ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
ニュース

ガーミン、ForeAthlete610でランニング! 心拍数、健康維持に適切な運動についてスポーツ生理学の専門家に聞く散歩するガジェット(2/3 ページ)

腕時計タイプのGPS内蔵ランニングコンピュータ、ガーミン、ForeAthlete610とオプションのハートレートセンサーを使って健康維持のための運動にトライ! 運動と心拍数の関係や、健康維持のための適切な運動とは。

PC用表示 関連情報
advertisement
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

健康を維持するための適正な運動

―― いま運動の「きつさ」というお話がありましたが、健康を維持するうえで適正な運動の「きつさ」とはどういうものなのでしょうか?

藤牧先生 せっかく運動する習慣があっても、楽過ぎたり、きつ過ぎたりすると効果が上がりません。でも、めんどくさがらずにスポーツ生理学に基づいた正しい考え方でちょっと手間暇かければ、ちゃんと運動の効果が現れるようになるんです。効果のある適正な運動は、運動の「きつさ」を数値化した、「運動強度」を知ることで実現できます。

 健康維持のために行う運動として、最も推奨されるのが有酸素運動で、適切な「運動強度」で行うことが重要になります。有酸素運動は連続でも、休憩を取りながらでもトータルの運動量を多くすることで効果が上がりますが、運動が「きつい」と継続できませんから、運動量が減ってしまうのです。激し過ぎる運動は心臓に負担になりますし、疲労が残ってしまい、週3回運動するつもりがついつい週1回、月数回になってしまいがちです。

 運動の「きつさ」は、最高心拍数に対する比率で決まります。最高心拍数が200の人が160で運動するときと、最高180の人が144で運動をするときであれば同じ程度の「きつさ」ということができます。しかし、同じ運動をして、Aさんが140、Bさんが150だったとしても、Bさんのほうがきついとは限らないのです。Aさんの最高心拍数が170、Bさんが190なら、Aさんのほうが「きつい」はずです。

 適度な運動をする際の目標心拍数の表し方には2種類あります。「その人の最高心拍数に対して何%」という表し方である%HRmax(percent of Maximal Heart Rate)と、心拍予備量(最高心拍数と安静心拍数の差)であるHRR(Heart Rate Reserve)を求めその何%になるかという表し方である%HRRです。

 最高心拍数が180、安静心拍数が70なら、心拍予備量は110になります。この人が、心拍数135で運動していたら、75%HRmaxになります。このとき、安静より65(135-70)拍上昇していることになり、それは、心拍予備量の59%(65÷110=0.5909)ですから、59%HRRになります。%HRmax法では安静状態が39%(70÷180=0.388)となります。「今、座っている状態で39%です」というと、ちょっと違和感がありませんか? %HRmax法だと感覚や他の指標とズレが出てしまうんですね。%HRR法であれば安静時は0%になりますから、ちょっと計算が面倒に感じてしまうかもしれませんが、%HRmax法よりも感覚的に分かりやすい指標だといえるでしょう。

 健康維持のための運動は、100%の全力に対し50%程度(40から60%)の運動強度が良いとされています。この場合、%HRR法なら125(114から136)%程度で運動すれば良いことになります。一方、%HRmax法では、69%(63から76%)程度になります。

―― 適正な運動をするための、具体的な手順を教えていただけますか?

藤牧先生 年齢40歳、安静心拍数70の場合を例にした、実用的な手順は以下の通りです。

1. 220マイナス年齢で最高心拍数を推定します。

 40歳なら、220−40=180となります。

2. 安静心拍数(手首か胸で1分間触診)を測り、心拍予備量を求めます。

 安静心拍数が70なら、心拍予備量は180−70=110です。

3. 50%HRRを算出します。

 心拍予備量×目標強度+安静心拍数ですので、110×0.5×70=125です。

4. 心拍計を装着して運動し、125で問題ないか確認します。

 まず、本人が感覚的に「きつすぎず、楽過ぎず、ややきついの一歩手前くらい」という状態であるかを確認します。次に運動中、呼吸を意識せず会話が可能かを確認します。この2点が問題ないならば適度な運動だといえるでしょう。

 もし楽過ぎるなら、+5拍、まだ楽なら、さらに+5拍、もしきつい感じがするなら、-5拍、それでもまだきつければ、さらに-5拍していきます。±15拍(110〜140の間)に収まると思いますが、この際に15上げてもまだ楽だったり、15下げてもまだきつかったりと15以上の差があった場合、念のためスポーツ専門医に相談することをお勧めします。個人差だったということならば良いのですが、心臓の疾患が見つかったりすることがあるためです。

5. その心拍数を目標に、少し長い時間運動を続けます。

 目標心拍数が適正ならば、20分以上楽に運動できるはずです。

 このように適切な目標心拍数で運動することで、きつ過ぎて運動嫌いになるということがなくなり、運動しても運動の効果が上がらないということがなくなります。ただし、先ほども言ったように、個人差というものが必ずあって例外的に心拍数が上がりにくい人もいます。それに対して、かなり負荷がかかっているのに「目標心拍数に達していないから、もっとやらなきゃ!」とより激しい運動を行うのは危険なんですね。また数値だけを目安にしてしまうと、本当はもうちょっとがんばったほうが効果が上がるのにその手前でやめてしまう、ということにもなりかねません。最初は、「楽でもなく、きつくもない」適度な運動を、できれば30分以上、週3回程度行うのを目標にすると良いのではないでしょうか。

―― ほかに健康維持のための運動をするうえで、注意すべき点はありますか?

藤牧先生 やはり最初は弱い運動から始める。楽な運動を続けるということですね。ウォーキングならば1人でせずに、2人以上で会話しながらすることです。そのとき、普通に会話できるペースならば良いのですが、途切れ途切れになってしまうようなら、ちょっときつい状態、心臓に少し無理がかかっています。ペースを落としてください。この方法は何も使わずにできるのですが、心拍計があれば「ちょっときつい」という状態の心拍数を確認してみます。そこからペースを落とした状態の心拍数も確認しておき、20分なり30分なり続けてもそのままの心拍であれば問題ありません。きついペースで運動を続けていると心拍数は上がります。

 運動を続けていると、どんどん慣れてしまいます。ウォーキングを始めた人がいて、最初は5分、10分で息切れしていたものが、1時間歩いてまだ時間があるなら、その後はストレッチや軽い筋トレをしたほうが効果があります。ウォーキング、ジョギングなど有酸素運動と筋トレとストレッチをバランス良く組み合わせるのが良いのです。同じ運動ばかりして身体が慣れてくるとエネルギー消費量が減ってきて、同じ時間やっても効果が薄くなるんですね。筋肉が弱くなると骨も弱くなるのですが、人間の身体はおもしろいもので、筋肉を使うとそれだけ骨にも力がかかるので骨も強くなっていくんです。ウォーキングだけだと、あまり筋肉が使われないので骨の強さも維持てきないんですね。ストレッチも難しいことはないんです。イスに座ったまま、ほかのイスに脚を載せて伸ばすだけでも普段なにもしていない人にとっては、十分なストレッチになっているんですね。

 水分に関しては、脱水症状にならないようにスポーツ飲料などを飲むのが良いのですが、これも程度問題です。通常の20、30分のトレーニングならまずないでしょうが、長距離トレーニングなどであまりに水分を補給しすぎてそれがただの水だったりすると、一時的に血液中のナトリウムが欠乏して低ナトリウム血症になる恐れもあります。特に5時間、6時間も走るようなマラソンランナーは、汗で2リッター水分を失って、水を3リッター補給して、走る前より体重が増えていました、ということも実際にありますから注意が必要ですね。何事もほどほどにということです。

 あとは頭で考えず、身体の反応に意識を向けることです。「なんらかの違和感を感じる」「ちょっと気分が悪い」というときは、休憩を取ったり、その日の運動は休んだりということですね。心拍計があれば、運動中に「いつもと同じ運動をしているのに心拍数が高い」とか、運動後に「いつもと同じ時間で心拍数が戻らない」とか自分の身体の疲労度や不調に気づくこともできます。

 いろいろな種類の運動を組み合わせるのも効果的ですね。ランニングをしたりすると着地衝撃によって、筋肉の「線維」や毛細血管が破壊され、人体がそれを修復するのに少し時間がかかります。ですから、毎日ランニングをしていると修復の時間がなくなってしまうんですね。そこで、ランニングをした次の日には自転車で走るとか水泳をするとか、ランニングに比べて筋肉に負担がかからない運動を組み合わせるのです。ハードな運動をする日は、週3日ぐらいにするんです。

 ちょっとがんばったなというときは、運動後のケアもしたほうが良いでしょう。軽めに包帯を巻いて固定したり、軽く冷やしたり、心臓より高い位置に上げたりといった怪我の応急処置と同じことを運動で痛んだ毛細血管や筋肉をいたわるためにするんです。ピッチャーが投球後にアイシングするのと同じですね。そうすることで疲れが残りにくくなったり、回復が早くなったりするのです。

―― ダイエットに効果的な運動についてはどう考えれば良いのでしょうか?

藤牧先生 きつい運動では体内の糖質が使われ脂肪は使われないといわれますが、連日長時間運動するスポーツ選手でもない限り、きつさとダイエット効果はあまり関係ないのです。とにかく念頭に置くべきは、トータルカロリー消費量です。運動は細切れでも、1回に集中的にしてもトータルの運動量が同じなら一緒なんですね。

 ジョギングしたときのカロリー消費量は体重×距離で算出できますから、体重60キログラムの人が1000メートル走ったら60カロリー消費しますが、一気に走ったら疲れて、それだけの消費で終わってしまいがちです。ですから、走るのが得意な人ならゆっくりペースで長く走るのが良いですね。それができないなら、休み休み走れば良いのです。

 例えば、軽く100メートル走り100メートル歩く、また100メートル走り100メートル歩くというのを20セット繰り返したとします。そうすると単純に走った分だけ考えても、トータル2000メートル、消費カロリーは120カロリー、歩いた分もカロリーは消費されるわけですから、その分を計算すると200カロリー程度になるんですね。本当にまったく運動していない人なら、「ウォーキングしてみて、無理がなければちょっと走ってみる」ところから始めると良いでしょう。このことからも、ダイエットにも適正な強度(楽過ぎず、きつ過ぎず)の運動が効果的ということがいえます。

 東北大学が行った調査で運動習慣のある人はない人に比べて、3%医療費が安いというデータもあります。国民個人個人の健康も大事なことですが、日本の未来のためにも国民一人一人が適正な運動を心がける必要があるんですね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る