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第11回:開発者VSプレイヤーの知恵比べ? あの手この手で編み出されたボーナス得点システムの数々なぜ、人はゲームにハマルのか?(3/3 ページ)

「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の11回目は、ユニークなボーナスシステムの魅力について。

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 スコアを稼ぐために、より高度な攻略パターンが要求される例としては1988年にセガ発売したアーケード用アクションゲームの「ゲイングランド」があります。本作では、冒頭で紹介した敵編隊の全滅ボーナスをさらに発展させた、ステージ内に出現する敵をすべて倒してからクリアするとスペシャルボーナスが入るというシステムが導入されています。全滅クリアに最初に成功したときはボーナスとして1万点が入り、以降のステージでも全滅クリアを達成するごとに2万点、3万点…とスコアがどんどん増え、最高でなんと100万点までアップします。よって、このゲームを極めたいと思ったらならば、どんなに苦手な敵であっても確実に倒すための攻略パターンを作らなければいけないことになります。

 同様に、1996年にエイティング(ライジング)が発売した「蒼穹紅蓮隊」でも、ステージ内に出現した敵をすべて倒してクリアすると「全敵破壊!」と表示されて特別ボーナスが入り、プレイヤーを祝福してくれる嬉しい演出があります。

ステージ内の敵を全滅させると高得点が獲得できる「ゲイングランド」。ハイスコアを出すためには地道な努力が必要です

※Wiiバーチャルコンソール版(メガドライブ版)を使用。アーケード版とはボーナス得点の数値が違いますが仕組み自体は同じです。
(C)SEGA

 ハイスコアを目指そうとする上手な人に対して強力な攻撃をなるべく使わせない、という例をこうして見てみると、「キミはこのボーナスがはたしてゲットできるかな?」という開発者からの無言のメッセージが聞こえてくるかのようです。プレイヤーはゲーム画面内に出現する敵とともに、何だか開発スタッフからの挑戦に対しても同時に戦っているような気分にさせられてしまいますね。

4:世紀の大発明!? 発想の転換から生まれた驚愕の隠しボーナス

 まさに目からウロコの、あっと驚く発想の転換による隠しボーナスがある作品として真っ先に取り上げるべきは、おそらくタイトーが1989年に発売したアーケード用3Dシューティングゲームの「ナイトストライカー」になるでしょう。

 シューティングゲームといえば、ショットで敵を倒して得点を稼ぐというのが不文律のシステムになっているハズなのですが、本作ではショットを一切撃たずに出現する敵および敵弾や障害物をすべてかわしてステージをクリアすると、なんと「パシフィスト」と呼ばれる隠しボーナスが入るという驚愕のアイデアを搭載しています。しかも、複数のステージでこのボーナスを連続して成功させると、得点がさらに上昇するようにもなっているのです。

 本作はこの隠しボーナスの存在によって、プレイヤーに対してハイスコアのさらなる更新を目指すモチベーションを与えるのと同時に、同じゲームでも今までとはまったく違う新しい遊び方を推奨する効果も生み出していると言えるでしょう。実際、本作では敵が誘導弾を撃ってきたり、あるいはコース上に壁や障害物が出てきて逃げ場が狭くなる場面がひんぱんに登場するので、これらを避けるパターンを作るだけでもゲームが十分に楽しめるようになっています。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

ムービー:「ナイトストライカー」
※PS2版「タイトーメモリーズ2巻」を使用。
(C)TAITO CORP. 1979-2005

 まさにコペルニクス的転回なアイデアの「倒さないボーナス」ですが、実は「ナイトストライカー」が元祖というわけではありません。その発売からさかのぼること5年前、同じくタイトーが1983年に発売したアーケードゲームの「ちゃっくんぽっぷ」にも同様の隠しボーナスがあるのです。

 本作は主人公ちゃっくんを操作して、爆弾を使って敵の「もんすた(※モンスターの誤植ではありませんよ。念のため…)」たちを倒しつつ、オリの中に閉じ込められたハートを開放してから出口まで到達すればクリアとなるアクションゲームです。クリア後にはリザルト画面が表示され、「もんすた」および孵化する前のタマゴをいくつ倒したのかがわかるようになっていますが、実は敵およびタマゴを1匹も倒さずにクリアすると、なんと2万点のボーナスに加えて主人公のストックが増えるという出血大サービスの隠し技が存在します。

 また、出現した「もんすた」を全滅させてからクリアすることでも5千点のボーナスがもらえるようになっています。ただし、タマゴの状態のときに「もんすた」を倒した場合はボーナスがもらえませんので、高得点を狙うためには相応のリスクが生じることになります。とはいえ、やはりエクステンドによってちゃっくんのストックが増えるシステムが存在する以上、プレイヤー心理としては多少の危険を冒してでもボーナスを狙いたくなってしまいますよね?

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

ムービー:「ちゃっくんぽっぷ」
※PS2版「タイトーメモリーズ下巻」を使用
(C)TAITO CORP. 1978-2005

 なお、このような「倒さないボーナス」の例はタイトー以外の作品でも見ることができます。1987年にURLが発売したアーケード用アクションゲーム「忍者くん阿修羅ノ章」の5面や、1986年にデータイーストが発売したファミリーコンピュータ用レーシングアクションゲーム「バギーポッパー」においても、やはり敵を一切倒さずにゴール地点へ到達すると隠しボーナスが入るようになっています。

 さらに1991年にセガが発売したアーケード用シューティングゲーム、「コットン」のボーナスゲーム(※本作では「ティータイム」と呼びます)でも似たような例があります。ボーナスゲーム中は、上空から降ってくる得点アイテムの「湯のみ」を取った分だけスコアが増えるようになっているのですが、実はアイテムを1個も取らずに全部避けると、普通にアイテムを集めたときよりも高得点となる2万点の隠しボーナスが入る裏技があるのです。これも発想の転換が生み出した好例と言えるでしょう。

「忍者くん阿修羅の章」では、5面で敵を一切倒さずにクリアすると隠しボーナスが加算れます。いざやってみると意外と難しいのですが……

(C)1987 UPL

 それでは、今回はここまで。ちょっと長くなりましたが、みなさんお楽しみいただけましたでしょうか? 当コラムへのご意見・ご感想などもお待ちしております。ぜひ次回もお楽しみに!

今回登場したソフトはココで遊べます!

  • 「エグゼドエグゼス」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「ソンソン」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「1943」:PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「コズモギャング・ザ・パズル」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「スペースインベーダー」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「タイトーメモリーズ下巻」
  • 「パックランド」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.5」
  • 「メトロクロス」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.4」
  • 「マッハライダー」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「首領蜂」:PS用ソフト「首領蜂」ほか
  • 「ゲイングランド」:Wiiバーチャルコンソール(※メガドライブ版)
  • 「ナイトストライカー」:PS2用ソフト「タイトーメモリーズ2下巻」
  • 「ちゃっくんぽっぷ」:PS2用ソフト「タイトーメモリーズ下巻」
  • 「忍者くん 阿修羅ノ章」:Wiiバーチャルコンソール(※ファミコン版)

著者プロフィール

鴫原 盛之 Morihiro Shigihara

1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。

 Twitterは「@m_shigihara」です。

著者近況

 月日が経つのは早いもので、小生がゲーム業界で仕事をするようになってからちょうど今月でまる18年となりました。初めて書いた記名原稿が某スーパーファミコン用ソフトの紹介記事だったことを考えると、寄る年波を痛感せずにはいられない今日この頃です。

 そんなオッサンな私ではありますが、「ブロック崩し」や「スペースインベーダー」に衝撃を受けた少年時代から現在に至るまで、ゲームがもっとうまくなりたいという気持ちを今なおずっと持ち続けていたりします。と、言いつつ、ムービーおよび画像の収録中にNGを出しまくって何回も撮り直しをするハメになったのですが(苦笑)……。


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