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ヤマハ発動機のスポーツクルーザーに乗って来た!(2/3 ページ)

いつもは小型ガジェットを紹介することが多いわけですが、たまには大きい製品も紹介してみましょうということで、行って来ました真冬の東京湾。ヤマハ発動機のスポーツクルーザーに乗って来ました。

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広いキャビンに内装も充実

 あとは、船外機のコンパクトさを生かした広いキャビンですね。船内外機仕様のボートでは船体内部にエンジンがありますから、当然、その分、キャビンのスペースが狭くなります。「SR310」は船外機艇ですから、同クラスのボートと比べて広いキャビン空間を確保できるのです。

 フィッシングボートではなく、スポーツクルーザーというコンセプトですので、外観だけでなく内装にもこだわっていて、上級グレードは、本革のシートのモデルもあるんですよ。

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画像画像 同クラスのボートと比べて広々としているキャビンには、応接室のようなインテリアをはじめ、大人2人が横になることができるミドルバース、シンクや冷蔵庫のあるギャレースペース、シャワーが備えられたトイレルームなどがある

 スポーツクルーザーに必要な水際へのアクセス性、シートレイアウトに課題がありスポーツクルーザーの世界で船外機艇は一般的ではありませんでした。

 しかし、「SR310」は船外機艇でありながら、周囲を囲む革新的なトランサムレイアウトを採用することで、水際へのアクセス性はもちろんのこと、船外機上部をサンベッド化するなど、船外機艇ならではの新しいトランサムレイアウトを創り上げることに成功しました。

―― お話をうかがっていて、「SR310」開発時の意気込みのようなものがひしひしと感じられてきました。最後にボート開発の難しさ、ヤマハ発動機がマリン製品に取り組む姿勢はどんなものなのかを教えてください。

ヤマハ ボートは、自動車と較べるとスタイリングデザイン、レイアウト、機能、性能、構造などの各要素に自由度はあるのですが、実はそれらの要素が、非常に密接な関係にあります。

 それらをどうバランスして製品を完成させていくのかが、ボート開発の醍醐味でありいちばん難しいポイントです。そのため、開発者は実際にボートがお客様にどう使われているのかを熟知することが要求されます。

 その「使われ方」を念頭に置きながら構想を練る。そして、最終的に実物大の模型等を製作し実際に自分で見て、感じて、評価する、ということを繰り返しながら、商品の完成度を高めます。

 ボートの開発の最終段階では、実際に試作艇を使って「航走耐久試験」を行っています。一般的なユーザーの使用条件の何倍にも当たる最大20Gの衝撃を加え、製品の安全性と信頼性を確保するというものです。

 ヤマハ製品のユーザーの皆さんには、長年培われてきた走りの良さや、高い信頼性、優れたデザインなどはもちろんのこと、ヤマハならではの新しい提案力、世界観を常に期待していただいていると感じていて、それを裏切らないようにするのが我々の使命だと思っています。

 ヤマハ発動機では、ロシア、中国、パプアニューギニア、オマーン、UAE、ケニア、南アフリカ、ナイジェリア、モーリタニア、ドミニカ、コロンビア、ニカラグア、メキシコなど、世界13カ国でボートや漁船のライセンス生産を行っています。

 具体的には、1980年代から今日までおよそ5万隻を越える実績があり、主に漁業の効率化や近代化、人々の生活の足として活躍しています。日本でもボートは、皆さんが思っているよりももっと身近な存在です。最初のほうでもお話しましたが、ボート免許さえあれば、全国約140カ所のマリーナでレンタカー感覚でボート遊びが楽しめる「マリンクラブ Sea-Style」もご用意しています。3月には、横浜で「ジャパンインターナショナルボートショー2013」も開催されますので、ぜひ「今年こそ!」ボート遊びに挑戦していただきたいですね。

実際に東京湾をクルージング

 「SR310」の概要、ヤマハ発動機の船舶製品の取り組みについてうかがった後、実際に試乗することになりました。当日は冬晴れで、風もあまりなく、波も穏やかな絶好のコンディションで気持ちの良い航海となりました。

画像 ほかの船が白い船体のものが多いため、黒を基調とした「SR310」は、停泊していても一目でそれと分かる非常に目立つ存在だった。引き締まったデザインは、非常に印象的だ

画像 走行中、ラウンジシートから振り返ったところ。マリーナにある様々なボートに乗っている船長も「『SR310』は速くて軽快」というだけあり、江戸川から東京湾に入るとけっこうなスピード感である

 マリーナのある江戸川の妙見島から東京湾の東京ディズニーリゾート沖合いまで、時間にして30分弱の航海だったのですが、撮影のために停泊していた時間などを含めてもあっという間でした。

 これは海には道もなければ、信号もなく、渋滞もないので、河川で周囲に停泊している船が揺れて迷惑にならないよう速度を落とすことはあっても、基本的にノンストップというのがそういう印象に拍車をかけているのだと思われます。この点が、天気が快晴だったということ以外にも、オープンカーのドライブ、オートバイのツーリングとはまた違った爽快感に繋がっているなと思いました。

 ただ寒かった。冬だから寒いのはあたりまえですし、この時期に取材をお願いしたのは筆者のほうですので自業自得だったのではありますが。もし次の機会があるのならば、ぜひ夏場にと思ってしまいましたが、寄港後のマリーナで飲んだホットドリンクの味はまた格別でした。

ヤマハ発動機のマリン製品開発

 ヤマハ発動機のマリン関連製品の歴史は長い。そもそも50年以上前、川上源一氏が社長を務めていた当時、アメリカでの視察の際にマリンレジャーの盛況振りを見て、将来は日本でもマリンレジャーの時代が来ると確信した。

 そこで氏は、個人でヨットを所有し浜名湖でセーリングを楽しんでいたのだが、このヨットの船外機が頻繁に故障したことから、それならばヤマハ発動機で作ってしまおうと船外機開発を決断したところから始まっているのだという。

 また当時、軽量かつ強度の高い新素材、FRPの研究が進んでいたこともあり、この技術がボート開発にも転用されることとなった。

 そして1960年5月、ヤマハ発動機としては初の市販FRP製モーターボート「RUN13」ならびに「CAT-21」を発売。7月には船外機の初号機となるP-7も発売。1964年にはヨット「セール12」、1965年にはFRP漁船も発売した。

 また、ヤマハ発動機では「自らの手で需要を創造する」という方針のもと、1962年には「ヤマハ水上スキー教室」を、1971年には「ヤマハボート免許教室」を、1972年には「ヤマハヨット教室」を開設したほか、1971年には日本初の欧米式海上桟橋係留マリーナとなる「ヤマハマリーナ浜名湖」をオープンするなど、日本のマリンレジャーの裾野を広げる活動を展開している。


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