あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 実践編:大日本技研に聞く(4/6 ページ)
ワンフェスから見た版権許諾の可能性とは。そしてそれを利用する心構えとは……。アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のドミネーターの立体化も再現してもらいました。
まずはワンフェスで実績作りから
―― やはり、当日版権よりも通年の版権取得は難しそうですね。
田中氏 難しいですねえ。原型を作るよりよっぽど難しいですよ(笑)。ただし、ちゃんと完売するのは版権を取るよりも、さらに難しいのです。それから、アニメキャラクターのフィギュアなどなんらかのカテゴリーに収まるものは良いのですが、技研の製品のように「中にエアガンを組み込んで、射撃可能とするモデルガン」という込み入った内容だと、まずそれがどんなものなのか説明するのに一苦労です。そういった場合も、やはりワンフェスでの販売実績がものをいったりするんですね。同じような製品で「当日版権を取得して、いくつか販売したことがある」ということがあると。もちろん、「TRIGUN」の「ヴァッシュの銃」や「Fate/Zero」の「トンプソン・コンテンダー」制作のときのように原作者あるいは原作関係者の口添えがあれば、版元も即OKを出してくれますがそれは例外中の例外ですし。
実際、大手版元の担当者はワンフェスを視察に来ていますから、これまで版権契約したことがなくても大日本技研を知ってもらってるいることが多いですよ。そうなると話は早いですね。銃なら銃と決めて固定ファンを作る。繰り返し買ってもらえる顧客、お得意様を作る。そうして、ワンフェスでの販売実績ができていけば、あるときメーカーさんや版元の関係者から「こういうのは作れないかな?」という話があるかもしれません。そういった実績を作るためにも、当日版権をとって販売してみて、自分の実力を知り、作品に本当に需要があるのかどうかを見極めることが大切なんです。
業界活性化のために新規参入は大歓迎
―― キャラクタービジネス、版権取得の実際について良く分かりました。田中さんしか知り得ない情報や、貴重な体験談をありがとうございました。しかし、いろいろと技研のノウハウやテクニックを教えてしまって大丈夫ですか?
田中氏 まだまだいろいろ考えていることはありますから大丈夫ですよ。それに、新しい人がどんどん入って来てくれないと切磋琢磨して良くなる、業界が活性化されるということがなくなってしまうんですね。ですから、もし私が話したことで「自分にもできそうだ。やってみよう!」と思ってくれた人がいて、結果的にライバルが増えたとしても、自分にとっても業界にとってもプラスに働くと思っているんです。
―― 本日は小規模なキャラクター製品ビジネスという、大日本技研ならではの詳細なお話をありがとうございまいました。キャラクタービジネスというと大手企業だけのものではないかと思ってしまいますが、もしかしたら自分にもできるかもしれないと考えると楽しくなってきます。それが机上の空論などではなく、ちゃんと実践してきた田中さんというモデルがあるわけです。何かと閉塞感を感じることが多い世の中かもしれませんが、俄然やる気になった人もいるのではないでしょうか。筆者も、何かと理由をつけて「できない」と口を動かす前に、とりあえず頭や手を動かしてみるのが大事なのだな、とお話をうかがいつつ反省しきりで、非常に良い刺激になりました。
それでは最後に、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の「ドミネーター」を例に原型の作り方、田中氏の得意技である模型の中にメカニズムを組み込む際のコツ、海洋堂の小林氏からのワンフェスに関するコメントを紹介して終わりたいと思います。
大日本技研での原型の作り方
今、ちょうど「ドミネーター」を制作中ですから、これを例に原型の作り方を説明しましょう。設定画から図面を引いた後、CADに取り込んでモデリングするというのが通常の手順です。しかし、今回は設定画の他に3Dデータの提供もあったので、これを下敷きにしてモデリングしています。ただし、提供データをそのまま使うことはできません。2次元作品用のモデルはポリゴン(CGの平面)で構成されたモデルに、テクスチャー(画像)を貼って立体的に見せる形式のデータです。そのため、そのまま削り出すと格闘ゲームの初代「バーチャファイター」のような面の目立つ、立体作品用のモデルに比べて荒いモデルになってしまいます。設定画のようになめらかになるよう複雑な形状を補完しつつ、テクスチャーで描かれたディテールを造り込んでいく必要があるのです。
特にグリップパネル部分のデータは、見るからにカクカクしていてなめらかではなく、設定画のような形にするためにそれなりの手順を踏まなければなりません。他の部分はCADで曲面を作っていきますがグリップは握った感触が重要な部分ですので、スタイロフォームから大まかな形を削り出してから、握った感じを確認しつつ彫刻などの造形に使われる油土(ゆど)と呼ばれる粘土で作っていきます。
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