムを画面右下にずっと表示させ続けていること。これはいったいなぜだと思いますか?
その答えは、1〜3面までの残りタイムの合計が4面の制限時間にプラスされるシステムになっているから。つまり3面までのステージをなるべく速いタイムでゴールするほど、4面の攻略がよりしやすくなるという戦略性が生まれる仕掛けになっているというワケですね。
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また今回は動画や写真を用意していませんが、このように4面を1セットで構成するという例は他にもいろいろ存在し、古いところではテーカン(現:コーエーテクモゲームス)が1981年に発売したシューティングゲームの「プレアデス」などの作品にも見られます。さらにカプコンの「1942」では、4面ごとに難易度を低く抑えた「ポイントアップステージ」を登場させ、ゲームにメリハリを持たせる工夫がなされている例もあります。
プラットフォームを問わず、最近のゲームでは4ステージごとに区切って変化をつけたような作品はほとんど見る機会がなくなった感がありますが、今回取り上げた作品をあらためてプレイしてみたところ、その面白さは今も健在であると率直に思いました。もちろんステージ構成だけがすべてではありませんが、ゲームをより面白くするひとつのセオリーとして「4ステージ1セットの法則」は確実に存在すると言えるのではないでしょうか。
今回登場したソフトはココで遊べます!
- 「スーパーマリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「ドンキーコング」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「ドンキーコングJr.」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「パックランド」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.5」
- 「戦場の狼」:PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
- 「メトロクロス」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.4」
著者プロフィール
鴫原 盛之 Morihiro Shigihara
1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。
Twitterは http://twitter.com/m_shigihara です。
(著者近況)
「今年5月より発売になりました、「デジタルゲームの教科書」におきまして、筆者は第16章「アーケードゲーム業界の歴史と現況」の執筆を担当いたしました。ゲーム業界への就職、または転職を考えているみなさんには特にオススメの内容となっておりす。また、フルカラーページになったiPhoneアプリ版も発売していますので、こちらもぜひご利用下さいね!」
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